37 / 164
第三十六話:宝の山と、街の循環
しおりを挟む
ひまわりの最初の芽が顔を出してから、数日が過ぎた。『実験農場』での朝は、その小さな緑の双葉の成長を確認することから始まるのが、俺たちの新しい習慣となっていた。
「まあ!昨日よりも、ほんの少しだけ、背が伸びていますわ!」
今日も、俺の隣で畝を覗き込んでいたエレナ様が、宝物でも見つけたかのように、嬉々とした声を上げる。その横顔は、初めて見る生命の神秘に心を奪われた、純粋な探求者のそれだった。
「はい。この子たちは、今、一生懸命に大きくなろうとしています。ですが……」
俺は、畝の土を指先でそっとすくい上げ、彼女に見せた。
「このままでは、すぐに土の中のご馳走が、全部なくなってしまいます」
俺の言葉に、エレナ様は不思議そうに首を傾げる。俺は、彼女にも分かるように、言葉を選んで説明を続けた。
「僕たちが毎日ご飯を食べるのと同じで、植物たちも、土の中からたくさんの栄養をもらって大きくなります。特に、ひまわりのような大きくなるお花は、ものすごい大食漢なんです。このままでは、栄養が足りなくなって、大きく、強いお花を咲かせることができません」
「では、どうすれば……。また、あの不思議な栄養の粒を使うのですか?」
彼女が言うのは、雪中花の時に使った馬糞や灰、そしてリーフ村のハウスで使った『化学肥料の粒』のことだろう。だが、俺は静かに首を横に振った。
「もっと、良いものがあります。この子たちのために、僕が、最高の『ご馳走』を作ってあげます」
俺の、自信に満ちた宣言。それは、この城壁都市ランドールに、リーフ村の『陽だまりの家』とはまた違う、新たな革命をもたらすことになる、壮大な計画の始まりを告げるものだった。
その計画の名は、『堆肥(コンポスト)作り』。この世界の誰もまだ知らない、有機物を微生物の力で分解させ、最高の肥料へと生まれ変わらせる、錬金術にも似た、大地への恩返しだ。
◇
「……それで?その、最高の『ご馳走』とやらは、どこで手に入れるのですか?」
エレナ様の、純粋な問いに、俺はにやりと笑って答えた。
「これから、探しに行きます。この街は、宝の山ですから」
俺の言葉の意味が分からず、きょとんとしているエレナ様を促し、俺たちはセバスチャンとギデオンを伴って、実験農場を出た。行き先は、ランドールで最も活気に満ちた場所、中央市場だ。
朝の市場は、まさしく戦場のような喧騒に満ちていた。威勢のいい八百屋の親父の怒鳴り声。新鮮な魚を運ぶ男たちの掛け声。そして、値切ろうとする客と、それを頑として譲らない商人の、丁々発止のやり取り。その全てが、この街が生きていることを、力強く主張していた。
だが、俺が目指したのは、そんな市場の華やかな表通りではない。その裏手にある、薄暗く、少しだけ生ゴミの匂いが漂う、裏路地だった。
そこには、各商店が捨てたであろう、野菜くずや果物の皮が、木の樽の中に山と積まれている。
「こ、これは……」
エレナ様が、思わず鼻をつまむ。セバスチャンに至っては、顔面蒼白で、今にも倒れそうだ。
「ル、ルークス殿……!いくらなんでも、お嬢様をこのような不潔な場所に……!」
「セバスチャン、静かに。ルークスさんには、何かお考えがあるのですわ」
エレナ様は、匂いに顔をしかめながらも、俺の行動を、好奇心に満ちた瞳で見守っていた。
俺は、その野菜くずの山の中から、まだ新鮮なキャベツの外葉や、大根の皮などを、手際よく選り分け始めた。
「おい、小僧!何してやがる!」
突然、背後から鋭い声が飛んだ。振り返ると、そこには腕っぷしの強そうな、八百屋の店主らしき男が、仁王立ちでこちらを睨んでいた。
「人の店のゴミを漁るとは、いい度胸じゃねえか。物乞いなら、他所でやんな!」
「物乞いじゃありません。これは、取引です」
俺は、臆することなく、男の目を真っ直ぐに見返した。
「この、あんたたちが捨てている野菜くずを、俺に譲ってもらえないでしょうか」
俺の、あまりにも突飛な申し出に、店主は呆気に取られたという顔をした。
「……はあ?ゴミを、譲れだと?頭でも打ったのか、お前」
「これは、ゴミじゃありません。俺にとっては、宝の山なんです」
俺は、真剣な眼差しで訴えた。
「これを、特別な方法で土に返してやれば、どんな痩せた土地でも蘇らせる、最高の肥料になる。もし、この街の農家が、あんたたちの野菜くずを欲しがるようになったら、どうなります?」
俺の言葉に、店主の目が、ぴくりと動いた。商人としての勘が、目の前の子供が、ただの戯言を言っているのではないと告げているのだ。
「あんたたちは、今まで金を払って捨てていたゴミを、農家に売ることができるようになるかもしれない。……俺は、その最初の客になりたい。(タダでもらうこともできるだろうが、それでは『取引』にならない。持続可能な関係を築くためには、初期投資が必要だ。相手に『ゴミが金になった』という成功体験を植え付けるための銅貨一枚。費用対効果は、計り知れない)もちろん、今はまだ価値がないから、タダで、とは言いません。この野菜くず全部で、銅貨一枚。どうです?」
俺が、懐から銅貨を一枚差し出すと、店主は、信じられないというように、俺の顔と、銅貨と、そして野菜くずの山を、何度も見比べた。ゴミが、金になる。その、あまりにも常識外れな提案に、彼の頭は完全についていけていないようだった。
やがて、彼は、がしがしと頭を掻きながら、大きなため息をついた。
「……わけのわかんねえ小僧だな。まあいいや、銅貨一枚で片付くなら、安いもんだ。好きに持っていきな!」
商談は、成立した。俺は、持参した麻袋に、宝の山を詰め込んでいく。その光景を、エレナ様は、尊敬の眼差しで、そしてセバスチャンは、この世の終わりのような顔で、見つめていた。
◇
次に俺たちが向かったのは、城壁の近くにある、騎士団の馬小屋だった。ここには、俺が求める第二の宝、つまり、大量の馬糞がある。
市場の野菜くずとは比べ物にならない、強烈な匂いに、エレナ様もセバスチャンも、今度こそ完全に言葉を失っていた。
馬小屋の管理をしていたのは、人の良さそうな、初老の兵士だった。俺が、馬糞を少し分けてもらえないかと頼むと、彼は八百屋の店主以上に、怪訝な顔をした。
「坊主、本気で言ってるのか?こんな臭いもん、どうするんだ?」
「最高の肥料になるんです。ひまわりを、太陽まで届くくらい、大きく育てるための」
俺が、目を輝かせてそう言うと、兵士は「ひまわり、ねえ」と、何かを懐かしむように、遠い目をした。
「昔、南の国にいた頃、見たことがある。見渡す限り、黄金色の花が咲いていて、まるで、地面に太陽が降りてきたようだった。……いいだろう。あの花を、この凍てついた北の地で咲かせようって言うんなら、いくらでも持っていきな。どうせ、捨てるだけのものだ」
幸運にも、彼は話の分かる男だった。俺は、心からの感謝を告げ、野菜くずとは別の麻袋に、第二の宝を、ぎっしりと詰め込んだ。
俺が深々と頭を下げた、その瞬間。
――ピロン♪
俺の脳内にだけ、心地よい電子音が響いた。
【称号の効果範囲外です。**通常ポイントとして、他者からの純粋な協力の意志を検知しました。5ポイントを獲得しました。**】
(**…5ポイントか。エレナ様の時とは違うけど、それでも嬉しい。**この街でも、人の温かい心は、ちゃんとポイントになるんだ)
俺は、誰にも気づかれないように、そっと笑みを浮かべた。
◇
実験農場に戻った時には、日はすでに高く昇っていた。俺たちが、異臭を放つ二つの巨大な麻袋を荷馬車から降ろすのを、ギデオンが、無言で、しかし力強く手伝ってくれた。
俺は、農場の隅の、日当たりの良い場所を指さした。
「よし。ここに、ご馳走のレストランを作りましょう」
俺は、まず地面に枯れ葉や小枝を敷き詰めた。レストランの、ふかふかの絨毯だ。
次に、市場で手に入れた野菜くずを、その上に広げる。これが、メインディッシュ。
そして、最後に、馬小屋から運んできた馬糞を、スパイスのように振りかける。
「う……!」
強烈な匂いに、セバスチャンが再び膝から崩れ落ちそうになるのを、ギデオンが屈強な腕で支えている。
「ルークスさん、本当に、これで……?」
エレナ様が、不安そうに尋ねる。
「はい。これから、土の中にいる小さな、目に見えない生き物たちが、このレストランに集まってきて、パーティーを始めるんです。彼らがいっぱい食べて、いっぱい遊んだ後には、最高の土だけが残る。それが、堆肥です」
俺は、最後に土をかぶせて、小さな山を完成させると、満足げにその頂点を叩いた。
それは、他の誰が見ても、ただの汚いゴミの山にしか見えないだろう。
だが、俺と、そして俺を信じるエレナ様の目には、未来のひまわりを黄金色に輝かせる、まさしく『宝の山』に、見えていた。
この小さな山が、やがてこの街の「常識」を、そして「循環」そのものを、根底から変えていくことになる。
その、壮大な食料革命の、産声が、今、静かに上がったのだ。
【読者へのメッセージ】
第三十六話、お読みいただきありがとうございました!
「堆肥作り」という、これ以上なく地味で、しかし重要な挑戦。そして、それを巡る街の人々との交流、楽しんでいただけましたでしょうか。ルークスの革命が、少しずつ街へと広がっていく予感を感じていただければ幸いです。
「ゴミを宝の山に!ルークスの交渉術、すごい!」「セバスチャンの心労が…(笑)」「不器用なギデオンの優しさ、好き!」など、皆さんの感想や応援が、堆肥の発酵を促す微生物たちのエネルギーになります。下の評価(☆)やブックマークも、ぜひよろしくお願いいたします!
ついに完成した「宝の山」。この堆肥が完成するまでの間、実験農場ではどんな日常が繰り広げられるのか。そして、あの人物の再登場は…?次回も、どうぞお楽しみに!
「まあ!昨日よりも、ほんの少しだけ、背が伸びていますわ!」
今日も、俺の隣で畝を覗き込んでいたエレナ様が、宝物でも見つけたかのように、嬉々とした声を上げる。その横顔は、初めて見る生命の神秘に心を奪われた、純粋な探求者のそれだった。
「はい。この子たちは、今、一生懸命に大きくなろうとしています。ですが……」
俺は、畝の土を指先でそっとすくい上げ、彼女に見せた。
「このままでは、すぐに土の中のご馳走が、全部なくなってしまいます」
俺の言葉に、エレナ様は不思議そうに首を傾げる。俺は、彼女にも分かるように、言葉を選んで説明を続けた。
「僕たちが毎日ご飯を食べるのと同じで、植物たちも、土の中からたくさんの栄養をもらって大きくなります。特に、ひまわりのような大きくなるお花は、ものすごい大食漢なんです。このままでは、栄養が足りなくなって、大きく、強いお花を咲かせることができません」
「では、どうすれば……。また、あの不思議な栄養の粒を使うのですか?」
彼女が言うのは、雪中花の時に使った馬糞や灰、そしてリーフ村のハウスで使った『化学肥料の粒』のことだろう。だが、俺は静かに首を横に振った。
「もっと、良いものがあります。この子たちのために、僕が、最高の『ご馳走』を作ってあげます」
俺の、自信に満ちた宣言。それは、この城壁都市ランドールに、リーフ村の『陽だまりの家』とはまた違う、新たな革命をもたらすことになる、壮大な計画の始まりを告げるものだった。
その計画の名は、『堆肥(コンポスト)作り』。この世界の誰もまだ知らない、有機物を微生物の力で分解させ、最高の肥料へと生まれ変わらせる、錬金術にも似た、大地への恩返しだ。
◇
「……それで?その、最高の『ご馳走』とやらは、どこで手に入れるのですか?」
エレナ様の、純粋な問いに、俺はにやりと笑って答えた。
「これから、探しに行きます。この街は、宝の山ですから」
俺の言葉の意味が分からず、きょとんとしているエレナ様を促し、俺たちはセバスチャンとギデオンを伴って、実験農場を出た。行き先は、ランドールで最も活気に満ちた場所、中央市場だ。
朝の市場は、まさしく戦場のような喧騒に満ちていた。威勢のいい八百屋の親父の怒鳴り声。新鮮な魚を運ぶ男たちの掛け声。そして、値切ろうとする客と、それを頑として譲らない商人の、丁々発止のやり取り。その全てが、この街が生きていることを、力強く主張していた。
だが、俺が目指したのは、そんな市場の華やかな表通りではない。その裏手にある、薄暗く、少しだけ生ゴミの匂いが漂う、裏路地だった。
そこには、各商店が捨てたであろう、野菜くずや果物の皮が、木の樽の中に山と積まれている。
「こ、これは……」
エレナ様が、思わず鼻をつまむ。セバスチャンに至っては、顔面蒼白で、今にも倒れそうだ。
「ル、ルークス殿……!いくらなんでも、お嬢様をこのような不潔な場所に……!」
「セバスチャン、静かに。ルークスさんには、何かお考えがあるのですわ」
エレナ様は、匂いに顔をしかめながらも、俺の行動を、好奇心に満ちた瞳で見守っていた。
俺は、その野菜くずの山の中から、まだ新鮮なキャベツの外葉や、大根の皮などを、手際よく選り分け始めた。
「おい、小僧!何してやがる!」
突然、背後から鋭い声が飛んだ。振り返ると、そこには腕っぷしの強そうな、八百屋の店主らしき男が、仁王立ちでこちらを睨んでいた。
「人の店のゴミを漁るとは、いい度胸じゃねえか。物乞いなら、他所でやんな!」
「物乞いじゃありません。これは、取引です」
俺は、臆することなく、男の目を真っ直ぐに見返した。
「この、あんたたちが捨てている野菜くずを、俺に譲ってもらえないでしょうか」
俺の、あまりにも突飛な申し出に、店主は呆気に取られたという顔をした。
「……はあ?ゴミを、譲れだと?頭でも打ったのか、お前」
「これは、ゴミじゃありません。俺にとっては、宝の山なんです」
俺は、真剣な眼差しで訴えた。
「これを、特別な方法で土に返してやれば、どんな痩せた土地でも蘇らせる、最高の肥料になる。もし、この街の農家が、あんたたちの野菜くずを欲しがるようになったら、どうなります?」
俺の言葉に、店主の目が、ぴくりと動いた。商人としての勘が、目の前の子供が、ただの戯言を言っているのではないと告げているのだ。
「あんたたちは、今まで金を払って捨てていたゴミを、農家に売ることができるようになるかもしれない。……俺は、その最初の客になりたい。(タダでもらうこともできるだろうが、それでは『取引』にならない。持続可能な関係を築くためには、初期投資が必要だ。相手に『ゴミが金になった』という成功体験を植え付けるための銅貨一枚。費用対効果は、計り知れない)もちろん、今はまだ価値がないから、タダで、とは言いません。この野菜くず全部で、銅貨一枚。どうです?」
俺が、懐から銅貨を一枚差し出すと、店主は、信じられないというように、俺の顔と、銅貨と、そして野菜くずの山を、何度も見比べた。ゴミが、金になる。その、あまりにも常識外れな提案に、彼の頭は完全についていけていないようだった。
やがて、彼は、がしがしと頭を掻きながら、大きなため息をついた。
「……わけのわかんねえ小僧だな。まあいいや、銅貨一枚で片付くなら、安いもんだ。好きに持っていきな!」
商談は、成立した。俺は、持参した麻袋に、宝の山を詰め込んでいく。その光景を、エレナ様は、尊敬の眼差しで、そしてセバスチャンは、この世の終わりのような顔で、見つめていた。
◇
次に俺たちが向かったのは、城壁の近くにある、騎士団の馬小屋だった。ここには、俺が求める第二の宝、つまり、大量の馬糞がある。
市場の野菜くずとは比べ物にならない、強烈な匂いに、エレナ様もセバスチャンも、今度こそ完全に言葉を失っていた。
馬小屋の管理をしていたのは、人の良さそうな、初老の兵士だった。俺が、馬糞を少し分けてもらえないかと頼むと、彼は八百屋の店主以上に、怪訝な顔をした。
「坊主、本気で言ってるのか?こんな臭いもん、どうするんだ?」
「最高の肥料になるんです。ひまわりを、太陽まで届くくらい、大きく育てるための」
俺が、目を輝かせてそう言うと、兵士は「ひまわり、ねえ」と、何かを懐かしむように、遠い目をした。
「昔、南の国にいた頃、見たことがある。見渡す限り、黄金色の花が咲いていて、まるで、地面に太陽が降りてきたようだった。……いいだろう。あの花を、この凍てついた北の地で咲かせようって言うんなら、いくらでも持っていきな。どうせ、捨てるだけのものだ」
幸運にも、彼は話の分かる男だった。俺は、心からの感謝を告げ、野菜くずとは別の麻袋に、第二の宝を、ぎっしりと詰め込んだ。
俺が深々と頭を下げた、その瞬間。
――ピロン♪
俺の脳内にだけ、心地よい電子音が響いた。
【称号の効果範囲外です。**通常ポイントとして、他者からの純粋な協力の意志を検知しました。5ポイントを獲得しました。**】
(**…5ポイントか。エレナ様の時とは違うけど、それでも嬉しい。**この街でも、人の温かい心は、ちゃんとポイントになるんだ)
俺は、誰にも気づかれないように、そっと笑みを浮かべた。
◇
実験農場に戻った時には、日はすでに高く昇っていた。俺たちが、異臭を放つ二つの巨大な麻袋を荷馬車から降ろすのを、ギデオンが、無言で、しかし力強く手伝ってくれた。
俺は、農場の隅の、日当たりの良い場所を指さした。
「よし。ここに、ご馳走のレストランを作りましょう」
俺は、まず地面に枯れ葉や小枝を敷き詰めた。レストランの、ふかふかの絨毯だ。
次に、市場で手に入れた野菜くずを、その上に広げる。これが、メインディッシュ。
そして、最後に、馬小屋から運んできた馬糞を、スパイスのように振りかける。
「う……!」
強烈な匂いに、セバスチャンが再び膝から崩れ落ちそうになるのを、ギデオンが屈強な腕で支えている。
「ルークスさん、本当に、これで……?」
エレナ様が、不安そうに尋ねる。
「はい。これから、土の中にいる小さな、目に見えない生き物たちが、このレストランに集まってきて、パーティーを始めるんです。彼らがいっぱい食べて、いっぱい遊んだ後には、最高の土だけが残る。それが、堆肥です」
俺は、最後に土をかぶせて、小さな山を完成させると、満足げにその頂点を叩いた。
それは、他の誰が見ても、ただの汚いゴミの山にしか見えないだろう。
だが、俺と、そして俺を信じるエレナ様の目には、未来のひまわりを黄金色に輝かせる、まさしく『宝の山』に、見えていた。
この小さな山が、やがてこの街の「常識」を、そして「循環」そのものを、根底から変えていくことになる。
その、壮大な食料革命の、産声が、今、静かに上がったのだ。
【読者へのメッセージ】
第三十六話、お読みいただきありがとうございました!
「堆肥作り」という、これ以上なく地味で、しかし重要な挑戦。そして、それを巡る街の人々との交流、楽しんでいただけましたでしょうか。ルークスの革命が、少しずつ街へと広がっていく予感を感じていただければ幸いです。
「ゴミを宝の山に!ルークスの交渉術、すごい!」「セバスチャンの心労が…(笑)」「不器用なギデオンの優しさ、好き!」など、皆さんの感想や応援が、堆肥の発酵を促す微生物たちのエネルギーになります。下の評価(☆)やブックマークも、ぜひよろしくお願いいたします!
ついに完成した「宝の山」。この堆肥が完成するまでの間、実験農場ではどんな日常が繰り広げられるのか。そして、あの人物の再登場は…?次回も、どうぞお楽しみに!
126
あなたにおすすめの小説
二度目の異世界では女神に押し付けられた世界を救い世界を漫遊する予定だが・・・・。
黒ハット
ファンタジー
主人公は1回目の異世界では勇者に選ばれ魔王を倒し英雄と呼ばれた。そんな彼は日本に戻り、サラリーマンとしてのんびり暮らしていた。だが異世界の女神様との契約によって再び異世界に転生する事になる。1回目から500年後の異世界は1回目と違い文明は進んでいたが神の紋章を授ける教会が権力を持ちモンスターが多くなっていた。主人公は公爵家の長男に転生したが、弟に家督を譲り自ら公爵家を出て冒険者として生きて行く。そんな彼が仲間に恵まれ万能ギフトを使い片手間に邪王を倒し世界を救い世界を漫遊するつもりだが果たしてどうなる事やら・・・・・・。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる