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そろそろ朝イチの利用者がジムに顔を出し始め、挨拶を交わしながら意識を切り替えると、スタジオに移動してヨガレッスンの支度を始める。
とにかく今は仕事に集中しなければ。
そうして午前のプログラムと、夕方のスイミングコーチを終えた頃には疲労も溜まり、そんな中で自分のトレーニングを開始。
バキバキに鍛えてる訳じゃないけど、日々のトレーニングを怠ることは怪我にも繋がりなねないので、入念にトレーニングして先輩からアドバイスをもらったりする。
それが終わると事務所で担当する利用者のデータをチェックして、他のトレーナーと情報を共有して翌日以降のシフトを確認してから仕事を切り上げる。
「ふう、終わった」
「お疲れさん。伊原は今日早番だよね、さっさと引き継ぎしてもう上がりなよ」
「了解です。お疲れ様です」
マネージャーに声を掛けられて挨拶を済ませると、帰り支度を整えて事務所を出る。
私が受け持ってるのは比較的スポーツに馴染みのない、いわゆる初心者クラスが多く、レッスンよりもコミュニケーション能力が試されることの方が多い。
今日も顧客の相談に乗ったり、スイミングで子どもたちのケンカの仲裁をしたり、肉体的な疲労よりは精神的な疲れの方が多いかも知れない。
ジムを出ると、子どもたちの習い事の付き添いで来て、玄関前で井戸端会議に花を咲かせる親御さんたち挨拶をして、駐輪場に停めたクロスバイクに跨ってヘルメットをかぶる。
最初は土地勘が掴めなくて電車通勤してたけど、今の店舗に勤務するようになってから自転車通勤にして、ラッシュとかも関係なくなった。
幹線道路は交通量も多いし、裏道を覚えてからは通勤のストレスがかなり減ったように思う。
そしてスーパーに寄って買い物を済ませると、一人で住むには広すぎる家に帰宅して、一人きりの現実が寂しくなる。
「不動産屋さんに寄るの忘れちゃった」
誰に言うでもなく呟いて、だだっ広く感じるリビングを見つめて溜め息を吐いてから、このままでは良くないと音楽をかける。
これまでなら、おかえりって美咲の声が聞こえたり、好き嫌いの多い美咲のために手の込んだ料理を作ってみたり、美咲の彼氏も一緒に三人で騒いだり、本当に騒がしかった。
「やっぱり寂しいな」
不意に口をついて出るのは、元気のない言葉。
そして一人きりの部屋で思い出すのは、名前も知らない彼のことだけ。
この肌に触れなかった場所がないくらい、丁寧で優しく抱かれたからか、意識してしまうと彼の息遣いまでも思い出してしまう。
別れも言わずに部屋を出たけれど、それが大人同士の割り切った夜の出来事だったのだから仕方がない。
「不毛なことしちゃったな」
遊び慣れてる訳じゃないのに、あんな素敵な人にホイホイついて行って、恋の芽が芽吹く前に摘んでしまった。
もう少し器用なら、あの場は連絡先だけ交換して、デートをしたり恋が発展するように持っていけたのかも知れない。
だけど私は、もう恋の仕方なんか忘れてしまったし、美咲が家を出てしまった寂しさを一人では埋められなくて、あの腕に飛び込んでしまった。
一晩だけの繋がりでも寂しさは埋められる気がしたけど、そんなことはなくて、返って物悲しさが募るだけだった。
蒸した温野菜のサラダとササミの梅干し和えをお皿に盛ると、炊きすぎた玄米ご飯をお茶碗によそって、即席のお味噌汁をマグカップに移してポットのお湯で溶かす。
「いただきます」
タブレットの画面をタップして住宅情報サイトを閲覧しながら、一人きりで生きていくことに、漠然とした決意を固めて部屋を探す。
こんな寂しい夜がこれからも続くのかと思うと、兄夫婦が同居してるけど、両親に相談して実家に帰ることも念頭に入れておいた方がいい気がした。
とにかく今は仕事に集中しなければ。
そうして午前のプログラムと、夕方のスイミングコーチを終えた頃には疲労も溜まり、そんな中で自分のトレーニングを開始。
バキバキに鍛えてる訳じゃないけど、日々のトレーニングを怠ることは怪我にも繋がりなねないので、入念にトレーニングして先輩からアドバイスをもらったりする。
それが終わると事務所で担当する利用者のデータをチェックして、他のトレーナーと情報を共有して翌日以降のシフトを確認してから仕事を切り上げる。
「ふう、終わった」
「お疲れさん。伊原は今日早番だよね、さっさと引き継ぎしてもう上がりなよ」
「了解です。お疲れ様です」
マネージャーに声を掛けられて挨拶を済ませると、帰り支度を整えて事務所を出る。
私が受け持ってるのは比較的スポーツに馴染みのない、いわゆる初心者クラスが多く、レッスンよりもコミュニケーション能力が試されることの方が多い。
今日も顧客の相談に乗ったり、スイミングで子どもたちのケンカの仲裁をしたり、肉体的な疲労よりは精神的な疲れの方が多いかも知れない。
ジムを出ると、子どもたちの習い事の付き添いで来て、玄関前で井戸端会議に花を咲かせる親御さんたち挨拶をして、駐輪場に停めたクロスバイクに跨ってヘルメットをかぶる。
最初は土地勘が掴めなくて電車通勤してたけど、今の店舗に勤務するようになってから自転車通勤にして、ラッシュとかも関係なくなった。
幹線道路は交通量も多いし、裏道を覚えてからは通勤のストレスがかなり減ったように思う。
そしてスーパーに寄って買い物を済ませると、一人で住むには広すぎる家に帰宅して、一人きりの現実が寂しくなる。
「不動産屋さんに寄るの忘れちゃった」
誰に言うでもなく呟いて、だだっ広く感じるリビングを見つめて溜め息を吐いてから、このままでは良くないと音楽をかける。
これまでなら、おかえりって美咲の声が聞こえたり、好き嫌いの多い美咲のために手の込んだ料理を作ってみたり、美咲の彼氏も一緒に三人で騒いだり、本当に騒がしかった。
「やっぱり寂しいな」
不意に口をついて出るのは、元気のない言葉。
そして一人きりの部屋で思い出すのは、名前も知らない彼のことだけ。
この肌に触れなかった場所がないくらい、丁寧で優しく抱かれたからか、意識してしまうと彼の息遣いまでも思い出してしまう。
別れも言わずに部屋を出たけれど、それが大人同士の割り切った夜の出来事だったのだから仕方がない。
「不毛なことしちゃったな」
遊び慣れてる訳じゃないのに、あんな素敵な人にホイホイついて行って、恋の芽が芽吹く前に摘んでしまった。
もう少し器用なら、あの場は連絡先だけ交換して、デートをしたり恋が発展するように持っていけたのかも知れない。
だけど私は、もう恋の仕方なんか忘れてしまったし、美咲が家を出てしまった寂しさを一人では埋められなくて、あの腕に飛び込んでしまった。
一晩だけの繋がりでも寂しさは埋められる気がしたけど、そんなことはなくて、返って物悲しさが募るだけだった。
蒸した温野菜のサラダとササミの梅干し和えをお皿に盛ると、炊きすぎた玄米ご飯をお茶碗によそって、即席のお味噌汁をマグカップに移してポットのお湯で溶かす。
「いただきます」
タブレットの画面をタップして住宅情報サイトを閲覧しながら、一人きりで生きていくことに、漠然とした決意を固めて部屋を探す。
こんな寂しい夜がこれからも続くのかと思うと、兄夫婦が同居してるけど、両親に相談して実家に帰ることも念頭に入れておいた方がいい気がした。
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