私との婚約は政略ですから、恋人とどうぞ仲良くしてください

稲垣桜

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35. お見舞い

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「エリー、心配したんだからぁ」

「心配かけてごめんね」


 応接室の扉を開けてすぐ、ローズマリーがそう言って私に抱き着いてきて、いつもの冷静な令嬢の姿はどこへ行ったのかしらって言う感じだったけど、それはそれで嬉しかったな。
 でも、訪ねてきたのがローズマリーだけだと思ったのに男の方が一緒で、祖の令息の顔が視界に入ってすぐに気が付いて。
 でもローズマリーと顔が似ているから、もしかするとお兄さんのブレイク様かしら?

 私がブレイク様の顔を見ているとブレイク様はちょっと不思議なお顔をされていて、それを見た私は首を傾げた。


「エリザベス嬢?どうしたんだい?」

「え?私、ブレイク様とは初対面ですわよね?」

「「えっ?」」


 私とローズマリーとブレイク様は話がかみ合わないと感じてお互いの顔を見合わせた。


「ちょっと待って。エリーはお兄様のこと知ってるでしょ?三人で何度も出掛けたじゃない」

「ああ、あのレモンパイも一緒に食べたが…覚えていないのか?」


 三人で出掛けた?レモンパイを一緒に食べた?
 えっ?いつの事?


「…実は、池に落ちた前後の記憶があまりなくて。なんだか靄がかかったままで思い出せないの。ねえ、ローズマリー。私のこと、お父様達からはどう聞いてるの?」

「学園で池に落ちて、ルカ様があなたを助けて、五日間目が覚めなくて、今こうしてる…かしら」

「そう。そうなのね…。でも、そのあたりが全部わからないのよ。」


 嘘をついているように見えないと、ローズマリーは私の言うことを納得したみたい。
 でも、お父様達も同じことを言ってたから、これが本当なのかしら?


「私、デビュタントに行ったことは覚えているの。でも、その後のことをあんまり覚えてなくて…」

「舞踏会の後って…それならお兄様のことも覚えていないのは納得だわ」


 どうやらブレイク様と知り合ったのはここ最近の事みたい。
 デビュタントより後で池に落ちる前?

 でも、そもそも私が池に落ちた理由がわからないわ。


「ローズマリーは私が池に落ちた理由って知ってる?誰も教えてくれないの」

「あぁ…それはそうね。覚えてないんじゃ説明しても理解しそうにないものね」

「なぁに?そんなに変な理由なの?」


 ローズマリーとブレイク様は顔を見合わせて、なにやら小声で相談しているのかしら?そんなに言いにくいこと?
 私はそんな二人を見て、テーブルに置かれた紅茶の入ったカップに手を伸ばした。

 そういえば、このカップ。お母様が一目惚れして購入したセットね。薔薇の絵が繊細で見惚れちゃうって言ってたわ。
 そんなことを思っていると、ローズマリーとブレイク様の話が終わったみたい。


「まず、そうね…エリーは何が知りたい?」

「何って…知らないことよね」

「それはわかるけど、順番に話せばいいのかしら?」


 ローズマリーはそう言って、舞踏会での出来事から私が池に落ちて今に至るまでを順番に説明するように話してくれたけど、何度考えても私には受け入れられないというか、疑問に満ちた話だったのよ。





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