ヘタレ転移者 ~孤児院を救うために冒険者をしていたら何故か領地経営をすることになったので、嫁たちとスローライフを送るためにも頑張ります~

茶山大地

文字の大きさ
222 / 317
第十章 ヘタレ異文化交流

第十話 飛びつこう!

しおりを挟む

 亜人国家連合の露店スペースに置かれたテーブルについておでんやら煮込みなんかを味わっていると急に周囲が騒がしくなる。


 <ニンニン!>
 <ニンニン!>


 なんだ? と思い人だかりを見てみると、ちょうどその群衆の中央で黒づくめの衣装を纏ったふたりがバク宙したりとパフォーマンスをしていた。
 ニンニン言い合いながら直刀の忍者刀のようなもので戦っているんだけど……。


「忍者?」

「流石ご主人様っ! よくお分かりですねっ!」

「アホなの?」

「わんわんっ! なんでですかっ! 大人気じゃないですかっ!」

「まあでも忍者のイメージはこんな感じだよな」

「ご主人様のメイドさんも忍者っぽいですよね」

「あれはガチの忍者の方だな。呼ぶと音もなく現れるんだぞ」


 視線を忍者パフォーマンスの方に戻すと、確かに派手な立ち回りで見物客は大喜びだ。
 手裏剣を投げ合わずに体術と剣劇だけのパフォーマンスだから安全っちゃ安全なのかな。手裏剣とか投げだしたら即中止させるけど。
 多分忍者刀も模造刀というか木刀だろうし。


「ほかにも亜人国家連合で人気のキャラクターを呼んでるんですっ!」

「嫌な予感しかしない」


 <わーっ!>
 <かわいー!>


 どこかで聞いた声だなと振り返ると、ミコトとエマが着ぐるみに向かって声を上げていた。
 あれって……。


「亜人国家連合の人気キャラクターワンまげですっ!」

「ヤバいな」

「わんわんっ! ヤバくないですよっ! ご主人様も飛びついてくださいっ!」

「いやいや、今は禁止されてるから」

「? ワンまげに飛びつくのは禁止されてませんよ?」

「俺の知ってる似たようなやつは危険だからと禁止になったんだよ。不意に飛びつくと倒れちゃうだろ?」

「あのワンまげは大丈夫ですよっ!」


 ミコトとエマがワンまげに飛びついたが、たしかに微動だにしない。
 あのふたりはまだ小さいからっていうのもあるけど。

 ワンまげは、飛びついてきたふたりの頭をなでながら、手にしたトートバッグから玩具やお菓子を出してミコトとエマに渡す。


「わーっ! ありがとうございます!」

「ありがとー!」


 ミコトとエマは、ワンまげにお礼を言ってご機嫌だ。


「随分とサービスしてくれるんだなって……」


 しかしワンまげは随分アレににてるよな。猫と犬の違いだけど、とワンまげを観察していると、ワンまげがこちらの視線に気づく。


 ――ダッ!


 視線が合った、と思った瞬間、ワンまげがこちらに向かってダッシュしてくる。
 えっ、こちらでは向こうも飛びついてくるの?

 身構えた瞬間、ワンまげはそのまま俺に向かってジャンピング土下座を披露する。


「閣下! この度はこのような催しにお誘いいただき恐悦至極で御座います!」


 ゆるキャラの土下座とかシュール過ぎだけど、この声って……。


「シバ王か」

「御意」

「なぜ着ぐるみを?」

「今回の物産展の為に犬人国だけでなく、亜人国家連合に属する各国の代表者を集めております。流石に拙者が現場にいますと気を使われてしまうので……」

「理由は分かったから立ち上がってもらって良い? ゆるキャラを土下座させてる俺って周りから見たら危ない人に見えちゃうから」

「しかし……」

「わんわんっ! お父さんっ! ご主人様が困ってるでしょっ!」


 サクラがゲシゲシとワンまげを蹴りまくると、流石に観念したのかゆっくりと立ち上がる。


「今着ぐるみを脱ぎます故」

「そのままでいいよ、中に人が入ってると思ったらミコトとエマががっかりしちゃうだろ」

「はっ。そして閣下、不躾ながらひとつお願いの儀が御座いまして」

「あっ、要望か何かか? こちらとしても初めてのイベントだから色々な意見は助かるからどんどん言ってくれ」

「温泉を掘らせていただきたいのです」

「温泉? 出るのか?」

「地質調査を行ったところ、問題無いようです」

「そういやファルケンブルクはドイツっぽいしな、たしかバーデン=バーデンって温泉が有名なところがあったっけ」

「よろしいでしょうか?」

「どうせなら費用はこちらで持っても良いし温泉を使った宿泊施設なんかの営業許可も出すぞ。その代わり温泉掘削技術とかを教えて欲しいんだが」

「へ、そのようなことでいいのですか?」

「温泉を探したり掘削する技術はファルケンブルクには無いしな。ついでに魔導具で効率化できればあちこちで温泉を掘れるかもしれないし」

「おお! それは素晴らしい」

「もちろん技術に関しては特許料は払うし、細かな権利関係の話はアイリーンとしてもらうが」

「御意に御座います!」


 温泉か! いいな!
 ついテンションが上がってしまう。
 勝手にこちらで金は出すと言ってしまったが、無駄に軍拡するよりこっちの方がよっぽど領民のためになるだろ。


「パパ! ワンまげとお友達なの?」

「ぱぱすごい!」


 娘ふたりが俺とワンまげが親しく会話をしているように見えるようだ。
 良かった、土下座シーンは見てなかったんだな。
 保護者としてふたりに同行しているエリナとクレアを見ると俺に向かって凄い笑顔で親指を立てている。
 出来た嫁たちだ。


「そうだな、友達だぞ!」

「恐れ多い!」


 友達と言われて即座に土下座しそうになるシバ王じゃなくてワンまげを、サクラは素早くゲシゲシ蹴って阻止する。ミコトとエマから見えない位置なので子どもの教育に問題はない。


「そうなんだね! ねえパパ! あれ欲しい!」

「えまもあれかってほしいー!」


 二人が指さす土産物店を見てみると、木彫りの熊やタペストリー、努力&根性と書かれたキーホルダーなどが並んでいた。
 なんだ、日本中の昭和の遺物が集まってるのかここには。


「えっと、何が欲しいんだ?」


 ふたりに引っ張られて店の前まで連れられて行く。
 ミコトとエマがおねだりするなんてめったにない事だから、是非買ってやりたいんだが、タペストリーとか嫌だぞ。札幌とか奈良って書いてあるし意味わからん。


「えっとねー、これ!」

「えまもー!」


 二人が指さしたそれは木彫りの熊の横に置いてある、同じく木彫りの熊なんだが……たしかに見た目は隣の木彫りの熊より可愛い。
 可愛いんだが、見た目が完全にリラックスした熊なのだ。


「駄目!」

「えー!」

「なんでー?」

「危険だから」

「あぶなくないよー! りらっくすくまだよー!」

「やっぱりあぶねー!」

「ぱぱきらい!」

「店員さん、これふたつ別々で包んでもらって良いですか?」


 あっさり陥落して即座にりらっくすくまを購入した俺は、店員さんが包んでくれた熊をふたりに渡す。


「わー! パパありがとー!」

「ぱぱすきー!」

「そかそか。家に着くまで包みから出したら駄目だぞ。危ないから」

「あぶなくないのにー」

「のにー」


 <亜人国家連合物産展に来てちょんまげ!>


「おい馬鹿やめろ!」


 調子に乗ったシバ王が客の呼び込みを始めたので即座に制止する。


「パパ! ワンまげにどなっちゃだめ!」

「だめ!」


 娘ふたりの抗議をスルーしつつ、先ほどのテーブルに戻り、途中だったおでんや煮込みを食べることにする。
 忍者ショーはいつの間にか終わっていたが、周囲には買い物客や俺と同じように食事をしている人で溢れかえっていた。
 亜人国家連合の食べ物はやはりファルケンブルクでも受け入れられているようだ。
 忍者ショーも人気だったし、引き続き黙って周囲に愛想を振り始めたワンまげも子供たちに大人気でやたらと飛びつかれている。
 たしかに中の人がシバ王なら大人が不意に飛びついても大丈夫だろう。

 これだけ人気があるのなら今後も亜人国家連合との輸入品の取引拡大を考えてもいいかもな。
 りらっくすくまは禁輸措置にするかもだけど。


―――――――――――――――――――――――――――――――――

本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
よろしければそちらでも応援いただけますと励みになります。

また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
ファンアート、一部重複もありますが、総数で100枚を超える挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...