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番外編(馨)ラブなレター11
しおりを挟む大学の講義が終わり、凪は昨日告白してきた後輩を中庭に呼び出した。
「……ごめんなさい。僕、やっぱりお付き合いとかはできないです。ただ……あの、これって嘘とか、罰ゲームとかじゃないですよね?」
不安を隠せない表情で問いかけると、後輩は少し唇を噛んでから首を横に振った。
「はい、本気だったのは間違いありません。でも……やっぱり、あの人って……蓮見馨ですよね?」
彼の視線は、凪の後ろに立つ長身の人物へと向けられていた。
そう、馨だ。
嫉妬に駆られた馨は、告白してきた相手を自分の目で確認するまでは絶対に帰国しないと言い出し、変装をして凪の大学までついてきたのだ。しかし、長身に加えて整った顔立ち。たとえ帽子をしていても、ほんの少しサングラスをずらせば、その整った目元だけで正体がばれてしまう。
普通だったらその見た目からただの不審者と思われてもおかしくないのに、怪しまれるどころか何度か興味津々に話しかけられていた。
周囲の学生たちがひそひそとざわめく中、凪は気まずそうに肩をすくめた。
ちらちらと馨の方を見て迷っていると、目が合った彼がにやりと笑い、ためらいなく凪の方へ歩み寄ってきた。そして、当然のように凪の肩へと腕を回し、ぐっと引き寄せる。
「な、馨くんっ……!」
「ん?何か問題ある?」
挑発するような笑みを浮かべる馨。後輩は混乱した様子で、思い切って問いかけた。
「あの、お二人って……知り合いなんですか?」
「知り合いっていうかね……凪?」
至近距離で顔を覗き込みながら答えを促す馨。凪は顔を赤らめて胸を押し返し、「やめてよ」と小声で訴えた。意外にも馨はすんなりと腕を離したが、目の奥に宿る独占欲は隠せていない。
「もしかして……お二人って、特別な関係だったりします?でも、まさか……だって蓮見さんって、あの女優さんと……」
「付き合ってません」
馨は食い気味に否定した。その声音には迷いが一切なかった。
「むしろその噂、今すぐにでもSNSとかで否定して広めてもらって構いません。証人は俺なんで」
そう言って携帯を取り出し、画面を後輩に突きつける。そこに表示されていたものを見て、後輩は目を見開いた。
「……っ、これ……!」
驚きに言葉を失う後輩。凪は慌てて画面を覗こうと回り込んだが、馨にひょいと顔を隠されてしまった。
「馨くん、見えないってば!」
「あとで見せてあげる」
耳元に落ちてきたのは、甘さを含んだ囁き。思わず頬が熱くなり、凪は何も言い返せなくなった。
そして夕方。
後輩との一件を終え、二人は凪の部屋に戻ってきた。凪が作った親子丼を食べ終えた後、馨は胡座をかきながら床に座り、自分の膝の上をポンポンと叩いて凪を手招きする。
「凪、こっちおいで」
戸惑いながらも、凪はそっと彼の膝に腰を下ろした。なるべく体重をかけないように気を遣ったが、すぐに腰に腕を回され、後ろから引き寄せられる。結局、馨に体を預けるような格好になってしまい、凪は困ったように見上げると、馨が凪の額に唇を落とした。
「馨くん……昼間のやつ、なんだったの? 何見せてたの?」
「ああ、あれか」
馨はポケットから携帯を取り出し、凪の目の前に差し出した。画面に映っていたのは…
「えっ?! 嘘でしょ……!?」
普段は控えめな凪の声が部屋に響き渡った。
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