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番外編(馨)ラブなレター12
しおりを挟むその画面に映っていたのは馨のSNSアカウントだった。
最新に投稿された写真を馨が指先でタップする。
そこに写っていたのは、白い枕の上に置かれた凪の手。その薬指には、馨から贈られたシルバーの指輪が光っている。馨の所属チームのTシャツのロゴが入り込んでいて、それは昨日、凪が馨にねだられてきたものだった。
顔は全く写ってないものの、凪には自分が写っているとすぐにわかった。
『今日はもう寝ます。おやすみなさい』
短いコメント。いつも通りのような内容のものだが、画像は全くいつも通りじゃない。
馨は投稿頻度も少ないし、今まで風景やコートの写真しか載せていなかったのに、その中に凪の写真が紛れ込んでいるのだから。
「……馨くん、これ……」
「ほら。俺が昔から応援してくれてる人たちにはもうバレてる」
コメント欄には祝福の声が並んでいた。
『かおるんの大切な人か!めっちゃ祝福!』
『やっぱ報道は嘘だったんだよね~、10万以上するとか言われてるプレミアTシャツ着せてるし、本命だね』
『馨はずっと大事な人がいるって言ってたもんね』
『あの人、超ミーハーだからね。そんなことはないと思ってたよ』
『かおるん、おめでとう!!!結婚報告待ってる♡』
そのコメントは1000件を超えている。大変な騒ぎになった。凪は携帯を見ていないが、おそらくネットの記事にもなっているだろう。
凪は頬を赤く染めながら、複雑な思いで馨を見つめる。誇らしさと、恥ずかしさと、胸を掴まれるような動揺がごちゃ混ぜになっていた。
「……勝手に、こんな……」
「ごめん。我慢できなかった。ずっと世間にも勘違いされたままとか耐えられない。」
馨は凪の頬にキスを落とした。軽く触れるだけなのに、熱がじんわり広がっていく。
「あ、そういやメールの方もやばいかもな…向こうの人に連絡しないと」
馨は近くに置いてあったリュックからパソコンを取り出し、ノートパソコンを開いた瞬間。凪は息を呑んだ。デスクトップいっぱいに、自分の寝顔の写真が映っていたからだ。頬に馨の大きな手が添えられて、隙間がないほど生えた長い睫毛もプニプニとしている淡いピンク色の唇もくっきり映し出されている。
「な、なにこれっ……!」
「あ、やば。間違えた」
慌てて電源を落とそうとする馨の手を、凪は両手で掴んだ。
「これ、消して!」
「ダメ。絶対ダメ。俺専用。誰も見ない。俺だけが見る」
馨は力強くいいかせるように言った。
「で、でも……!」
「これがないと俺、試合頑張れない。負け続けてチームから外れてボロボロになって戻ってきてもいいなら、消すけど?」
ずるい条件を出されて、凪は言葉を詰まらせた。それでもじっと睨むように見つめる凪に、馨はふっと笑みを浮かべる。
「……やっぱり、可愛い」
馨の膝の上から逃げようとした瞬間、顎を掴まれて唇を塞がれた。
「ん……っ、馨く……」
抗議の声は、熱のこもった口づけに溶かされる。唇を重ねられるたびに頭が真っ白になっていく。
「凪、俺ほんとにヤバいくらい好き。写真撮るのも、独り占めするのも……止められない」
「…………」
凪はじと目で馨を見上げる。
「いいでしょ? 俺のこと嫌いじゃないなら」
耳元で囁かれ、首筋に唇が触れる。凪は肩を震わせながらも、結局は馨の胸に縋るようにしがみついてしまった。
「……ずるい。こうやっていつもごまかす」
「ごまかしてない。俺はずっと本気。……離さない」
甘い声と熱い抱擁。嫉妬と独占欲の塊のような馨に振り回されてそれでも、心の奥では嬉しさに抗えない。
「……ほんと、ずるい人だね」
そう呟いた唇を、馨はまた奪った。
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