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しおりを挟む宗介に連れられて控え室に入ると、そこには数人のメンバーが残っていた。激しい試合を終えたばかりの彼らは皆、疲れの色を見せながらもどこか高揚した表情を浮かべている。中には上半身裸になり、滝のように流れる汗をタオルで拭っている者もいた。
凪はそんな光景に圧倒され、視線の置き場に困った。気まずそうに俯きながら、そっと宗介の背中を探すように目で追う。
けれど宗介は、入室してすぐ従兄弟であるキャプテンに声をかけられ、そのまま二人で話し込んでしまっていた。いつものように助けを求めたくても、その背中はすぐには振り返ってくれそうになかった。
「あれ?君なんか見たことあるなあ」
不意に声をかけられて、凪はぴくりと肩を跳ねさせる。声の主は、さっきから裸でタオルを肩にかけていた男だった。フレンドリーすぎるその距離感に凪は一歩、そしてまた一歩と、無意識に後ずさった。
「やっぱ見たことあんだよなあ。どこであったっけなあ」
男はそう言いながら、じっと凪の顔を覗き込んでくる。凪は視線を逸らし、ぎこちなく笑ってやり過ごそうとするが、体がこわばってしまう。
「ちょっと絡まないでもらっていいすか」
その瞬間、凪の頭上から聞こえてきたのは、聞き慣れた低くて落ち着いた声だった。振り向くと、そこには宗介が立っていた。凪は安心感で宗介の服の裾を掴んでしまう。
「ごめん、ちょっと話し込んでた」
そう言って宗介は、凪の頭を優しくくしゃくしゃと撫でた。その何気ない仕草に、凪の緊張は一気にほどけていく。顔を覗き込もうとしていた男も、ようやく宗介の存在に気づいたらしく顔を上げた。
「宗介ー!!。お前またデカくなった?ほんと、いつになったら俺たちのチーム入るわけ?マジでほっとくのもったいねぇって。即戦力どころか、チームの柱になれるだろ」
「いや、俺大学違うし。つーか、バスケ自体あんまり好きじゃないんで」
宗介はそう言いながら肩をすくめて笑った。
「は?なんで?バスケ得意な方だろ。キャプテンの血はちゃんと引いてんじゃん?」
「俺が嫌いな奴もバスケやってるんで。そいつと同じ土俵にいるの、ちょっと無理なんすよね」
その会話を聞きながら、凪は「嫌いな奴」という言葉にひっかかって、そっと首を傾げた。でも宗介は何事もなかったかのように笑い、気づかれぬように凪の手を取って引き寄せた。
「じゃ、用事も終わったんで俺たちはこれで失礼します」
そう言って宗介は軽く会釈をすると、凪の腰に手を回し、そのまま控え室を出た。
廊下に出ると、喧騒から一転して静寂が広がっていた。宗介は歩きながら空いている会議室を見つけ、そのドアを開けて凪を中へと誘導する。
「えっ、宗介?こんなところに入って大丈夫なの?」
凪が戸惑いながら問いかけるが、宗介は何も答えずドアを閉めた。そしてその瞬間、凪を強く抱きしめた。
何かを確かめるように、胸の奥に閉じ込めていたものを解放するように。その腕の強さに、凪の鼓動が跳ねる。
「……どうしたの?」
凪が小さく尋ねると、宗介は凪の耳元でささやくように言った。
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