15 / 56
15
しおりを挟む移動教室が終わり、自分の教室へ戻るべく琥珀は楓と並んで歩いていた。
その時、ふと床の木目の間に何かが光っているのが目に入り、気になった琥珀は立ち止まってしゃがみ込んだ。指先でそっと拾い上げてみると、それはネックレスだった。
細いチェーンの先には指輪がついている。琥珀はそれをじっと見つめた後、小さく息を呑んだ。どこかで見覚えのあるデザインだったからだ。
「うわあ、指輪じゃん。なんでこんなところにあるんだろうね。」
隣を歩いていた楓が興味深そうに声を上げ、琥珀の肩越しにネックレスを覗き込んだ。楓は屈んで琥珀の肩に顎を置き、至近距離からそれを見つめる。その動作に琥珀が顔を向けると、二人の鼻先が触れそうなほどの距離だった。楓は一瞬固まったが、琥珀は全く気にする様子なくネックレスに再び視線を移す。
「これ、慶也のだ。このセンスの悪さ、一目見てわかる。な、楓、これみてみろよ。センス悪いだろ?」
琥珀が少し鼻で笑いながら言う。その言葉に、楓は驚きの声を上げた。
「慶也あ?あいつ、こんなのつけてたの?
もっとセンスあるやつだと持ってたけどね」
ネックレスをじっと見つめながら楓が問いかけると、琥珀は顔を顰めながら説明を始める。
「彼女とのペアの指輪らしいよ。学校以外では指にはめるようにしてるけど、学校では無くさないようにネックレスにしてるんだって。多分、落としたんだろうな。」
その話を聞いた楓は、呆れたように肩をすくめた。
「彼女とお揃いのペアリングねえ。趣味悪~。」
琥珀も同調するように顔を顰めながら苦笑する。
「俺だったらつけないなあ。それに、イニシャルとか入れちゃってさ。あいつのキャラじゃないよな。」
「だよな。でも、デザインしたのは慶也じゃないからな」
琥珀は楓のキャラじゃないという発言に思わず吹き出した。自分がずっと思っていたことを楓が代弁してくれた気がして、なんだかおかしかった。しかし、そんな微笑ましい空気も一瞬だった。ネックレスを眺めるうちに、琥珀は心の中にいたずらな考えが浮かんだ。
(これ、窓から放り投げるチャンスじゃね?)
そんな衝動に駆られたが、さすがにそれを実行すればいくら温厚な慶也でも怒りそうだ。それに、これを無くしたことで彼女から文句を言われている姿が目に浮かんでしまった。
「……届けてくるか。」
(心底嫌だけどな…)
心の声は奥底にしまい、ぽつりとつぶやくと、楓が目を丸くして琥珀を見た。
「え?どうしたの、こは?いつからそんなにいい子になったの?」
「だって、あいつ困るだろ?きっと、彼女からうるさく言われるだろうし……ほら、俺が救世主になってやるんだよ。」
琥珀は自慢げに鼻をフンとならし、腰に手を当て胸を張った。まるで近所の小学生を取りまとめるガキ大将のようだ。その姿は楓には愛らしく思えた。
「偉いねえ。こは、ほんと大人になったね。」
楓が感心したように言いながら、琥珀の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。しかし、子供扱いされたのが気に入らなかったのか、琥珀は楓の手を払いのける。
「やめろよ!」
眉を顰めながらも、どこか得意げな表情でネックレスを握りしめた。そして、勢いよく立ち上がり慶也の元へと向かっていった。
楓はその背中に向けてひらひらと手を振った。
1,584
あなたにおすすめの小説
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/01/23 19:00 アルファポリス版限定SS公開予定
累計で6300♡いいねと累計ポイント285000突破の御礼SSになります
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?
綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。
湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。
そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。
その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年後。
静は玲に復讐するために近づくが…
【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした
鳥居之イチ
BL
————————————————————
受:久遠 酵汰《くおん こうた》
攻:金城 桜花《かねしろ おうか》
————————————————————
あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。
その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。
上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。
それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。
お呪いのルールはたったの二つ。
■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。
■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。
つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。
久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、
金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが…
————————————————————
この作品は他サイトでも投稿しております。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる