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しおりを挟むおそらく部活をしているであろう慶也の体育館に向かうと、広いコートの中では、部活用のTシャツを着て汗を流しながら練習に励む慶也の姿があった。琥珀は思わず立ち止まり、夢中でその姿を見つめてしまった。改めて慶也はかっこいい男だと思う。
琥珀はぼうっとその場に立ち尽くしていた。しかし、そんな中でも慶也に向けられる他の視線も気になった。コート脇には、慶也のファンと思われる女子たちが集まり、目を輝かせながら彼の一挙一動を追っている。中でも、一際目立つ存在がいた。
慶也のタオルを大事そうに抱えている美沙の姿が群れの中心にあった。彼女は、休憩のタイミングでいつでも慶也に駆け寄れるよう、身構えているように見える。
その様子に思わず舌打ちしそうになりながら、琥珀は美沙の存在を無視することに決めた。今の目的はただひとつ、慶也に話しかけることだ。
コートの中では、練習がひと段落したのか、慶也が部員たちと話をしている。そのタイミングを見計らって、琥珀は一歩を踏み出した。
しかし、その瞬間だった。
突然、後ろから強く腕を引かれた。琥珀の身体はその強い力にガクンと揺れた。
「琥珀くん、何しようとしているの? 慶也は部活中だよ」
振り返ると、そこには険しい顔をした美沙が立っていた。目尻を吊り上げ、琥珀を睨みつけている。
「俺は慶也に用事が」
その先は言えない。もし、美沙がネックレスの件を知れば、慶也を責めるのではないかという不安が頭をよぎったからだ。ペアリングをあれだけ大切にしていた美沙なら、ネックレスを無くしたことを許さないだろう。
「用事って何? 私から慶也に伝えるから」
美沙はそう言うと、琥珀の腕をさらに強く引っ張り、体育館の外へと連れ出した。周囲の視線を気にしたのか、人目につきにくい場所まで琥珀を引っ張っていくと、彼女は立ち止まり、琥珀の方に向き直った。
「琥珀くんも本当に懲りないよね? この前私が言ったこと、どうせまともに受け止めてないんでしょ? 琥珀くんは頭が悪いから、理解力もないもんね」
美沙は呆れたように笑みを浮かべ、嫌味たっぷりの口調でそう言い放つ。その表情に、琥珀は拳を握りしめた。
「それとこれとは関係ねえだろ! てか、お前に用事ねえから。俺が用事あるのは慶也だ」
琥珀は感情を抑えきれずにそう言い返した。
そして、慶也のいる体育館に戻ろうとした途端
「ねえ!!!それ何!!!」
突然、美沙が空気を割くように声を上げた。琥珀の肩がびくりと震える。
美沙の瞳は驚きと怒りに満ちている。
美沙の視線の先を追うと、それは琥珀の手元にあったネックレスだった。
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