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月を爆破せよ(月下人撃滅計画)5

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(どうしたらいいんだろう……)

 公園でのやり取りを聞いてしまった真治、姉が住人と別れて帰るとなったので、自分は別の帰り道を歩き考える。

 お姉ちゃんが地球から出ていこうとしている! とか言って、いったい誰が信用してくれるだろう。きっと両親でさえまともに取り合ってくれないだろう。交番に話を持ち込んだりしたら、特別な病院に放り込まれてしまうかもしれない。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 立ち止まった真治、夜空の月を見上げながら……大声では叫べないから可能な限りボリュームを絞って小さく叫んだ。

 するとそのとき、ふっと後ろから聞こえた。どうした? 少年! という声をかけられた。

「え?」

 ドキッとして振り返ると、暗い夜道の中に小さな体あり。身長は30cmくらいで人間型の輪郭であるが、コミカルとしか言い様がないのはカエルにしか見えないから。

「あ、カエルーノだ」

 そう、マントをつけて二本足で歩行していたのはカエルーノだった。

「おっと、誰かと思えば真治くんだったか、夜の道で叫んだりしてどうしたのかな?」

 悪のはびこりを許さないゆえにパトロール中だとするカエルーノを見たとき、そうだ、カエルーノであれば話を聞いてくれるかもしれないと真治は期待した。

「実は大変な事になっちゃって」

「大変? 何かあったと?」

「実はお姉ちゃんのことで……」

「なに、優子さん!」

 カエルーノの目の色が変わった。現在カエルーノはカルロッタという女カエル(しかも姫)と引っ付けられ浮気は許されない身文になっている。だがそれでも男らしい情熱として適度に浮気をしており、そして優子という女子がいいなぁという思いを捨てずに持っていたりするのだった。

「真治くん、歩きながら落ち着いて語ってくれたまえ」

「わかった」

 真治は歩きながら、優子に起こった事と自分が見た優子という話を上手にまとめた。そして最後に、優子が明日の夜に地球を捨てるつもりだと結んだら話はカンペキだった。

 もっとも……あまりに突拍子もない内容の話だから、ちゃんと通じるかな? と心配になってカエルーノに聞く。

「いまの話って本当なんだけれど……信じてくれる?」

「もちろん。わたしカエルーノはちゃんとわかるから安心してくれたまえ」

「わかる?」

「真治くん、優子さんに取り入っているのは月下人だ」

「月下人(げっかじん)?」

「そう、月に住む者であり、古来より地球の女を定期的にさらっている者たち」

「えぇ、ほんとうなの?」

「真治くん、きみは竹取物語って話を知っているか?」」

「えっと、竹から女の子が出てきて……いずれは月に帰っていくというあれ?」

「そう、実を言うと竹取物語は月下人が地球人を脅迫してムリヤリ書かせたという説がある。なんでも地球の女性をさらっていこうとした時、それを地球人に見られてしまった。言いふらされると月のイメージが悪くなると恐れた月下人は、竹取物語を思いついて書かせた。そうすることで月はかよわく美しいとなり、そんな夢みたいな話が実際にあるわけないだろうと思わせることで地球人は月に対して無防備にもなる。そうして月の者たちは1000年以上の長きに渡って地球の女性をさらい続けていたんだ」

「そんな……月がそんな怖いところだったなんて」

 真治、夜空に浮かぶうつくしい、まるで黄金のメロンパンみたいな月を見つめてぞっとするしかなかった。

「安心したまえ真治くん、このカエルーノ話を聞いたからには優子さんを助けよう、そしてこの地球を守るために一肌脱ぐ」

「え、どうするの?」

「え、何するの?」

「ちょうどいい機会だ、月下人撃滅のために月を破壊しようと思う」

「え?」

「詳しい場所は言えないのだが、我々カエル王国は地中に秘密基地を作ってある。そこには小惑星帯のデカい石ころを粉砕できるくらいのビーム兵器もある。それを使えば月を消滅させるなど余裕なのだよ」

「え、ダメだよ、月がなくなったら地球に悪影響が出るって、偉い先生はみんなそう言ってるよ?」

「安心したまえ真治くん、我々の科学力を見くびってもらっては困るというモノだよ。月の破壊に用いるビームには、現在の月を形成している要素と、一瞬だが激烈な重力を発生させる仕掛けがあるのだ。それで攻撃すれば月は一瞬で粉々になるが、次の瞬間にはまた元通り。過不足なく元に戻るはずだ。例外は月下人が宇宙から消えて無くなるって事だけだ」

 真治、聞いていて反応に困ってしまった。あまりにも大変な話であるゆえ脳がついていかない。だからもっとも重要なことだけを質問にして投げかける。

「月を破壊するのも月下人を追い払うのもいいけれど、お姉ちゃんは? お姉ちゃんはどうなるの?」

「それこそ安心したまえ、このカエルーノが命をかけて救出しよう。これにもちゃんと策があるのだ」

「策? どんな?」

「カエルーノがその月下人と戦おう。もし月下人が宇宙船に乗って逃げるようなことをすれば宇宙船ごと葬ろう。そして問題は優子さんだが、仮に月下人が宇宙船に優子さんを連れ込んで逃げようとしてもムダだ。なぜなら女性をさらう月下人を撃墜する日が来ても大丈夫なように、円盤と月下人だけを消滅させるビームがある。それは円盤が粉々になろうとどうなろうと優子さんを保護膜で包み込む。それはどのような高さらから落下しようと、火の中に放り込まれようと、水の中に落ちようと何があろうと優子さんを護り続ける」

「すご……そんなすごい兵器で備えていたんだ?」

「備えあれば憂いなし。平和な時に力を磨いておくのが平和を保つ最善の努力だ」

「で、でも……どうしてカエルがそこまでしてくれるの?」

「愛する地球のためだよ。地球に恩返しをせねばならないというのは、カエルも人間もすべての生命体が背負う責務だよ」

「おぉ!」

 真治、もう話がデカくなり過ぎて訳が分からないと思いつつ、姉が助かるならそれでいいや! と割り切った。

「真治くん、優子さんは明日どういう風にしようと考えているんだ?」

「たしかさっき、今日と同じ時間に同じ公園で待ち合わせって。だから午後8時過ぎにあの公園で会うのだと思う」

「わかった。では真治くん、きみはできるだけ公園に向かおうとする優子さんの足を遅くしてくれたまえ。優子さんを巻き込むことなく、月下人を倒し月を破壊するのが最高のシナリオだから」

 真治、カエルーノの話を聞いていたら不安が解けていった。そうだ、こっちにはこんな強力な味方がいるのだ、月下人など恐れるに足らず! と気が大きくなる。そして夜空の月を見上げて小さな声でつぶやくのだった。

「古い月は明日でさようなら、そして生まれ変わった新しい月にこんにちわ」
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