196 / 220
月を爆破せよ(月下人撃滅計画)4
しおりを挟む
(お姉ちゃんはどこに行くんだろう……)
夜の尾行を開始した真治、月明りの下をまるでゆらゆらって感じに歩く優子を追う。すると身近でありながらあまり歩かないコースを優子は進んでいき、ある公園にたどり着く。
(ん……あれは……)
隠れている真治が見ていると、公園内には先着していた者がいた。少しばかり薄暗くてよく見えないが、全体の感じから姉と同じ年齢の男子だと思う。
「優子」
男子が言った。するとどうだ、見ていた真治がびっくりするのはムリもないって展開が生じた。姉が……女子力ガードのめちゃくちゃ高いはずの優子が、くぅっと甘えすり寄り相手に抱きしめられたりしたではないか。
(えぇ、うっそぉ……)
あまりに姉らしくないふるまいに真治はまたショックを受ける。だが、とりあえず声を出さず音を殺して移動。ベンチに座っている2人の後方に出来るだけ近づくと、全身全霊で会話の盗み聞きに勢力を注ぐ。
「優子、今日は優子に大事な話があるんだ」
「大事な話?」
「今までだまっていたけれど……実はぼく地球の者ではないんだ」
「え、どういうこと?」
「ぼくの正体から月下人、月の住人、そして月の都に住む王子」
「ん? なにそれ、なんかおもしろいネタを思いついたって事?」
「ちがうよ、ほんとうの事なんだ」
ここまでをだまって聞いていた真治、まず最初に頭の中が???となった。しかし相手の声がずっとマジメで不気味ゆえ、もしかしてほんとうかもと悪いドキドキが胸に生じたりもする。
「実を言うとぼくは優子に会いたくて地球にやってきたんだ。そうさ、魅力的な女の子に会えると思ったら38万kなんて距離は全然大した事ないんだ」
「わたしに会いに?」
「そうさ、部下から報告を受けたんだ。地球には……王子が理想とする、いや理想そのものって魅力的な女の子がここにいます! って。わかって欲しい、そう言われてジッとしているなんて、男としてはそれは不可能なんだ。なぜかわかるかい? 男は魅力的な女の子とロマンスのためなら命をかけたいって思う生き物だからだよ」
ここで聞いていた真治はおぇぇっとなる。黙って聞いていれば恥ずかしいセリフをペラペラと……と嫌悪感すら感じる。しかしほんとうなら同じようになるはずの姉が、相手の言う事をうれしいと思っているようなオーラを立てているから困る。
「そこで優子、明日……明日ではダメかな?」
「明日? 明日に何?」
「ぼくといっしょに月の都に行かないか? そして都の姫になって欲しい。それはつまりぼくの妻になって欲しいって事だ」
「え、月に?」
「優子、ぼくとの愛を守るため、どうか地球を捨てて欲しい!」
「そんな……いくらなんでも……急に言われても……」
優子が、さすがにそれはムリという反応を示すと真治はホッとした。そして姉のとなりに座っているやつに心の中で言ってやるのだった。
(おまえひとりで月に帰れ、バーカ!)
しかし優子の横に座っていた男子こと月野住人は立ち上がると、月の光を浴びながら力説を開始。その演説は実にうまく巧妙で、聞いている人間をその気にさせる魔力みたいなモノがあった。
住人の演説はまず愛の重要性を説くから始まり、愛はすべてへの思いやりだと話を広げ、それからすると地球はあまりに汚れていて未来はないという社会テーマに結び付けていく。
「優子、断言してもいい。地球にはもう明るい未来なんてない。月はこれから繁栄していくが、地球はこれから廃墟となり金星みたいに熱い星になると運命づけられている。そんな場所で愛を育めるわけがないんだ。愛とは平和な場所でのみ成立させ次につなげていけるものなんだ」
住人は続ける。優子のたましいが地球から離れられないというのは、それは地球への愛ではなくただの傲慢だ! と。
「優子、地球にしがみついていては愛など育たない。だってそうだろう? これまで地球にどれだけ平和のメッセージがあって、それが無意味に終わっているか、その現実を持ってして地球にこだわるのはもはや愛を育む責務からの逃亡だと言ってもいいんだ」
住人は熱弁を振るうと、そこで結論を! と迫るのではなく、やさしい男の自己嫌悪を演じて見せる。左手を額に当て、つい感傷的になってしまったと悔いて見せる。
「まったく、ぼくって男はいつもこうだ……いつも情熱が先走りしてしまうんだ。優子を愛しているとか言いながら、優子のキモチそっちのけって演説をやってしまう。ぼくはダメな男だよ、優子、大いにこの愚かな男を笑ってやって欲しい」
隠れて聞いていた真治、もう聞いていて恥ずかしいのなんのでたまらないと鳥肌を起こす。いま隕石が落ちてきて直撃することで、その男が消え去ればいいのにとさえ思う。
しかし! いったいどうした事か、いつもならおぇぇ……とやったりするはずの優子が、住人の演説と自己嫌悪ってふるまいに感動していた。
「笑うわけない」
スクっと立ち上がって住人の心に寄り添うとする優子、その姿は演説に騙される愚かな聴衆のひとりみたいだった。
「今日はさすがにムリだけれど……でも明日の夜、明日の夜に行く。わたし……月の都に行く」
まったくなんという事だろう、優子が自ら月に行くと言い切ってしまった。両手で口を抑えながら青ざめる真治、心の中で何回も叫びくり返してしまう。
(お、お姉ちゃんが……地球を捨てる……)
夜の尾行を開始した真治、月明りの下をまるでゆらゆらって感じに歩く優子を追う。すると身近でありながらあまり歩かないコースを優子は進んでいき、ある公園にたどり着く。
(ん……あれは……)
隠れている真治が見ていると、公園内には先着していた者がいた。少しばかり薄暗くてよく見えないが、全体の感じから姉と同じ年齢の男子だと思う。
「優子」
男子が言った。するとどうだ、見ていた真治がびっくりするのはムリもないって展開が生じた。姉が……女子力ガードのめちゃくちゃ高いはずの優子が、くぅっと甘えすり寄り相手に抱きしめられたりしたではないか。
(えぇ、うっそぉ……)
あまりに姉らしくないふるまいに真治はまたショックを受ける。だが、とりあえず声を出さず音を殺して移動。ベンチに座っている2人の後方に出来るだけ近づくと、全身全霊で会話の盗み聞きに勢力を注ぐ。
「優子、今日は優子に大事な話があるんだ」
「大事な話?」
「今までだまっていたけれど……実はぼく地球の者ではないんだ」
「え、どういうこと?」
「ぼくの正体から月下人、月の住人、そして月の都に住む王子」
「ん? なにそれ、なんかおもしろいネタを思いついたって事?」
「ちがうよ、ほんとうの事なんだ」
ここまでをだまって聞いていた真治、まず最初に頭の中が???となった。しかし相手の声がずっとマジメで不気味ゆえ、もしかしてほんとうかもと悪いドキドキが胸に生じたりもする。
「実を言うとぼくは優子に会いたくて地球にやってきたんだ。そうさ、魅力的な女の子に会えると思ったら38万kなんて距離は全然大した事ないんだ」
「わたしに会いに?」
「そうさ、部下から報告を受けたんだ。地球には……王子が理想とする、いや理想そのものって魅力的な女の子がここにいます! って。わかって欲しい、そう言われてジッとしているなんて、男としてはそれは不可能なんだ。なぜかわかるかい? 男は魅力的な女の子とロマンスのためなら命をかけたいって思う生き物だからだよ」
ここで聞いていた真治はおぇぇっとなる。黙って聞いていれば恥ずかしいセリフをペラペラと……と嫌悪感すら感じる。しかしほんとうなら同じようになるはずの姉が、相手の言う事をうれしいと思っているようなオーラを立てているから困る。
「そこで優子、明日……明日ではダメかな?」
「明日? 明日に何?」
「ぼくといっしょに月の都に行かないか? そして都の姫になって欲しい。それはつまりぼくの妻になって欲しいって事だ」
「え、月に?」
「優子、ぼくとの愛を守るため、どうか地球を捨てて欲しい!」
「そんな……いくらなんでも……急に言われても……」
優子が、さすがにそれはムリという反応を示すと真治はホッとした。そして姉のとなりに座っているやつに心の中で言ってやるのだった。
(おまえひとりで月に帰れ、バーカ!)
しかし優子の横に座っていた男子こと月野住人は立ち上がると、月の光を浴びながら力説を開始。その演説は実にうまく巧妙で、聞いている人間をその気にさせる魔力みたいなモノがあった。
住人の演説はまず愛の重要性を説くから始まり、愛はすべてへの思いやりだと話を広げ、それからすると地球はあまりに汚れていて未来はないという社会テーマに結び付けていく。
「優子、断言してもいい。地球にはもう明るい未来なんてない。月はこれから繁栄していくが、地球はこれから廃墟となり金星みたいに熱い星になると運命づけられている。そんな場所で愛を育めるわけがないんだ。愛とは平和な場所でのみ成立させ次につなげていけるものなんだ」
住人は続ける。優子のたましいが地球から離れられないというのは、それは地球への愛ではなくただの傲慢だ! と。
「優子、地球にしがみついていては愛など育たない。だってそうだろう? これまで地球にどれだけ平和のメッセージがあって、それが無意味に終わっているか、その現実を持ってして地球にこだわるのはもはや愛を育む責務からの逃亡だと言ってもいいんだ」
住人は熱弁を振るうと、そこで結論を! と迫るのではなく、やさしい男の自己嫌悪を演じて見せる。左手を額に当て、つい感傷的になってしまったと悔いて見せる。
「まったく、ぼくって男はいつもこうだ……いつも情熱が先走りしてしまうんだ。優子を愛しているとか言いながら、優子のキモチそっちのけって演説をやってしまう。ぼくはダメな男だよ、優子、大いにこの愚かな男を笑ってやって欲しい」
隠れて聞いていた真治、もう聞いていて恥ずかしいのなんのでたまらないと鳥肌を起こす。いま隕石が落ちてきて直撃することで、その男が消え去ればいいのにとさえ思う。
しかし! いったいどうした事か、いつもならおぇぇ……とやったりするはずの優子が、住人の演説と自己嫌悪ってふるまいに感動していた。
「笑うわけない」
スクっと立ち上がって住人の心に寄り添うとする優子、その姿は演説に騙される愚かな聴衆のひとりみたいだった。
「今日はさすがにムリだけれど……でも明日の夜、明日の夜に行く。わたし……月の都に行く」
まったくなんという事だろう、優子が自ら月に行くと言い切ってしまった。両手で口を抑えながら青ざめる真治、心の中で何回も叫びくり返してしまう。
(お、お姉ちゃんが……地球を捨てる……)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる