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1話完結
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私には、前世の記憶があります。
いえ、前世の記憶というよりは、前世の人格が生まれたのが、と言った方が正しいかもしれません。
私と、前世の私と今世の私は、混ざり合うことなく、そして彼女もまた私の人格に干渉することなく、ぼそぼそと前世の情報を喋ることしかありませんでしたから。
前世の私は、時折、私に話しかけてくれました。
そこの廊下は歩かない方がいい。生徒たちの喧嘩に巻き込まれるから。だとか、向こうの階段を使おう。小競り合いに巻き込まれる、だとかそういったことを教えてくれました。引っ込み思案で、暗い性格でありながら、父の爵位だけで決められた殿下との婚約関係に面白くないと思う方々は、たくさんいるようです。
そのせいで、私にお友達はいませんでした。
ですから、私に話しかけてくれる同年代の女の子は、前世の私だけでしたので、私は、ひそかに前世の私をお友達認定しておりました。
たまに、この世界のことについて、聞いてくる前世の私に、私は得意げに説明するのも、ひそかな楽しみでした。
殿下は、私に近づきたくないようで、私に話かけてくることすらありませんでした。
ですが、今日は卒業パーティーでしたから、私は意を決して殿下に話しかけました。
殿下は、見知らぬ女性と楽しそうに話されていましたが、私が話しかけると、急に真顔になられました。
ーめっちゃスン、ってするじゃん。
前世の私がボソッと呟きました。
スン、確かにそうかもしれません。
先ほどは、とても楽しそうにしていたのに、あまりの落差に私は、少しだけショックを受けました。好かれてはいないと思っていましたが、ここまで嫌われていたなんて。
「で、殿下…?」
殿下は、私の腕を突然、掴んだかと思えば、会場の真ん中に私を突き飛ばしました。
受け身をとれず、私は無様にも床に転がってしまいました。
天井が見えます。
豪華なシャンデリア。
周りは、冷たい視線を向けてくる者もいましたが、大半は、面白い劇が始まったと笑っている者たちでした。
「殿下?」
私は呆然として、殿下の顔を見つめました。
「お前がアイリスを虐めていることは皆、知っている」
アイリスは、ヒロイン。
これは、婚約破棄イベントが始まった。と、前世の私がつぶやきました。
イベント…?イベントが始まったら、どうなるんですか?と私は、前世の私に問いました。
私は、処刑される。
と前世の私がつぶやきました。
私は、その言葉に絶望しました。
ーそんな…。
私は、少し鈍いようで、特に対人関係のあれそれを推測するのが、特に苦手でした。
だからというわけではないのですが、私は、殿下とアイリスと呼ばれる少女が仲良くなっていることすら知りませんでした。
苛めというのも何のことか分かりません。
私は、前世の私に教えてもらいました。
男爵令嬢ごときが、殿下と仲睦まじくしている姿を見て嫉妬した者たちにより、殿下とアイリス嬢は引き離されようとしているのだということを。
しかし、上手くいかなかったようで、そのミスを私に擦り付けようとしているのだと。
ーそうだったのですね。
私には、よく分かりませんが、分からないうちに物事が進んでいたようです。
処刑ということを考えると、死ぬのは怖いと感じます。
しかし、無知は最大の罪という言葉もあります。婚約者という身でありながら、私は殿下のことを知ろうとしなかったから、こんなことになったのかもしれません。
それならば、処刑も致し方ないのかもしれません。
私がうなだれていると、誰かが私の名前を呼びました。
「アリエッタ!」
その声は、私の大好きなお兄様の声でした。
会場がにわかにざわつきました。
お兄様は、私のもとに駆け寄り、そして私を立たせてくれました。
「大丈夫?アリエッタ」
「お……お兄様……」
私の瞳から涙がこぼれました。
「ごめんなさい、ごめんなさい、お兄様」
私は、混乱と悲しみで我を見失っていました。
そんな私をお兄様は抱きしめました。
「大丈夫だよ、アリエッタ」
お優しい言葉と共に、お兄様の手が私の背中を撫でます。
私は泣きじゃくりながらも、周りを見ましたが、皆一様に驚いたような表情を向けてくるだけで、私とお兄様に駆け寄ってきてくれるものは誰一人としていませんでした。
そして、私はここで処刑されるのだということを悟りました。
「お兄様……私、死にたくないです」
「大丈夫、アリエッタ。私がいる限り、アリエッタを死なせない」
お兄様はにっこりと笑ってくれました。
その笑顔を見ていれば大丈夫な気がしました。
「一体、何の真似だ」
「それは、こちらの言葉だ。お前はアリエッタを幸せにすると誓ったから手を引いたというのに、その誓いを破るとはな」
私は、驚きのあまりお兄様を見つめました。
誓い?いったい何のことでしょうか。
「こいつは、裏がある人間だった。そんな人間を妻に、この国の母になど出来るわけがなかろう」
「裏?」
お兄様が私を見つめてきました。
裏?
私をジッと見つめた後、お兄様は、また殿下に顔を向けると笑いかけました。
今まで見たことがないような、お兄様の意地悪な表情に、ちょっぴりドキドキしてしまいました。
「アリエッタに裏なんてあるものか。あるとしたら、そこの男爵令嬢だろう」
「なにを…」
男爵令嬢は、お兄様の顔を見るや否や、殿下を突き飛ばし、お兄様に走り寄ってきました。
「え?」
お兄様は、私を庇うように背中に私を移動させました。
そして、男爵令嬢は、お兄様に抱き着きました。
「え?」
私は、状況を飲み込めません。
「お、お兄様…?この方は、お兄様のお知り合いだったのですか?」
「違うよ。これが彼女の本心だよ」
「え?」
ど、どういうことでしょうか。
ーつまり、本命は、お兄様ってこと。
前世の私が教えてくれました。
お兄様は、私の血がつながった本当の家族ではありません。
父の幼馴染の子息だそうで、私とお兄様は物心つくころから、ずっと家同士の付き合いをしておりました。
ですから、私もほとんど家族同然の気持ちを抱いておりましたから、お兄様と呼んでおりました。
私は一人娘でしたので、兄弟はおりませんでしたから、兄や姉の存在は、私にとっての憧れの存在でしたから。
「君、私に近づくためにあいつに近づいたんだろ?」
「え?」
男爵令嬢である彼女が、お兄様に近づくには、お兄様の爵位に近い人たちに近づく必要があったそうです。
その過程で、男爵令嬢は私に目をつけたそうです。
殿下に近づくためには、婚約者の私の話題から近づけば、上手くいくと考え、実際にそれはうまくいったそうです。
殿下のお心が自分に向かうようにいろいろなことをしたそうです。
私は、殿下と話をしたことがないのに、私の話題で二人が仲良くなれたなんて、なんだか複雑です。
「私が君を好きになることなんて一生ないよ」
お兄様がそう吐き捨てると、男爵令嬢は顔を真っ赤にしました。そしてなぜか私のことを睨んできました。
「そ、そんな……私は貴方のために」
男爵令嬢は、お兄様に縋るように抱き着きます。
「私に触らないでくれ」
お兄様は冷たく彼女を突き放しました。
「私、貴方のことが好きなの!貴方のためなら何だってできるわ!」
彼女の目には狂気が宿っていました。
そんな彼女にお兄様は、本当に冷たい目を向けました。
まるで氷のよう。
私が、お兄様にこんな目を向けられたら、きっともう怖くて顔が見れなくなります。
ーなんか知らんが修羅場始まったな?
前世の私がつぶやきました。
少し楽しそうです。声しか聞こえないから、私には分かりませんが。
お兄様は、私を見て柔らかい笑みを浮かべました。
「アリエッタ」
「は、はい…お兄様」
「君はもう何も心配しなくていい」
お兄様はそういうと、私の前に跪きました。
そして私の手を取りました。
お兄さまは、少しだけ震えているようでした。
不安そうなお兄様。そんなお兄さまを私は見たことがありませんでしたから、驚いてしまいました。いつだって、私の前で優しそうで余裕にあふれておりましたから。
お兄様は私の手に口づけをしました。
「お、お兄様!?」
私は突然のことに驚いてしまいました。
そんな私にお兄様はフッと微笑みました。
「アリエッタ……私は君にとって良い兄でいることができなかった。私は君の幸せを願いながらも、ずっと君のことを独占したかったんだ。君は私の光だから」
「……」
私は呆然として、お兄様を見つめることしかできません。
だって、私にとって、お兄様はお兄様でしかなかったのですから。
いきなりこんなことを言われても、心が追いつきません。
ー殿下に嫌われているのに、どうして大丈夫だったの?
前世の私が聞いてきます。
殿下に嫌われても大丈夫?…そういえば、そうでした。
お友達がいなくても、婚約者である殿下に嫌われていても、全然気になりませんでした。
それは、お兄様がいたからでした。
どんなにつらいことがあっても、お兄様の姿を見るだけで、なんだか安心することができました。
「私と一緒についてきてくれるかい?」
お兄様は、この国の人間ではありません。
ですから、お兄様についていくということは、そのまま違う国に行くということになります。
「…はい」
私の答えは決まっていました。
殿下から、婚約破棄もされてしまいましたし、悲しいですが、この国にお友達はおりませんので、特にこだわることもありません。
「よかった」
「わっ」
お兄様が私を抱きしめます。
とっても嬉しそうです。その顔を見て、私もなんだかうれしくなります。
「それじゃあ、さっそくこの国から出よう」
「い、今からですか?」
「別に構わないさ。今日が卒業なのだから」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「…なにか?」
男爵令嬢の方が、ひどく慌てた様子です。
「ど、どうして…だってフラグは完璧だった…ルート入りしてるはずなのに…どうして」
「?」
なにをおっしゃっているのか分かりませんが、前世の私は「そのフラグをへし折りまくっていることに気づかなかったあなたの負けよ」と言っています。
よくわかりませんが、殿下とお幸せになってください。
私もよく分かりませんが、お兄様と幸せになりますから。
いえ、前世の記憶というよりは、前世の人格が生まれたのが、と言った方が正しいかもしれません。
私と、前世の私と今世の私は、混ざり合うことなく、そして彼女もまた私の人格に干渉することなく、ぼそぼそと前世の情報を喋ることしかありませんでしたから。
前世の私は、時折、私に話しかけてくれました。
そこの廊下は歩かない方がいい。生徒たちの喧嘩に巻き込まれるから。だとか、向こうの階段を使おう。小競り合いに巻き込まれる、だとかそういったことを教えてくれました。引っ込み思案で、暗い性格でありながら、父の爵位だけで決められた殿下との婚約関係に面白くないと思う方々は、たくさんいるようです。
そのせいで、私にお友達はいませんでした。
ですから、私に話しかけてくれる同年代の女の子は、前世の私だけでしたので、私は、ひそかに前世の私をお友達認定しておりました。
たまに、この世界のことについて、聞いてくる前世の私に、私は得意げに説明するのも、ひそかな楽しみでした。
殿下は、私に近づきたくないようで、私に話かけてくることすらありませんでした。
ですが、今日は卒業パーティーでしたから、私は意を決して殿下に話しかけました。
殿下は、見知らぬ女性と楽しそうに話されていましたが、私が話しかけると、急に真顔になられました。
ーめっちゃスン、ってするじゃん。
前世の私がボソッと呟きました。
スン、確かにそうかもしれません。
先ほどは、とても楽しそうにしていたのに、あまりの落差に私は、少しだけショックを受けました。好かれてはいないと思っていましたが、ここまで嫌われていたなんて。
「で、殿下…?」
殿下は、私の腕を突然、掴んだかと思えば、会場の真ん中に私を突き飛ばしました。
受け身をとれず、私は無様にも床に転がってしまいました。
天井が見えます。
豪華なシャンデリア。
周りは、冷たい視線を向けてくる者もいましたが、大半は、面白い劇が始まったと笑っている者たちでした。
「殿下?」
私は呆然として、殿下の顔を見つめました。
「お前がアイリスを虐めていることは皆、知っている」
アイリスは、ヒロイン。
これは、婚約破棄イベントが始まった。と、前世の私がつぶやきました。
イベント…?イベントが始まったら、どうなるんですか?と私は、前世の私に問いました。
私は、処刑される。
と前世の私がつぶやきました。
私は、その言葉に絶望しました。
ーそんな…。
私は、少し鈍いようで、特に対人関係のあれそれを推測するのが、特に苦手でした。
だからというわけではないのですが、私は、殿下とアイリスと呼ばれる少女が仲良くなっていることすら知りませんでした。
苛めというのも何のことか分かりません。
私は、前世の私に教えてもらいました。
男爵令嬢ごときが、殿下と仲睦まじくしている姿を見て嫉妬した者たちにより、殿下とアイリス嬢は引き離されようとしているのだということを。
しかし、上手くいかなかったようで、そのミスを私に擦り付けようとしているのだと。
ーそうだったのですね。
私には、よく分かりませんが、分からないうちに物事が進んでいたようです。
処刑ということを考えると、死ぬのは怖いと感じます。
しかし、無知は最大の罪という言葉もあります。婚約者という身でありながら、私は殿下のことを知ろうとしなかったから、こんなことになったのかもしれません。
それならば、処刑も致し方ないのかもしれません。
私がうなだれていると、誰かが私の名前を呼びました。
「アリエッタ!」
その声は、私の大好きなお兄様の声でした。
会場がにわかにざわつきました。
お兄様は、私のもとに駆け寄り、そして私を立たせてくれました。
「大丈夫?アリエッタ」
「お……お兄様……」
私の瞳から涙がこぼれました。
「ごめんなさい、ごめんなさい、お兄様」
私は、混乱と悲しみで我を見失っていました。
そんな私をお兄様は抱きしめました。
「大丈夫だよ、アリエッタ」
お優しい言葉と共に、お兄様の手が私の背中を撫でます。
私は泣きじゃくりながらも、周りを見ましたが、皆一様に驚いたような表情を向けてくるだけで、私とお兄様に駆け寄ってきてくれるものは誰一人としていませんでした。
そして、私はここで処刑されるのだということを悟りました。
「お兄様……私、死にたくないです」
「大丈夫、アリエッタ。私がいる限り、アリエッタを死なせない」
お兄様はにっこりと笑ってくれました。
その笑顔を見ていれば大丈夫な気がしました。
「一体、何の真似だ」
「それは、こちらの言葉だ。お前はアリエッタを幸せにすると誓ったから手を引いたというのに、その誓いを破るとはな」
私は、驚きのあまりお兄様を見つめました。
誓い?いったい何のことでしょうか。
「こいつは、裏がある人間だった。そんな人間を妻に、この国の母になど出来るわけがなかろう」
「裏?」
お兄様が私を見つめてきました。
裏?
私をジッと見つめた後、お兄様は、また殿下に顔を向けると笑いかけました。
今まで見たことがないような、お兄様の意地悪な表情に、ちょっぴりドキドキしてしまいました。
「アリエッタに裏なんてあるものか。あるとしたら、そこの男爵令嬢だろう」
「なにを…」
男爵令嬢は、お兄様の顔を見るや否や、殿下を突き飛ばし、お兄様に走り寄ってきました。
「え?」
お兄様は、私を庇うように背中に私を移動させました。
そして、男爵令嬢は、お兄様に抱き着きました。
「え?」
私は、状況を飲み込めません。
「お、お兄様…?この方は、お兄様のお知り合いだったのですか?」
「違うよ。これが彼女の本心だよ」
「え?」
ど、どういうことでしょうか。
ーつまり、本命は、お兄様ってこと。
前世の私が教えてくれました。
お兄様は、私の血がつながった本当の家族ではありません。
父の幼馴染の子息だそうで、私とお兄様は物心つくころから、ずっと家同士の付き合いをしておりました。
ですから、私もほとんど家族同然の気持ちを抱いておりましたから、お兄様と呼んでおりました。
私は一人娘でしたので、兄弟はおりませんでしたから、兄や姉の存在は、私にとっての憧れの存在でしたから。
「君、私に近づくためにあいつに近づいたんだろ?」
「え?」
男爵令嬢である彼女が、お兄様に近づくには、お兄様の爵位に近い人たちに近づく必要があったそうです。
その過程で、男爵令嬢は私に目をつけたそうです。
殿下に近づくためには、婚約者の私の話題から近づけば、上手くいくと考え、実際にそれはうまくいったそうです。
殿下のお心が自分に向かうようにいろいろなことをしたそうです。
私は、殿下と話をしたことがないのに、私の話題で二人が仲良くなれたなんて、なんだか複雑です。
「私が君を好きになることなんて一生ないよ」
お兄様がそう吐き捨てると、男爵令嬢は顔を真っ赤にしました。そしてなぜか私のことを睨んできました。
「そ、そんな……私は貴方のために」
男爵令嬢は、お兄様に縋るように抱き着きます。
「私に触らないでくれ」
お兄様は冷たく彼女を突き放しました。
「私、貴方のことが好きなの!貴方のためなら何だってできるわ!」
彼女の目には狂気が宿っていました。
そんな彼女にお兄様は、本当に冷たい目を向けました。
まるで氷のよう。
私が、お兄様にこんな目を向けられたら、きっともう怖くて顔が見れなくなります。
ーなんか知らんが修羅場始まったな?
前世の私がつぶやきました。
少し楽しそうです。声しか聞こえないから、私には分かりませんが。
お兄様は、私を見て柔らかい笑みを浮かべました。
「アリエッタ」
「は、はい…お兄様」
「君はもう何も心配しなくていい」
お兄様はそういうと、私の前に跪きました。
そして私の手を取りました。
お兄さまは、少しだけ震えているようでした。
不安そうなお兄様。そんなお兄さまを私は見たことがありませんでしたから、驚いてしまいました。いつだって、私の前で優しそうで余裕にあふれておりましたから。
お兄様は私の手に口づけをしました。
「お、お兄様!?」
私は突然のことに驚いてしまいました。
そんな私にお兄様はフッと微笑みました。
「アリエッタ……私は君にとって良い兄でいることができなかった。私は君の幸せを願いながらも、ずっと君のことを独占したかったんだ。君は私の光だから」
「……」
私は呆然として、お兄様を見つめることしかできません。
だって、私にとって、お兄様はお兄様でしかなかったのですから。
いきなりこんなことを言われても、心が追いつきません。
ー殿下に嫌われているのに、どうして大丈夫だったの?
前世の私が聞いてきます。
殿下に嫌われても大丈夫?…そういえば、そうでした。
お友達がいなくても、婚約者である殿下に嫌われていても、全然気になりませんでした。
それは、お兄様がいたからでした。
どんなにつらいことがあっても、お兄様の姿を見るだけで、なんだか安心することができました。
「私と一緒についてきてくれるかい?」
お兄様は、この国の人間ではありません。
ですから、お兄様についていくということは、そのまま違う国に行くということになります。
「…はい」
私の答えは決まっていました。
殿下から、婚約破棄もされてしまいましたし、悲しいですが、この国にお友達はおりませんので、特にこだわることもありません。
「よかった」
「わっ」
お兄様が私を抱きしめます。
とっても嬉しそうです。その顔を見て、私もなんだかうれしくなります。
「それじゃあ、さっそくこの国から出よう」
「い、今からですか?」
「別に構わないさ。今日が卒業なのだから」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「…なにか?」
男爵令嬢の方が、ひどく慌てた様子です。
「ど、どうして…だってフラグは完璧だった…ルート入りしてるはずなのに…どうして」
「?」
なにをおっしゃっているのか分かりませんが、前世の私は「そのフラグをへし折りまくっていることに気づかなかったあなたの負けよ」と言っています。
よくわかりませんが、殿下とお幸せになってください。
私もよく分かりませんが、お兄様と幸せになりますから。
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