【完結】公爵令嬢の育て方~平民の私が殿下から溺愛されるいわれはないので、ポーション開発に励みます。

buchi

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第24話 セス様と魔法塔

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魔法塔は、塔ではなかった。
三階建ての建物で、塔屋が付いていたので、そう呼ばれているのかもしれない。

だが、地下室があって、そこで作成や実験は行われているらしかった。

「前にも一度会ったよね? セスだよ」

「あ、その節はお世話になりました」

セス様は大魔術師様である。額のキズを治してもらったことがある。ポーションにも造詣ぞうけいが深いらしい。まだ若いのにすごい。

相変わらず黒の、いかにも魔術師然とした、黒一色の衣装だった。
そして、殿下と違って目つきが怖い。

セス様は、私を上から下までじっくり眺め、尋ねた。

「保護膜が以前よりだいぶ薄れてきている。なにがあった?」

そんなことわかるのかー。

「昨日、人がちょっと目を離したすきに、ポーションを大量に作ったらしい」

殿下が言った。ちょっと目を離した隙にって、まるでペットの話じゃあるまいし。

「そうか。目覚めは近いな。毒の判定のポーションと毒消しを渡しておこう。作り方も教えておく」

毒? 怖いけど、興味ありますね。
ぜひ教えて欲しいです。
あ、でも、問題があるわ。

「でも、作る場所がないんです。学校では実技を禁止されていて」

セス様はちょっと驚いたらしく目を見張った。

「学校なのに?」

「私が平民だからですわ」

殿下とセス様は、嫌そうに顔を見合わせた。

「平民だからではなくて、ポーシャ嬢への嫌がらせなだけかもしれないな」

「学校に、偽アランソン公爵家の息のかかった教師は多そうだしね。実験場所を貸してくれるとは思えないな。ここは遠いし、難しいな」

セス様が考えこんだ。

「だけど、ポーシャ、どこであれだけ大量のポーションを作ったんだい?」

「モンフォール街十八番地」

二人はわからないという顔をした。

「おばあさまが、こちらに来るとき、知り合いにポーション作りがいると住所をくれたの。学校を辞めても、そこへ行けば何とかなるって」

「行ってみたの? 知り合いってどんな人だったの?」

「誰もいませんでした。テーブルの上にはしばらく休みますって書き置きがあって」

「誰の名前だった? 無記名?」

「マーシャ」

「マーシャ?」

二人は驚いたように叫んだ。

「君のおばあさまの名前じゃないか!」

「え? 母の名前じゃないんですか?」

「二人は同じ名前なんだ」

知らなかった……じゃあ、あの場所に出入りしていたのはおばあさまだったの?

「会いたい」

私は思わず言った。

「そうだね」

セス様がやさしく慰めてくれた。

「俺は会いたくないけど」

え?と思って、セス様の顔を見たが、もう私のことなんか見ていなかった。

おばあさまと別れてから半年近くが経つ。
今の学校生活が、あまりにも刺激的過ぎて、辛いとか悲しいとか思う暇がなかった。

どうしてだか、ザマァしたいゾとか考えたことはやたらに多かったけど!

「君のおばあさまは、きっと魔法の絨毯で出入りしていると思うんだ」

セス様が言った。

「魔法の絨毯?」

「うん。とても貴重な魔道具だ。よほど魔力のある人しか使えない。魔力を大幅に喰うのでね。でも、あなたのおばあさまなら、平気だろう。とにかく魔力喰いでね」

ええ? それを使って、毎朝、私の部屋に出勤してきている人がいるのですが?

「あなたのおばあさまのことだ。自分が行く範囲には、絶対絨毯を設置していると思うんだ。あなたが住んでいた田舎の屋敷にもあったんだよ」

「それで、いつもいきなり来ていたのですか!」

馬車の影もかたちもないのに、いつもおばあさまは突然屋敷に来た。
やっと理由がわかったわ。

セス様が話を続けた。

「だから、モンフォール街十八番地にも、絨毯があると思うんだ。絨毯があれば、瞬間移動が可能になる。速いし、街を通らないで済むので安全だからな。とはいえ簡単じゃない。絨毯がものすごく高価だからだ。買うことはちょっと無理だ。学校にはないと思う。どこかにあればいいんだが。知っている限りでは殿下の部屋にあるが、ポーシャ嬢が殿下の部屋に行くなんて無理だから」

私は殿下の顔を見た。隣の部屋に設置しましたよね。

殿下がコホンと咳払いをした。

「そこへ行けば、ポーションが作れるのか?」

殿下が聞いた。

「地下に設備があります。最新の設備が」

私が説明した。

「また、あの人は無駄遣いして。ポーション作らないくせに」

セス様がぼやいた。

「あの……もしかして、おばあさまをよくご存知なのですか?」

セス様は眉毛の間に皺を寄せてうなずいた。

「残念ながら」

えっ? 残念なの?

「私のお師匠様なのだ」

「お師匠様を残念呼ばわり?」

「仕方がないのだ。マーシャ様は、大魔術師なのだが、魔力の無駄遣いが多すぎる。節約という言葉を知らんのだ」

「そうそう」

殿下が合いの手を入れる。

「細かい事とか整理整頓だとか記録だとか、そう言ったことには全く関心も才能もなくて。一言で言えば大雑把なんだ」

私は何となしにうなずいた。

まあ、そうかもしれない。大体、おばあさまは力技でどうにかこうにかする方だ。

スープがトン単位で出来上がっていたり、風呂が沸騰していたりするのは日常茶飯事だった。


「まず、毒消しと毒判別のポーションを渡しておこう。それから、命のポーションも。これは万能だ」

セス様が幾つか小ビンを取り出した。

「毒消しは作らなかったけど、学校の課題で命のポーションは教わりましたわ」

セス様は驚いて私の顔を見た。

「あんな高度な技を?」

殿下も驚いたみたいだった。

「生徒なんかに作れっこないのに、授業で? 先生も作れないと思うよ?」

あの小太りの先生、やっぱり変なんだ。



私はその後、セス様から必要そうなポーションの作り方を教わり、何冊か本も借りた。

「まあ、作る場所があってよかったけど、街中を若い娘さんが一人で行くのは心配だな」

セス様が独り言のようにいうと、遂に殿下が渋々告白した。

「魔法の絨毯を、ポーシャの寮の隣の部屋に設置してある」

セス様の黒い目が極限まで見開かれた。

「この、けだもの」

私は、我が意を得たとばかりにうなずいた。

「食欲旺盛で困っているんです」

セス様が咎めるような顔つきになって、殿下を振り返った。

「なんだと?」

殿下は真っ赤になって違うと言い張っている。何を言っているんだか。

「朝ご飯を好き放題に発注するんです」

私は被害届を出した。

「私の泥棒魔法……ではなくて宅配魔法を使いまくるんです」

セス様は私の顔と、きまり悪そうにしている殿下の顔をかわるがわる見た。

そして、少しバカにしたような?憐れんだような表情になった。どうやら、それは私ではなくて殿下に向けたものらしかったけど。

「殿下、自分の首……と言うかポーシャ嬢の首を絞めてるようなものですよ? 魔力を使わせてはなりません。目覚めの時が近付いている。父上にはちゃんと相談なさっているのですよね?」

「何日、猶予があると思う?」

殿下は報告の件には答えず、別な質問をした。

「わかりません。でも多分、一週間くらい」

「もう時間がないな。では、ポーシャ、非常手段だ。校内で溺愛劇場だ」

何? それ?



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