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序章
第8話 またオレの事を騙そうとしてますよね。
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いつの間にか立場が逆転していた俺と皇帝だった。
イザーちゃんの名前を出しただけでこんなことにはなるとは思わなかったので、俺も混乱していた。でも、俺の彼女がそんなに凄い人だったという事が知れてどこか誇らしい気持ちになっていた。
いや、ちょっと待てよ。
もしも、イザーちゃんが俺と別れて新しい恋人が出来た。なんて話をしてしまったらまた立場が逆転してしまうのではないだろうか。
きっとそうに違いない。
だから、俺はイザーちゃんに新しい恋人が出来てしまったという事は隠しておかないといけないな。
イザーちゃんに好きな人が出来たって言われただけであって、まだ正式に別れたわけでもないし。俺も別れに同意なんてしてないんだから、まだ恋人同士だという事で間違いないだろう。
うん、そのはずだ。
「“まーくん”さんにはイザーちゃんの彼氏として艮に行ってもらい、その後は東西南北巽坤乾のいずれかに行って八姫とのお話なを行ってください。皆さん恐ろしい方ではありますが、イザーちゃんの彼氏である“まーくん”さんであれば問題なく接してもらえると思います。どの方も“まーくん”さんの精力を奪おうとしてくるかもしれませんが、イザーちゃんの名前を出せば何とかなるはずです。くれぐれも、八姫には“まーくん”さんの本当の名前を教えないように気を付けてくださいね。イザーちゃんの彼氏である“まーくん”さんの事を自分のモノにしようとするはずですから、それだけは避けてくださいね」
「良くわからないけどわかりました。つまらない事を聞いてしまうんですけど、皇帝と八姫ってどちらの方が立場が上なんですか?」
「難しい質問ですね。政治的にも軍事的にも八姫よりも皇帝の方が力はあるのです。極端な話、私が八姫を同時に攻撃したとしても圧倒的な勝利を収めることは確実だと思います。ですが、そんな事をしても何の意味も無いのです。八姫がいなくなれば我が帝国は名もなき神の軍勢によって滅ぼされてしまうでしょう。我が帝国は八姫に対して強くあり、八姫は名も無き神の軍勢に対して強くあり、名もなき神の軍勢は我が帝国に対して強くあるのです。三すくみというわけではないのですが、それに近い状態になっているのですよ」
「名も無き神って、神様も本当の名前を知られると操られる可能性があるって事なんですかね?」
「どうなんでしょうね。誰もその神を見た者はおらず、神託を受けたものがその意を伝えるという話ですよ。それが本当なのかわかりませんが、私たちとしてはそのような目に見えないものの存在を信じるわけにはいかないですからね」
名も無き神というのはどこかで聞いたような気がする。
どこかの宗教が崇める神様の名前が発音できない言葉だと聞いたことがある。何かのゲームかアニメで見たような気がするだけなので確証はないのだけれど、そんな事があったような気はしていた。
それが名も無き神と関係あるのかわからないけれど、そんな事はどうでもいい。
今は、イザーちゃんがいるという艮という場所に行く必要があるんだ。
「それで、その艮という場所に行くにはどうしたらいいんですか?」
「“まーくん”さんはこの土地にあまり詳しくないでしょうからお供を付けますので、その者を上手く使ってください。この世界の事でしたら大体の事を知っている何でも出来る最強メイドのアスモちゃんのことは、ご存知ないですよね?」
「はい、全く存じ上げてないです」
皇帝カムショットがテーブルの上にあった鈴を手に取って二度鳴らすのだが、それに対する反応は一切なかった。
しばらく待っていても何も起きないかったが、俺はどう反応していいのかわからずに黙って見守っていた。
「あれ、おかしいな。もしかして、この鈴は鳴ってなかったですか?」
「俺には鳴ってるように聞こえましたよ。もしかしたら、外には聞こえてないのかもしれないですね。扉も閉め切ってるし、外に音が聞こえてないのかもしれないですよ」
「ああ、なるほど。そういう事だったんですね。それなら納得だ。さすがに形だけとはいえ皇帝の呼び出しを無視することなんて無いですよね。もう一回、鳴らしてみますので待っててください。今度はちょっと大きめに鳴らしますけど、気にしないでくださいね」
優雅にチリンチリンと鳴らしていた先ほどとは異なり、今回は右手に盛った鈴を高く掲げて激しく左右に振り乱していた。
これだけ鳴らせば誰かも気付くだろうと思って待っていたのだけれど、先ほどと同様で誰もこの部屋に入ってくることはなかった。
その後も繰り返し繰り返し鈴を鳴らす皇帝カムショットとそれを見守る俺。
少しだけいたたまれなくなった俺はトイレに行くふりをして外の様子を見てきたのだが、長い廊下には誰もおらず人の気配も全く感じなかった。
そんなにしたいとは思わなかったけれど、一応トイレを済ませて出るとメイド服を身にまとった白髪の少女がタオルを俺に手渡してくれた。
持っていたハンカチで手を拭っていたのでタオルは必要なかったのだけれど、無言でタオルを渡されてしまっては使わないわけにはいかないだろう。
なぜか白髪少女メイドは俺の前を歩き、先ほどまでいた皇帝カムショットのいる部屋へと入っていった。
メイドなのにノックもせずに黙って入っていくのはどうなんだろうと思っていたのだが、皇帝カムショットはそんな細かいことは気にしないようだ。
「さっきから呼んでたの気付いていた?」
「気付いてましたけど、どうせ今回も大したことない用事だったんでしょ?」
「大したことないって決めつけないでよ。今回はとっても重要な任務をアスモちゃんに与えるんだから」
「そんな事言って、またオレの事を騙そうとしてますよね。皇帝だからってそんなイタズラをして何度も許されるなんて思わない方が良いですよ」
「今までの事はいったん忘れて、俺の話をちゃんと聞いてよ。って、なんで“まーくん”さんと一緒にいるのさ?」
「何でって、オレはメイドなんですから客である“まーくん”のお世話をしたっておかしくないでしょ。皇帝のお世話をするよりも何倍もマシですし」
「そこまで言わなくてもいいと思うんだけど。ちなみに、アスモちゃんに任せる大切な仕事ってのは、“まーくん”さんと一緒になって八姫とお話してきてもらう事だからね」
「“まーくん”と一緒に行動出来るのは嬉しいけど、八姫とお話とかオレには無理な話だよ。だって、あの人たちは俺の事を男として見てくれないんだもん」
「それはそうでしょ。アスモちゃんは男の子じゃなくて女の子なんだから。アスモちゃんのことを男だと思ってるのはアスモちゃんだけなんだからね」
悲しそうな顔をして目を潤ませるメイドのアスモちゃんは俺の目から見ても可愛い女の子にしか見えなかった。
トランスジェンダーってやつなのかもしれないが、ここまで可愛らしいとどう扱っていいのか困ってしまう。
「まあ、今はそれでいいや。じゃあ、コレからよろしくね。“まーくん”の力になれるように頑張るよ」
「こちらこそ、よろしく」
アスモちゃんが伸ばしてきた手を思わず握ってしまったが、その感触は完全に女の子の柔らかいお手手だった。
イザーちゃんともまだ手を握ってはいないんだけど、これは握手だからノーカンという事でいいだろう。
たぶん、大丈夫だよね?
イザーちゃんの名前を出しただけでこんなことにはなるとは思わなかったので、俺も混乱していた。でも、俺の彼女がそんなに凄い人だったという事が知れてどこか誇らしい気持ちになっていた。
いや、ちょっと待てよ。
もしも、イザーちゃんが俺と別れて新しい恋人が出来た。なんて話をしてしまったらまた立場が逆転してしまうのではないだろうか。
きっとそうに違いない。
だから、俺はイザーちゃんに新しい恋人が出来てしまったという事は隠しておかないといけないな。
イザーちゃんに好きな人が出来たって言われただけであって、まだ正式に別れたわけでもないし。俺も別れに同意なんてしてないんだから、まだ恋人同士だという事で間違いないだろう。
うん、そのはずだ。
「“まーくん”さんにはイザーちゃんの彼氏として艮に行ってもらい、その後は東西南北巽坤乾のいずれかに行って八姫とのお話なを行ってください。皆さん恐ろしい方ではありますが、イザーちゃんの彼氏である“まーくん”さんであれば問題なく接してもらえると思います。どの方も“まーくん”さんの精力を奪おうとしてくるかもしれませんが、イザーちゃんの名前を出せば何とかなるはずです。くれぐれも、八姫には“まーくん”さんの本当の名前を教えないように気を付けてくださいね。イザーちゃんの彼氏である“まーくん”さんの事を自分のモノにしようとするはずですから、それだけは避けてくださいね」
「良くわからないけどわかりました。つまらない事を聞いてしまうんですけど、皇帝と八姫ってどちらの方が立場が上なんですか?」
「難しい質問ですね。政治的にも軍事的にも八姫よりも皇帝の方が力はあるのです。極端な話、私が八姫を同時に攻撃したとしても圧倒的な勝利を収めることは確実だと思います。ですが、そんな事をしても何の意味も無いのです。八姫がいなくなれば我が帝国は名もなき神の軍勢によって滅ぼされてしまうでしょう。我が帝国は八姫に対して強くあり、八姫は名も無き神の軍勢に対して強くあり、名もなき神の軍勢は我が帝国に対して強くあるのです。三すくみというわけではないのですが、それに近い状態になっているのですよ」
「名も無き神って、神様も本当の名前を知られると操られる可能性があるって事なんですかね?」
「どうなんでしょうね。誰もその神を見た者はおらず、神託を受けたものがその意を伝えるという話ですよ。それが本当なのかわかりませんが、私たちとしてはそのような目に見えないものの存在を信じるわけにはいかないですからね」
名も無き神というのはどこかで聞いたような気がする。
どこかの宗教が崇める神様の名前が発音できない言葉だと聞いたことがある。何かのゲームかアニメで見たような気がするだけなので確証はないのだけれど、そんな事があったような気はしていた。
それが名も無き神と関係あるのかわからないけれど、そんな事はどうでもいい。
今は、イザーちゃんがいるという艮という場所に行く必要があるんだ。
「それで、その艮という場所に行くにはどうしたらいいんですか?」
「“まーくん”さんはこの土地にあまり詳しくないでしょうからお供を付けますので、その者を上手く使ってください。この世界の事でしたら大体の事を知っている何でも出来る最強メイドのアスモちゃんのことは、ご存知ないですよね?」
「はい、全く存じ上げてないです」
皇帝カムショットがテーブルの上にあった鈴を手に取って二度鳴らすのだが、それに対する反応は一切なかった。
しばらく待っていても何も起きないかったが、俺はどう反応していいのかわからずに黙って見守っていた。
「あれ、おかしいな。もしかして、この鈴は鳴ってなかったですか?」
「俺には鳴ってるように聞こえましたよ。もしかしたら、外には聞こえてないのかもしれないですね。扉も閉め切ってるし、外に音が聞こえてないのかもしれないですよ」
「ああ、なるほど。そういう事だったんですね。それなら納得だ。さすがに形だけとはいえ皇帝の呼び出しを無視することなんて無いですよね。もう一回、鳴らしてみますので待っててください。今度はちょっと大きめに鳴らしますけど、気にしないでくださいね」
優雅にチリンチリンと鳴らしていた先ほどとは異なり、今回は右手に盛った鈴を高く掲げて激しく左右に振り乱していた。
これだけ鳴らせば誰かも気付くだろうと思って待っていたのだけれど、先ほどと同様で誰もこの部屋に入ってくることはなかった。
その後も繰り返し繰り返し鈴を鳴らす皇帝カムショットとそれを見守る俺。
少しだけいたたまれなくなった俺はトイレに行くふりをして外の様子を見てきたのだが、長い廊下には誰もおらず人の気配も全く感じなかった。
そんなにしたいとは思わなかったけれど、一応トイレを済ませて出るとメイド服を身にまとった白髪の少女がタオルを俺に手渡してくれた。
持っていたハンカチで手を拭っていたのでタオルは必要なかったのだけれど、無言でタオルを渡されてしまっては使わないわけにはいかないだろう。
なぜか白髪少女メイドは俺の前を歩き、先ほどまでいた皇帝カムショットのいる部屋へと入っていった。
メイドなのにノックもせずに黙って入っていくのはどうなんだろうと思っていたのだが、皇帝カムショットはそんな細かいことは気にしないようだ。
「さっきから呼んでたの気付いていた?」
「気付いてましたけど、どうせ今回も大したことない用事だったんでしょ?」
「大したことないって決めつけないでよ。今回はとっても重要な任務をアスモちゃんに与えるんだから」
「そんな事言って、またオレの事を騙そうとしてますよね。皇帝だからってそんなイタズラをして何度も許されるなんて思わない方が良いですよ」
「今までの事はいったん忘れて、俺の話をちゃんと聞いてよ。って、なんで“まーくん”さんと一緒にいるのさ?」
「何でって、オレはメイドなんですから客である“まーくん”のお世話をしたっておかしくないでしょ。皇帝のお世話をするよりも何倍もマシですし」
「そこまで言わなくてもいいと思うんだけど。ちなみに、アスモちゃんに任せる大切な仕事ってのは、“まーくん”さんと一緒になって八姫とお話してきてもらう事だからね」
「“まーくん”と一緒に行動出来るのは嬉しいけど、八姫とお話とかオレには無理な話だよ。だって、あの人たちは俺の事を男として見てくれないんだもん」
「それはそうでしょ。アスモちゃんは男の子じゃなくて女の子なんだから。アスモちゃんのことを男だと思ってるのはアスモちゃんだけなんだからね」
悲しそうな顔をして目を潤ませるメイドのアスモちゃんは俺の目から見ても可愛い女の子にしか見えなかった。
トランスジェンダーってやつなのかもしれないが、ここまで可愛らしいとどう扱っていいのか困ってしまう。
「まあ、今はそれでいいや。じゃあ、コレからよろしくね。“まーくん”の力になれるように頑張るよ」
「こちらこそ、よろしく」
アスモちゃんが伸ばしてきた手を思わず握ってしまったが、その感触は完全に女の子の柔らかいお手手だった。
イザーちゃんともまだ手を握ってはいないんだけど、これは握手だからノーカンという事でいいだろう。
たぶん、大丈夫だよね?
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