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序章
第7話 イザーちゃんは俺の彼女ですね
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陽気な男が皇帝だという事を聞いて信じられないというのが本音だったが、こうして二人だけで対面すると他の人とは違う威厳を感じていた。
先ほどの獣臭い美人の獣人とは違う恐ろしさがにじみ出ているように思えた。
「みんなが見ていたからあんな風にしてたんだけど、本来の俺ってあんまり社交的じゃないんだよね。本当はあんな風に目立つのとか好きじゃないんだけど、みんなに臨まれているから仕方なくあんなことをやってるって事なのさ。で、お前は俺のために何をしてくれるのかな?」
最初は和やかな感じで俺が感じていた恐ろしさは気のせいだったのかもしれないと思ったのだけれど、途中から急に印象が変わって今すぐにでもこの場から逃げ出したいと考えていた。
逃げることしか考えられなくなっているのに、体は恐怖で動かない。逃げ出したいのに逃げられなくなっていた。
そんな状態なので当然皇帝の質問に答えることは出来ないのだが、心の広い皇帝はそんな俺の様子を察してくれたのか最初のような優しい感じに戻っていた。
どっちが彼の本性なのかわからないが、逆らう事だけはやめておこうと心に誓ったのだ。
「それで、お前はいったいどこから来たんだ?」
「どこからと言われても、ここがどこなのかもわからないので何と答えればいいのかわからないです。イザーちゃんのベッドで横になってから記憶が無くて、俺は一体どうなっちゃってるんですかね?」
獣臭い美人な獣人のお姉さんの他にもやたらと身長の高い甲冑の人とか観客席にいた尋常じゃなくスタイルの良いお姉さんたちなど、俺がもともといた地球では見かけない人が多いという事を考えれば、ここはきっと俺の知らない世界なんだろう。
恋人であるイザーちゃんのベッドで横になって気が付いた時には異世界にいた。
そんなおかしなことがあってたまるかと思うのだが、俺が今まで見ていたものが夢でなければここは確実に俺が暮らしていた世界とは違う世界なのだ。
そしてなぜか、俺の目の前にいる皇帝が俺を警戒しているような気がしてきた。
先ほど感じた逃げ出したくなるような威圧感でもなく、最初に見た時の陽気な感じでもない、少しだけ俺と距離をとっているような感じがするのだ。椅子に座っているのでそんな事は無いと思うのだけれど、俺と皇帝の距離が少しだけ離れているように思えていた。
「一つ確認させて欲しいのだが、君がさっき言っていたベッドの持ち主の名前を教えて貰ってもいいかな?」
「俺が横になったのはイザーちゃんのベッドですけど、それがどうかしたんですか?」
「大変申し訳ないのだが、あなたがイザーちゃんと呼ぶという事は、どんな関係性だったりするのかな?」
「え、俺とイザーちゃんの関係性ですか。自分で言うのもちょっと恥ずかしいですけど、イザーちゃんは俺の彼女ですね」
俺の答えを聞いている皇帝は少しずつ体勢を崩していって、最終的には椅子から転げ落ちてしまっていた。何かあったのかと思って手助けをしようと思ったのだが、皇帝は俺に向かって手を伸ばして大丈夫だという事をアピールしてきた。
あまり恥をかかせるのも良くないと思って俺はそのまま見守っていたのだが、皇帝は俺をじっと見たまま視線を外そうとしなかった。
椅子から落ちたのが恥ずかしいとは思うけど、そんな事を誰かに言ったりはしないので安心して欲しい。そう伝えたいところではあるが、皇帝は何か落ち着かない様子で何度も腕を動かしていた。
「そうだったんですね。そうだったのか。いやいや、そういう事だったらこちらも安心です。良かった良かった。身元がわからなかったからとはいえ、袋をかぶせるなど無礼なことをして申し訳ないです。私達も素性の知れぬものが門の前に突然現れたら警戒するというのも自然なことなのですよ。そこはご理解いただけるとありがたいのですが」
「俺もどうしてここにいるのかわかってないんですよ。イザーちゃんにベッドに寝てくれと言われて寝てたんですけど、気が付いたらここに捕まっていたって感じです」
「なるほど。それでしたら、八姫が伝説の肉欲処女を想像するためにあなたを呼び出したという事なのですね。それなら納得だ。そうそう、申し遅れましたが、私はこの神聖サキュバス帝国の皇帝カムショットです。名ばかりの皇帝ではありますが、それなりに使える力はあると思いますので、お困りの際は何なりとお申し付けください」
「えっと、俺の名前は“ ”です。普通の高校生でイザーちゃんの彼氏です」
皇帝カムショットに続いて俺も自己紹介をしようとしたのだけれど、名前を言う直前で止められてしまった。
俺の名前を聞きたくないという事なのだろうか?
「お待ちください。あなたの世界ではどうかわかりませんが、この世界では自分の本当の名前を気軽に名乗ることはおやめになった方がよろしいですよ。力のある者が名前を知ることで相手を操る事も出来ますからね。なので、これ以降は名前を聞かれても本当の名前は答えないようにしてくださいね」
皇帝の態度も言葉遣いも最初の時と全く変わってしまったのだが、いったいこれはどういう事なのだろうか。
俺がイザーちゃんの話をした後からこんなに変わったと思う。イザーちゃんはこの世界で何をしていたのだろうか?
この世界に関係のあるイザーちゃんが俺の彼女であるイザーちゃんなのかわからないけれど、そんなに一般的に名前でもないのでたぶん同一人物なのだろう。そう思う一番の理由は、俺がイザーちゃんのベッドで横になった後にこの世界に来ているという事だ。
「俺は全然気にしてませんよ。俺だって家の前にいきなり知らない人がいたら警戒しますもん。そんな事滅多にないと思いますけど、同じ状況だったら襲われないように警戒はすると思いますからね」
「そう言ってもらえるとありがたいです。ちなみになんですけど、イザーさんは一緒じゃないんですか?」
「一緒じゃないですね。どこに居るか知ってたりしますか?」
「全然知らないです。むしろ、どこに居るか知りたいくらいですよ。八姫の力を借りることが出来れば私たちの願いも成就するはずですからね」
「八姫って何ですか?」
「伝説になりえるほどの美貌と力を持った八人の女性ですよ。ご存知ないんですか?」
「まったく知らないです。初耳ですよ」
皇帝はまたもや驚いていたのだが、それを見ていた俺も思わず驚いてしまった。
そんな俺を見て皇帝は何故かまた椅子から落ちたのだが、すぐに起き上がって座りなおすと電話のようなものを手に取って誰かを呼び出していた。
先ほどの獣臭い美人の獣人とは違う恐ろしさがにじみ出ているように思えた。
「みんなが見ていたからあんな風にしてたんだけど、本来の俺ってあんまり社交的じゃないんだよね。本当はあんな風に目立つのとか好きじゃないんだけど、みんなに臨まれているから仕方なくあんなことをやってるって事なのさ。で、お前は俺のために何をしてくれるのかな?」
最初は和やかな感じで俺が感じていた恐ろしさは気のせいだったのかもしれないと思ったのだけれど、途中から急に印象が変わって今すぐにでもこの場から逃げ出したいと考えていた。
逃げることしか考えられなくなっているのに、体は恐怖で動かない。逃げ出したいのに逃げられなくなっていた。
そんな状態なので当然皇帝の質問に答えることは出来ないのだが、心の広い皇帝はそんな俺の様子を察してくれたのか最初のような優しい感じに戻っていた。
どっちが彼の本性なのかわからないが、逆らう事だけはやめておこうと心に誓ったのだ。
「それで、お前はいったいどこから来たんだ?」
「どこからと言われても、ここがどこなのかもわからないので何と答えればいいのかわからないです。イザーちゃんのベッドで横になってから記憶が無くて、俺は一体どうなっちゃってるんですかね?」
獣臭い美人な獣人のお姉さんの他にもやたらと身長の高い甲冑の人とか観客席にいた尋常じゃなくスタイルの良いお姉さんたちなど、俺がもともといた地球では見かけない人が多いという事を考えれば、ここはきっと俺の知らない世界なんだろう。
恋人であるイザーちゃんのベッドで横になって気が付いた時には異世界にいた。
そんなおかしなことがあってたまるかと思うのだが、俺が今まで見ていたものが夢でなければここは確実に俺が暮らしていた世界とは違う世界なのだ。
そしてなぜか、俺の目の前にいる皇帝が俺を警戒しているような気がしてきた。
先ほど感じた逃げ出したくなるような威圧感でもなく、最初に見た時の陽気な感じでもない、少しだけ俺と距離をとっているような感じがするのだ。椅子に座っているのでそんな事は無いと思うのだけれど、俺と皇帝の距離が少しだけ離れているように思えていた。
「一つ確認させて欲しいのだが、君がさっき言っていたベッドの持ち主の名前を教えて貰ってもいいかな?」
「俺が横になったのはイザーちゃんのベッドですけど、それがどうかしたんですか?」
「大変申し訳ないのだが、あなたがイザーちゃんと呼ぶという事は、どんな関係性だったりするのかな?」
「え、俺とイザーちゃんの関係性ですか。自分で言うのもちょっと恥ずかしいですけど、イザーちゃんは俺の彼女ですね」
俺の答えを聞いている皇帝は少しずつ体勢を崩していって、最終的には椅子から転げ落ちてしまっていた。何かあったのかと思って手助けをしようと思ったのだが、皇帝は俺に向かって手を伸ばして大丈夫だという事をアピールしてきた。
あまり恥をかかせるのも良くないと思って俺はそのまま見守っていたのだが、皇帝は俺をじっと見たまま視線を外そうとしなかった。
椅子から落ちたのが恥ずかしいとは思うけど、そんな事を誰かに言ったりはしないので安心して欲しい。そう伝えたいところではあるが、皇帝は何か落ち着かない様子で何度も腕を動かしていた。
「そうだったんですね。そうだったのか。いやいや、そういう事だったらこちらも安心です。良かった良かった。身元がわからなかったからとはいえ、袋をかぶせるなど無礼なことをして申し訳ないです。私達も素性の知れぬものが門の前に突然現れたら警戒するというのも自然なことなのですよ。そこはご理解いただけるとありがたいのですが」
「俺もどうしてここにいるのかわかってないんですよ。イザーちゃんにベッドに寝てくれと言われて寝てたんですけど、気が付いたらここに捕まっていたって感じです」
「なるほど。それでしたら、八姫が伝説の肉欲処女を想像するためにあなたを呼び出したという事なのですね。それなら納得だ。そうそう、申し遅れましたが、私はこの神聖サキュバス帝国の皇帝カムショットです。名ばかりの皇帝ではありますが、それなりに使える力はあると思いますので、お困りの際は何なりとお申し付けください」
「えっと、俺の名前は“ ”です。普通の高校生でイザーちゃんの彼氏です」
皇帝カムショットに続いて俺も自己紹介をしようとしたのだけれど、名前を言う直前で止められてしまった。
俺の名前を聞きたくないという事なのだろうか?
「お待ちください。あなたの世界ではどうかわかりませんが、この世界では自分の本当の名前を気軽に名乗ることはおやめになった方がよろしいですよ。力のある者が名前を知ることで相手を操る事も出来ますからね。なので、これ以降は名前を聞かれても本当の名前は答えないようにしてくださいね」
皇帝の態度も言葉遣いも最初の時と全く変わってしまったのだが、いったいこれはどういう事なのだろうか。
俺がイザーちゃんの話をした後からこんなに変わったと思う。イザーちゃんはこの世界で何をしていたのだろうか?
この世界に関係のあるイザーちゃんが俺の彼女であるイザーちゃんなのかわからないけれど、そんなに一般的に名前でもないのでたぶん同一人物なのだろう。そう思う一番の理由は、俺がイザーちゃんのベッドで横になった後にこの世界に来ているという事だ。
「俺は全然気にしてませんよ。俺だって家の前にいきなり知らない人がいたら警戒しますもん。そんな事滅多にないと思いますけど、同じ状況だったら襲われないように警戒はすると思いますからね」
「そう言ってもらえるとありがたいです。ちなみになんですけど、イザーさんは一緒じゃないんですか?」
「一緒じゃないですね。どこに居るか知ってたりしますか?」
「全然知らないです。むしろ、どこに居るか知りたいくらいですよ。八姫の力を借りることが出来れば私たちの願いも成就するはずですからね」
「八姫って何ですか?」
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