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〜第六章 ファーブラ・巨人族〜
121話✡︎✡︎シュンパティア✡︎✡︎
しおりを挟むその日のうちに、サラン王国、アグド、クリタス王国にエレナから水の鳥が放たれた。
エレナはそれ以外の小国にも水の鳥を放つ、クリタス王国の南にある小国ペンシード、セレスの西にある旧オプシェン領にあるカックルス等、種族国家では無い異種族共存国家である……
異種族共存国家は、ある意味理想的な国家ではあるが、それぞれの種族神の恩恵を受けにくい為に国家としては繁栄し難い。
その為に彼らは異種族国家同士の繋がりを大切にしている、そうで無ければ旧体制のアグドやサラン王国に直ぐに攻め滅ぼされてしまうのだ。
エレナはその世界のあり様には昔から疑問を抱いていた……
争乱の時代に種族国家は争い続けた、神々の恩恵の元に繁栄した巨大な国力同士がぶつかり合った。
種族と言う絆が、内乱が起きても皮肉にも大きな分裂などを起こさず、大国は大国として永遠と言える様な十万年にも及ぶ長い時代を維持し続けていた。
そしてエレナが導いた二千年にも及ぶ、長い平和な時を過ごし、それぞれの国家は力を蓄え続けている。
エレナは初めて異種族国家も交え、出来る限り多くの王を集めて話し合う事にした。
場所はベルリス温泉、あの地はそもそも全ての種族が交流出来る様に開発を進めてきた。
まだ全ての建設が終わっていない、まだ完成し切ってないが。
既に完成後の都市の名は考えてある、これを機に名を変える事にした。
『シュンパティア』
エレナは大陸の様な名を考えていた。
全ての種族が共存出来る街、そう願い名付けていた。
エレナは最終的には種族国家と言う物を無くしたいと考えていた、種族と言う考えが差別を生み出す……エレナの中でその答えは出ていた。
ユリナがエレナの壮大な構想を記した、書類に目を通していた。
セレスを変える為に、試行錯誤して悩み抜いたのが良く見て取れる。
だがユリナはこの『シュンパティア』と名付けられた、エレナの理想が叶わない気がしてならなかった。
争いの無い、全ての種族が歌い踊る挿し絵が最後に挟まれていた。
エレナが書いたのか、綺麗な絵でそれがユリナに切なさを感じさせた。
ユリナは予感していた。
この世界が無くなる事を、だが疑念を抱いていた。
フェルトが言っていた守りたい未来、それが違う未来の様な気がしてならなかった。
その頃、セレス隣国のサラン王国では不穏な動きをしている者達が居た……
古びた神殿、いや廃墟と言うのが正解であろうか、その聖堂の奥から声がする。
「いつでも兵を動かせます……」
黒いローブを着た者が、背の低い片腕しか無い細身のローブを着た者に話しかけていた。
「慌てるな……
ガーラの足取りが解らない……
あいつが来たら兵も役に立たない……
もう暫く待て……」
声からして女性の様だ、そしてその女性は片腕であった、片腕の女性は一人になり呟いた。
「まさか騙されていたなんて……」
十日程してエレナが送った各国への手紙の返事が届き始めた。
各国はエレナの要請に応え、二ヶ月後にベルリス温泉で話し合う事になった……
二ヶ月……遠方の国からベルリス温泉まで向かうのには時間が掛かる為だ。
だがサラン王国だけは、執政が来る事になった国王が不在の様だ……。
そしてユリナとカナは久しぶりに、エレナのもとで過ごしている。
エレナもカナが帰ってきてる為に、執務は手早く終わらせて母としてカナとの時間を大切にしている。
僅かな僅かな平穏を楽しんでいるが、ユリナは時間を作っては、ウィンディアの魔力を剣に込めて振っていた。
いまウィンダム、トールはクリタス王国にいる。
その為に風を操れるか、ウィンディアの力を使いこなせるか不安になっていたのだ。
「ユリナ焦ってるのかい?」
「えっ?お父さん焦っては無いよ……
ただ……」
「ただ?」
「お母さんみたいに私はまだ戦えないから……」
「なら私も付き合おうか……」
アルベルトがそう言いユリナから少し離れて剣を抜いた。
ユリナは少し気がほぐれた、父に剣の相手をして貰うのは初めてで嬉しかった。
アルベルトは本当に強い、光神ルーメンだからでは無い、人間の体で限界まで鍛えられ、全て万能にこなす……
人間の特徴、何かに秀でたものが無く、特に苦手と言うものが無い。
「さぁ、かかっておいで」
優しい微笑みを見せながら言ったその言葉から偉大さと、自信に満ち溢れているのをユリナは感じとっていた。
だがその瞳は父としての優しい瞳であった。
ユリナは本気で駆け込み凄まじい速さで跳び上から斬り込んだ!
アルベルトはユリナの斬撃を片手で受け止めた!
「‼︎」
一瞬時が止まった様に思えた、そんなオークの様な芸当を人間が出来るはずなかった。
ユリナは着地と同時に横から、凄まじい速さで星屑の劔を振り抜こうとするが、それもアルベルトの劔一本で簡単に止められてしまう。
そして、凄まじい速さの拳がユリナの顔面目掛けて飛んで来たが、ユリナはとっさに距離を取る……
今のは明らかに入っていたが、僅かに寸止めされていた。
「いいぞユリナ、私を殺すつもりで来なさい……私は死者……
何も気にすることはない。
さぁ来なさい……」
これが実力の差「ヘブンス」天の称号を持つ者……
ユリナは初めて父アルベルトの強さを体感していた。
そしてそんな父を嬉しくなり誇りに思えた、エレナが勝てないのは夫婦で夫を立ているからでは無い、本当に強いのだ。
ユリナは勝ちたくなった、本気で勝ちたくなった。
母エレナが、何度剣を交えても勝てなかった騎士ヘブンス・オブ・アルベルトに。
ユリナは凄まじい殺気を放ち、アルベルトに向かって行く!
凄まじい速さで突進したまま、その勢いで突きを入れ、左に躱されたがそのままなぎ払う!
だが擦りもしない、アルベルトが斬り込んだ剣をユリナは下がって躱したがアルベルトはピッタリと距離を縮めてくる。
その動きを見てユリナは蹴りを入れようとするが、アルベルトが何かを囁くと同時にシールドが現れ、そのシールドで繰り出すシールドアタックをもろに受け、飛ばされて星屑の劔を放してしまい壁に飛ばされて行くが……
その壁を蹴り距離を取り着地し走り出し指輪から弓を出し走りながら矢を放つ!
アルベルトも、ユリナの矢の速さに僅かに遅れ三本のうち一本は払えずに躱している!
「矢では私には勝てないぞ!」
アルベルトが笑みを零しながら叫ぶ!
ユリナは一気に距離を縮め、矢で殴りつけようとするが、簡単に防がれた時に凄まじい速さでアルベルトの顔を引っ叩いた!
力も込めずに速さだけを考えたらそうなったのだ、顔を引っ叩かれたアルベルト直ぐにユリナを見た時!
ユリナは至近距離で弓を放った!
「うお!」
アルベルトが必死で躱したが、その時にユリナは既に星屑の劔を手に斬りかかってきた!
それは剣でいなされて、アルベルトの手刀がユリナの首に触れた……
「速い……」
ユリナは思わず声を漏らした。
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