133 / 234
〜第六章 ファーブラ・巨人族〜
122話✡︎✡︎瞳の力✡︎✡︎
しおりを挟む「ユリナ?父さんの事を人間だからと思ってたら勝てないぞ」
アルベルトは笑顔でそう言った。
「人間は強い、努力すれば何でも出来る……そしてエルフと違って百年しか生きられない……
だから一生懸命になれるんだ……
一秒一秒が大切なんだ」
ユリナはその言葉に別の意味も感じた……
だが解らなかった。
「ユリナ、なぜサランがあると思う?」
アルベルトがユリナに質問を投げかけて来た……不思議な質問だった。
人間の国、サラン王国……なぜあるかなんて解る訳がない。
「不思議だと思わないかい?
オークには力、エルフは速さ、ドワーフには物作りそう言った、素晴らしい特技がある……
だが人間にはそう言った特技はない……
それなのに種族国家として国を保ち続けている」
確かに言われると気付くが、他の種族と見比べれば人間だけ異質である。
かつての時代は人間は軽視されがちであった、だが種族国家として広い領土も保有して維持し続けている。
何故だろう……ユリナは疑問に思ったが直ぐにアルベルトが答えた。
「他種族が人間を見下しているからだ……」
その言葉にユリナはドキッとした、さっきユリナは人間に出来るはずが無い!と思って戦っていた。
「傲慢と言えるな、それは……
その想い上がりを私達人間は打ち砕いて来た。
ユリナ、覚えておきなさいこの世界の全ての種族は対等で無ければならない。
セレスとサランが同盟を結べたのも、エレナが人間を対等な存在として、接し続けてくれたからだ……
お母さんの姿をよく見ておきなさい」
アルベルトは父として話していた。
だがそれは神として大切なことでもあった……アルベルトもユリナの成長をさり気なくではあるが、暖かく見守っていた。
「もう少し剣を交えてみないか?」
またアルベルトから誘った、ユリナは人を種族としてみる事自体が差別だと言う事に気付かされた……
そして最高の騎士に挑んだ。
アルベルトは剣を受けて、僅かな違いを感じる……その剣は普通は見えない輝きを僅かに放っていた。
それは曇り無く純粋に力を求める剣になっていた。アルベルトの光神ルーメンとしての神の瞳がそれを捉えた。
(そうだ……剣に心を乗せるには……
人を見下す様な心では剣が心を乗せてくれない……)
アルベルトはそう微笑みながら、ユリナの剣を受け止めて相手している。
「お母様、ユリナとお父様が」
「えぇ、あの人が珍しく剣を教えてますね、カナ久しぶりに私達もどう?」
「はいお母様、私も上達しましたが……
フェルト卿と交えてみませんか?」
カナがエレナにフェルトとの剣を勧めた、その時、フェルトはアルベルトの剣と身のこなしを見て、唖然としていた。
フェルトもこれ程強い人間を見た事が無かったのだ、ユリナも決して弱くは無い、いやカナより全体的に見れば優れている。
フェルトはユリナが大剣を使わず、カナと同じ片手剣の使い手ならどれだけ速い斬撃を放つのか想像したが出来なかった。
(うーん、ユリナの剣で驚いてる様じゃお母様の相手になりませんね)
カナは根に持っている様だ。
「フェルト卿?いいかしら?」
エレナから聞く。
「あぁ……お願いします」
フェルトが答える。
セレス国女王、エレナと剣を交えるのがこんなに簡単だとは思って居なかった、褐色のエルフ、白きエルフとは因縁深い、その為にエレナから声をかけられるとは思って居なかったのだ。
二人が中庭に出ると、それに気付いたアルベルトとユリナが中庭から出る、先ほどよりいい勝負をしていたが、二人は少し休む事にしたのだ。
「いつも見ているかも知れないが、お母さんの足をよく見ていてごらん」
アルベルトがユリナに言う。
「足?」
ユリナが聞く。
「あぁ、いい手本になるはずだ」
エレナとフェルトが中庭に出て、剣を構える、今日もエレナのクリスタルの小太刀が、日を浴びて美しく輝いている。
そして二人の息が一瞬あった時、エレナから仕掛けた。
素早く走り込み、薙ぎ払う様に横から斬りつける、フェルトはその太刀を剣で止めてそのまま前にでた。
エレナは予想外の動きに、次の手が一瞬遅れ連続で斬りかかれなかった。
見事にフェルトはエレナの先を読んだが、それでも凄まじい速さでエレナは突きを入れてきた。
フェルトはそれを躱し素早い剣で、エレナの髪をかすめる。
(少しはやるのね……)
エレナがそう思った時、アルベルトがユリナに囁く。
「ユリナ、今の足を見てたかい?」
「うん……フェルトが躱したのと同時にもう足を引いていたよね……」
ユリナはエレナの足の動きを良く見ていた。
「そう……あれがエレナの上手い所なんだ、カナも聞きなさい。
エレナは相手が躱した時には反撃が来ると読んでいる……だから躱されたのと同時に躱す体勢に入ってるんだ……
普通の剣士はそれを速さだけで補っている。
だがエレナは前もってその体勢に入ってから躱した上で凄まじい速さで反撃してくる。
私も油断すれば、これが無い程完璧な動きなんだ」
アルベルトはそう言いながら、自分の首にスッと手で線を引く。
ユリナとカナはアルベルトの説明を聞きながらエレナの動きを真剣に見ていた。
だがエレナはそれを無意識に行っていたので、アルベルトの見ている事には気付いて居なかった。
(これが女王の剣……
隙がない……)
フェルトはその完璧な動きを崩せずにいた。
(と言うか……
エレナ強くなったか?)
アルベルトはエレナのただでさえ完璧な動きの鋭さに磨きがかかり、正確性が増している事に気付いた。
そうアルベルトが気付いた時、フェルトは集中力を高めていた、そしてその瞳の力を使う。
褐色のエルフの力、ダークセンス。
その瞬間、フェルトはエレナの血の流れや力の入り方をエレナの魂から読み取る。
そしてエレナが凄まじい一撃を放つことを読み、フェルトはそれを躱す為に力を抜いた瞬間、刹那とも言える速さの斬撃が放たれた。
フェルトはそれを躱した。
(……読まれた?……違う……
これは……
ふ~ん……)
エレナは気付いた、そして報復する。
エレナは瞳を強く見開く……。
(なっ!)
フェルトは焦った、フェルトの力が封じられたのだ……。
「私に気でもあるの?
全身を見るなんて気が早いわよっ!」
エレナが挑発をする。
ユリナとカナが何を言っているのか解った、祝福の力の様な瞳の力をフェルトが持っていたのだ。
そしてフェルトを白い目で見る……。
「なっ!俺は魂を見ただけだ‼︎
そっそんな体なんて……
俺には興味ない‼︎」
フェルトは否定しながら剣を振っているが、焦りが剣に生じたのをエレナは見抜きフェルトの剣を美しく弾いた。
そして勢いよくクリスタルの小太刀の刃を首に当て、息がかかる程まで顔を近づける。
「もっと大人になってからね……」
そう優しく囁き、フェルトを子供扱いして遊んだ。
「…………」
だが美しいエレナのその姿にフェルトの時が止まっていた。
「ちょっと、あんたにはメモリアさんが居るんでしょ⁈
何ボーッとしてるのよ?」
ユリナがどつく様に言う。
「エレナ?少しいたずらが過ぎないか?」
アルベルトが歩み寄って来るエレナに微笑みながら言う。
「いいのよ、ズルしたんだから。
少しくらいは……」
そう言いながらエレナがフェルトを見た時、カナがフェルトの首に剣を当て、ユリナが問い正していた。
ある意味尋問である……
「ほら、うちの子はエレナに似て綺麗だが、真っ直ぐに動くからさ……
フェルトも族長なんだし……
あれは族長に対する扱いでは無いと思うが……」
アルベルトが言う。
ユリナはフェルトが何か言い訳をしようとすると、引っ叩いている……。
「うるさい!
お母さんの何を見ようとしたのか!
はっきり言いなさい‼︎」
ユリナが言う。
エレナは汗をかきながら見ている……
既に尋問である……
「まぁ……
仲がいいと言うことにしましょう」
エレナはそう言う。
「ユリナ!あまりやり過ぎるなよ‼︎」
アルベルトが尋問を楽しむユリナに言う。
「はーい!」
ユリナは元気に返事をした。
気づけば、フェルトもそうは怒ってはいない、歳も近い若者のやり取りに変わって来ていた。
0
あなたにおすすめの小説
収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
追放令嬢と【神の農地】スキル持ちの俺、辺境の痩せ地を世界一の穀倉地帯に変えたら、いつの間にか建国してました。
黒崎隼人
ファンタジー
日本の農学研究者だった俺は、過労死の末、剣と魔法の異世界へ転生した。貧しい農家の三男アキトとして目覚めた俺には、前世の知識と、触れた土地を瞬時に世界一肥沃にするチートスキル【神の農地】が与えられていた!
「この力があれば、家族を、この村を救える!」
俺が奇跡の作物を育て始めた矢先、村に一人の少女がやってくる。彼女は王太子に婚約破棄され、「悪役令嬢」の汚名を着せられて追放された公爵令嬢セレスティーナ。全てを失い、絶望の淵に立つ彼女だったが、その瞳にはまだ気高い光が宿っていた。
「俺が、この土地を生まれ変わらせてみせます。あなたと共に」
孤独な元・悪役令嬢と、最強スキルを持つ転生農民。
二人の出会いが、辺境の痩せた土地を黄金の穀倉地帯へと変え、やがて一つの国を産み落とす奇跡の物語。
優しくて壮大な、逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる