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43話
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「ついにできた……記念すべき第一草!」
「――ったく、朝からなんだと思ってきてみりゃ、ただの薬草かよ」
先日の鍛錬でボロボロになった男たちが集まっている。薬草の効果をみるのに最適だと思って俺が朝から呼びつけたのだ。
「俺たちが作った薬草を試してほしくてね。今回は自信作だ」
「……草のままじゃ不味くて食えたもんじゃねぇよ」
ほう、そんなこと言っていいのかな。
「残念だ。ニエとアンジェロが頑張って種を蒔いてくれたというのに……二人は食べてみる?」
「はい!」
「ワン!」
薬草の葉を千切り二人に食べさせる。
「あら、ほかの薬草より甘みが強いような……これなら美味しいお茶ができますね!」
「ニエちゃん、いくらリッツに言われたからって無理しなくてもいいんだぜ……」
「皆さんも食べてみたらどうですか? とても美味しいですよ」
ニエが笑顔で誘うとみんなは一瞬固まった。
「……ちょ、ちょうど体がしんどいと思ってたんだ、一つもらおう!」
「リッツが作った薬草なら間違いはないからな!」
みんなが恐る恐る薬草を手に取り口に運ぶ。
「ぐぁっ……あ、青臭さが目に染みる……」
「美味すぎて甘いのか苦いのかもわかんねぇ」
「ニエちゃん、さすがだぜ……この通り怪我もすっかり治ったよ……」
よし、効き目はばっちりだな。
「俺は教会にいってくる。すぐ戻るからニエはアンジェロと待っててくれ」
教会に行きシスターに知らせるとすぐに畑へやってきた。
「こんなにたくさん、全部お茶に使うのですか?」
「いくつかは販売しようと思ってるんだ。どこに卸すとかは何も決めてないんだけどね」
「あの……リッツ様にお願いがあるのですが、ここで採れたものを、いくつか教会を通して販売させてもらうことはできないでしょうか?」
「別にいいけどさすがに無料って訳にはいかないよ?」
いくら慈善活動に協力するといっても、これはニエの稼ぎにもなるのだ。はいどうぞとやるわけにはいかない。
「もちろんです。実は教会で週に何度か、貧しい家庭の子供たちにお手伝いをしてもらい賃金を支払っているのですが、社会勉強も兼ねて何かできることはないかと考えていたんです」
「なるほど、それなら売り上げからいくらかもらえればこちらとしても十分だな。薬草を積み終わったら持っていくから詳しくはそっちで決めてくれ。あと、ニエにお茶を作ってもらうからそれも一緒に売ってもらってもいいかな?」
「えぇもちろんです。では教会に戻り話を進めておくのでまた後でお越しください」
シスターが帰ると俺たちは薬草とお茶を準備し教会へ持っていく。
数日後、薬草の質がいいことと予想以上にお茶の人気が出たらしく、教会から売り上げの一部だと銀貨数枚が届けられた。
聞いた話では子供たちもラッピングをしたり、色々とみんなで工夫をして社会勉強にもなっていると好評で、次の販売ではせっかくだからと俺たちは見に行くことにした。
◇
「やくそうはいかがですかー」
「とくせいのブレンド茶もありまーす」
街の隅では子供たちが机を並べ道行く人々に声をかけていた。ラッピングされた薬草が並べられ、後ろではシスターが見守っている。
「リッツ様、もっと近くまでいってはどうですか?」
「ここでいい、俺がいくと邪魔になるかもしれないからな。少し見たら帰ろう」
お婆さんがお茶を買い笑顔で話をしていると今度は若い男性が薬草を買っていった。
よかった、順調みたいだしそろそろ戻るか――。
「おぉ~嬢ちゃん、誰に許可をとってここで商売してんだ?」
ガラの悪そうな連中がやって来ると子供たちは悲鳴をあげてシスターの後ろに隠れる。
「なんだお前ら! 俺たちはちゃんと許可をとってるんだ、何も悪いことはしてないぞ!」
最年長の男の子が前に出てくるとみんなを守ろうと手を広げた。
「こんなところで商売されちゃ困るんだよ。特にてめぇらみたいな連中には――なッ!」
男が子供を蹴ると机にぶつかり薬草やお茶が散らばる。
「大丈夫!? 子供になんてことを……王様にはきちんと届出を出しております! あなた方の邪魔になるようなことは何もしておりません!」
「こんなにいい薬草を売られちゃあ俺たちの商売が上がったりなんだよぉ。それともなんだ、姉ちゃんが変わりに支払ってくれるってのかぁ?」
男がシスターに詰め寄るとほかの仲間も騒ぎ始める。
どこの街でもいるもんだな。どれ、いっちょ後悔させてやるか。
「リッツ様、大丈夫ですよ」
ニエは俺の腕を掴むと、犬を抱き帽子を被った女性を指差す。
あれはアンジェロ――ってことは師匠か!
「騒がしいところすまない、こちらを一つ頂くよ」
師匠はアンジェロを降ろし薬草を拾うと茫然としているシスターにお金を渡す。
「おい姉ちゃん、見てわかんねぇか? 今は俺たちが話してんだ。とっとと――」
「んっ? おい君、怪我をしてるじゃないか。この薬草を使いなさい」
師匠は男を無視し子供に薬草を手渡した。
「こ、このクソ女ッ……痛い目みねぇとわかんねぇようだな!」
男が殴りかかると師匠は片手で拳を受け止めた。
「あら手加減してくれているのかしら。それとも子供にしか本気を出せない臆病者?」
拳を掴まれた男は必死に痛みをこらえながら外そうとしている。しばらくすると師匠は手を離した。
「教会の子供たちが頑張って作った商品を壊すなんて酷いわぁ。みんなもそう思わない?」
師匠が騒ぎで集まった民衆を見ると同意する声が広がっていく。男たちは周りに圧されると何かを喚きながら逃げていった。
おかしい……師匠があの程度で逃がすなんて……。
師匠は売り場直しを手伝うと、薬草とお茶を買い立ち去った。
「――ったく、朝からなんだと思ってきてみりゃ、ただの薬草かよ」
先日の鍛錬でボロボロになった男たちが集まっている。薬草の効果をみるのに最適だと思って俺が朝から呼びつけたのだ。
「俺たちが作った薬草を試してほしくてね。今回は自信作だ」
「……草のままじゃ不味くて食えたもんじゃねぇよ」
ほう、そんなこと言っていいのかな。
「残念だ。ニエとアンジェロが頑張って種を蒔いてくれたというのに……二人は食べてみる?」
「はい!」
「ワン!」
薬草の葉を千切り二人に食べさせる。
「あら、ほかの薬草より甘みが強いような……これなら美味しいお茶ができますね!」
「ニエちゃん、いくらリッツに言われたからって無理しなくてもいいんだぜ……」
「皆さんも食べてみたらどうですか? とても美味しいですよ」
ニエが笑顔で誘うとみんなは一瞬固まった。
「……ちょ、ちょうど体がしんどいと思ってたんだ、一つもらおう!」
「リッツが作った薬草なら間違いはないからな!」
みんなが恐る恐る薬草を手に取り口に運ぶ。
「ぐぁっ……あ、青臭さが目に染みる……」
「美味すぎて甘いのか苦いのかもわかんねぇ」
「ニエちゃん、さすがだぜ……この通り怪我もすっかり治ったよ……」
よし、効き目はばっちりだな。
「俺は教会にいってくる。すぐ戻るからニエはアンジェロと待っててくれ」
教会に行きシスターに知らせるとすぐに畑へやってきた。
「こんなにたくさん、全部お茶に使うのですか?」
「いくつかは販売しようと思ってるんだ。どこに卸すとかは何も決めてないんだけどね」
「あの……リッツ様にお願いがあるのですが、ここで採れたものを、いくつか教会を通して販売させてもらうことはできないでしょうか?」
「別にいいけどさすがに無料って訳にはいかないよ?」
いくら慈善活動に協力するといっても、これはニエの稼ぎにもなるのだ。はいどうぞとやるわけにはいかない。
「もちろんです。実は教会で週に何度か、貧しい家庭の子供たちにお手伝いをしてもらい賃金を支払っているのですが、社会勉強も兼ねて何かできることはないかと考えていたんです」
「なるほど、それなら売り上げからいくらかもらえればこちらとしても十分だな。薬草を積み終わったら持っていくから詳しくはそっちで決めてくれ。あと、ニエにお茶を作ってもらうからそれも一緒に売ってもらってもいいかな?」
「えぇもちろんです。では教会に戻り話を進めておくのでまた後でお越しください」
シスターが帰ると俺たちは薬草とお茶を準備し教会へ持っていく。
数日後、薬草の質がいいことと予想以上にお茶の人気が出たらしく、教会から売り上げの一部だと銀貨数枚が届けられた。
聞いた話では子供たちもラッピングをしたり、色々とみんなで工夫をして社会勉強にもなっていると好評で、次の販売ではせっかくだからと俺たちは見に行くことにした。
◇
「やくそうはいかがですかー」
「とくせいのブレンド茶もありまーす」
街の隅では子供たちが机を並べ道行く人々に声をかけていた。ラッピングされた薬草が並べられ、後ろではシスターが見守っている。
「リッツ様、もっと近くまでいってはどうですか?」
「ここでいい、俺がいくと邪魔になるかもしれないからな。少し見たら帰ろう」
お婆さんがお茶を買い笑顔で話をしていると今度は若い男性が薬草を買っていった。
よかった、順調みたいだしそろそろ戻るか――。
「おぉ~嬢ちゃん、誰に許可をとってここで商売してんだ?」
ガラの悪そうな連中がやって来ると子供たちは悲鳴をあげてシスターの後ろに隠れる。
「なんだお前ら! 俺たちはちゃんと許可をとってるんだ、何も悪いことはしてないぞ!」
最年長の男の子が前に出てくるとみんなを守ろうと手を広げた。
「こんなところで商売されちゃ困るんだよ。特にてめぇらみたいな連中には――なッ!」
男が子供を蹴ると机にぶつかり薬草やお茶が散らばる。
「大丈夫!? 子供になんてことを……王様にはきちんと届出を出しております! あなた方の邪魔になるようなことは何もしておりません!」
「こんなにいい薬草を売られちゃあ俺たちの商売が上がったりなんだよぉ。それともなんだ、姉ちゃんが変わりに支払ってくれるってのかぁ?」
男がシスターに詰め寄るとほかの仲間も騒ぎ始める。
どこの街でもいるもんだな。どれ、いっちょ後悔させてやるか。
「リッツ様、大丈夫ですよ」
ニエは俺の腕を掴むと、犬を抱き帽子を被った女性を指差す。
あれはアンジェロ――ってことは師匠か!
「騒がしいところすまない、こちらを一つ頂くよ」
師匠はアンジェロを降ろし薬草を拾うと茫然としているシスターにお金を渡す。
「おい姉ちゃん、見てわかんねぇか? 今は俺たちが話してんだ。とっとと――」
「んっ? おい君、怪我をしてるじゃないか。この薬草を使いなさい」
師匠は男を無視し子供に薬草を手渡した。
「こ、このクソ女ッ……痛い目みねぇとわかんねぇようだな!」
男が殴りかかると師匠は片手で拳を受け止めた。
「あら手加減してくれているのかしら。それとも子供にしか本気を出せない臆病者?」
拳を掴まれた男は必死に痛みをこらえながら外そうとしている。しばらくすると師匠は手を離した。
「教会の子供たちが頑張って作った商品を壊すなんて酷いわぁ。みんなもそう思わない?」
師匠が騒ぎで集まった民衆を見ると同意する声が広がっていく。男たちは周りに圧されると何かを喚きながら逃げていった。
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