異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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学園生活、1年目 ~後期・Ⅱ ~

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「す、凄いですね」

「ほ、ホントね」


淑女コースの特別授業。アリシアさんの友達も参加しなかったので、平民生徒は私とアリシアさんだけだ。
貴族院の校舎へと入り、授業を行うサロンへと入ると、そこにはいくつものテーブル。お茶会の支度は整っていて、すでにほとんどのテーブルには貴族生徒のお嬢様達が席についていた。

授業を受け持つ教師が私たちに気付く。


「ようこそ、ミス・ヤマグチにミス・マール」

「よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」

「貴方達のテーブルはあちらです。最初は自分達でテーブルを整えてみて頂ける?」


エリーがホスト、と聞いていたけど違うのかな?
でも他のお嬢様達もそれぞれ自分達のテーブルにお茶菓子やポットを並べて用意していた。


「ローザリア公爵令嬢には、自分がお茶会のホストをしますと聞いていたのですが、今回は違うのですか?」

「ええ、確かにローザリア公爵令嬢の言う通りですわ。ただ、最初は貴方達にもお茶会を主催するという事を疑似体験させてみたいと思いまして。
今日の特別授業は一日ですから、午前中は自由に。午後はローザリア公爵令嬢がホストになってお茶会をする形式となっています」


特別授業…って一日やるの?今まで他のコースの授業受けたけど半日だったよね…淑女コースだけ一日なの?

私達が困惑したのが伝わったのか、担当教師は説明してきた。


「貴方達には説明がされていなかったようですね。今日の特別授業は、最後という事で午前と午後の二回行われます。他のコースもそうなっているはずですよ」

「そうだったんですね、わかりました」


なるほど、最後だから一日なのか。確かに騎士コースなんて、どこかへ出かけて訓練するとか言ってたような。
ディーナが張り切って荷物を用意していたし。半日だから近くだと思ってたけど、一日がかりならそこそこ遠くまで行くのかもしれないなぁ。





********************





私はアリシアさんと連れ立って、用意されているテーブルへ。いくつかのテーブルを通り過ぎながら見てみたけど、皆思い思いにテーブルセットをしていた。

お花を飾ったり、お菓子を綺麗に盛り付けたり。
テーブルにはだいたい3~4人ずつ座っていて、それぞれが仲間内のお茶会をしているみたいだ。

私達に用意されたテーブルは小さめ。
まあ私とアリシアさんの2人だしね。これでも充分だ。

教師から聞いた説明によると、奥の大きなテーブルに色々と用意があるから、そこから好きな茶器やお茶の葉っぱ、お菓子を選びなさいとの事。後から準備されたセットを見に回るらしい。

しかしながら、私達が奥のテーブルに行った時には大体の物がない状態。ケーキなんてひとつもないし、チョコレートやマシュマロがあるけど、その程度。

遠くの席にエリーの姿を見るけれど、彼女も周りの生徒に阻まれてこちらへ来ることはできなさそう。心配そうに見てくるので、私は彼女へ向かって笑顔を向けた。


「ど、どうしましょう」

「うーん、テーブルクロスもなかったっけ」

「ほとんど皆さん使われてます、よね」


確かに。まあ私達が来た時には既に皆さんほとんどセッティング終わりかけだったから仕方ないといえば仕方ない。
時間には間に合うように来たんだけど、さすがに貴族院まで来るのに時間かかっちゃったしね。

私は周りを見て、使えそうな物をピックアップし始める。


「アリシアさん、それランチョンマットじゃない?」

「あ、ホントですね。使えますよ!」

「じゃあそれを使いましょ。お茶は…ポットもあるし、カップのセットも私達の分があればいいわ」

「はい、じゃあこの辺りでいいですよね。どのお茶にしましょうか?といってもそこまで種類ももう無いですね」


うーむ。お茶…紅茶は一種類?匂いを嗅ぐと普通のアッサムっぽい。リンゴもあるからこれでアップルティーにすればいいかな。ガラスのポットは大きめだし、リンゴの皮向いてそのまま突っ込めば良くない?

私は茶葉が入っている容器を次々と開けて中身を確かめる。すると、カモミールティーを発見。
これは…アップルカモミールティーができるじゃないか…


「ねぇアリシアさん、カモミールティーって飲める?」

「あ、はい、好きですよ」

「じゃあこれにしよう。で、お菓子…なんだけど、大皿に適当にイチゴとかフルーツを一口大にカットして入れてくれない?あとマシュマロと…そこのスポンジケーキも」

「え?一口大にカットすればいいんですか?」


きょとん、と私に聞き返すアリシアさん。
何をするのかわかってない顔。でしょうね、私もこちらアースランドに来てからコレを出してるところ見たことないし。
でも代わりになりそうな器も発見したし、チョコレートもある。残ってたチョコレートが、トリュフとかじゃなく単なる普通のチョコレートの欠片だったのが幸いした。何か混じってるのだとできないし。

そう、私がやろうとしてるのはチョコレートフォンデュだ。長めの柄のフォークもあるし、器にできそうなボウルもある。温めるのは保温の魔法でなんとかなるし。
こういう時に役に立つよなぁ、生活魔法。多分これやる為に開発された魔法じゃないと思うけど、使えるものは使います。魔法使っちゃダメって言われてないもん。

アリシアさんは言われるまま、残っていたフルーツをその場で一口大にカットしてお皿に盛り付け。
残っていたプレーンのシフォンケーキも一口大に。

私はさっさとチョコレートフォンデュの用意をしてテーブルへ。お茶の用意も抜かりなく。
お湯を別のポットに入れて運べば、アリシアさんもフルーツやケーキの乗ったお皿をテーブルへと運んでくれた所だった。


「あの、コズエさん?これでいいんですか?」

「うん、充分よ、ありがとう」


周りのテーブルのお嬢様はクスクス笑い。
『見てよあんなお茶会の用意だなんて』『ケーキすらも刻むなんて庶民の考える事ね』とヒソヒソ話す。ヒソヒソっていうかお前らみんな聞こえてるかんね!
絶対食べたくなると思うけど、分けてやんないからね!

茶葉とリンゴの皮を入れたガラスポットにお湯を注ぐ。ふんわりとカモミールとリンゴの香りが辺りに広がると、アリシアさんもお嬢様達もこちらを凝視し始めた。


「わぁ・・・いい匂いです」

「まだまだ。お菓子の準備しなくちゃね」

「え?これって終わりじゃ・・・?」

「まさか。だって切っただけじゃない。これはね、こうやって食べるために一口大にしてもらったのよ?」


私は無詠唱で保温魔法ウォームを発動。
お茶を冷まさない為にガラスポットと、チョコレートの入った容器に向けて。すると徐々にチョコレートが溶けていく。甘い香りが広がれば、アリシアさんも笑みが浮かぶ。


「うわぁ~、甘い匂い!」

「でね、これはこうして楽しむものなのよ?」

「え、ええっ!」


プスっとイチゴをフォークに刺し、私はチョコレートフォンデュの中へ。
半分くらいチョコレートをまとったイチゴを見て、アリシアさんは感無量の表情をした。周りのお嬢様は、これを見て驚きの顔。

ふふふふふ、この威力にかなうデザートは君達のテーブルにはあるまい!!!

私は見せびらかすように、パクリと口に入れた。
うむ、不味いわけがない。そしてお茶をひと口。


「わ、私もやっていいですか!」

「もちろん。これは『私達のテーブルのお茶会メニュー』だもの。召し上がれ、アリシアさん」

「いただきまーす!」


マシュマロをチョコレートに沈め、嬉しそうに食べるアリシアさん。この好きなものをチョコレート掛けにできるという楽しみもあるチョコレートフォンデュ、年頃のお嬢様達にはかなりの破壊力だったらしい。
気にしないようにしつつも、チラチラとこちらを見ているのが私の視界に広がる。

フッ、勝ったな。

テーブルを回ってきた教師ですら、楽しんでやってしまっているのだから文句の付けようもないだろう。
…しかし遠くでエリーが凄い顔してるのが気になるといえば気になる。食べたいけど来られない!っていうのがストレスなんだろうなぁ…

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