51 / 158
学園生活、1年目 ~後期・Ⅱ ~
74
しおりを挟むえー、皆さん大変羨ましそうな顔をしてこちらを見ていますが、私は他の人をテーブルに招くような事は致しません。
だって、平民とテーブルを囲みたくないのでしょ?最初ポソポソ言ってるの聞こえたし、一番近くにいるお嬢様達のテーブルから。
アリシアさんはもう楽しそうにチョコレートフォンデュを楽しんでおります。私は少し食べただけで甘さにやられまして普通にフルーツ食べてます、ハイ。
「こんな風に楽しむデザートがあるなんて、知らなかったです」
「綺麗に整えられたデザートもいいけど、こうやって好きなものをチョコレート掛けにして食べるのも楽しみがあっていいでしょ?」
「はい!それにこのお茶も美味しいです」
アリシアさんはにっこにこ。そうよね、女子は甘い物があればだいたい機嫌はいいものなんですよ。
すると、もう我慢ができなくなったのか、エリーがこちらへやって来た。他の人もテーブル移動はしてたけど、私達の所へは来なかったのよね、さすがに。
「もう!ズルいですわコズエ」
「仕方ないじゃない、こうでもしないとちゃんとしたお茶菓子なんてなかったんだもの」
あそこに残っていたのは、剥くのが面倒なフルーツと、プレーンのシフォンケーキだけ。後はチョコレートだけだったのだ。
見映えの良いデザートは、全て他のお嬢様達がテーブルに持って行ってしまっていたのだから仕方ない。
「私もやってもよくって?」
「どーぞ、お姫様」
「あ、好きなのどうぞ!」
ほとんどアリシアさん一人で食べていたけど、エリーもその中に加わる。用意したカットフルーツやケーキも残っていたので、エリーは楽しそうにチョコレートフォンデュを体験している。
しかしホントに君達甘い物好きね…うぷ、胸焼けしそう。
「まあまあまあ♡自分でチョコレートを付けるなんて楽しいこと!」
「ですよねですよね!少し冷ますと固まりますし、熱々のまま食べるのも美味しいですし!」
「このお茶も美味しいですわ、コズエのオリジナルですの?」
「えっ?カモミールティーにリンゴ入れただけよ?普通にどこかのカフェメニューであるんじゃない?」
「私は知りませんわね」
「私も知らないです・・・」
おやぁ?そうなのか?まあでも簡単だし、知られたからと言って大した事でもないでしょ。貴族様がカモミールティーにリンゴの皮剥いて入れる事しないだろうし。
すると、ガラスポットを見てアリシアさんが感心したようにつぶやく。
「そっか、アップルティーってこうやって作れるんですよね」
「え?じゃあ今までどうやってたの」
「えと、家ではリンゴは皮付きで食べてましたから。たまに皮を乾かして紅茶に入れて飲んではいましたけど」
「こっちの方が早くない?とはいえあまり見た目は良くないけど、香りも移るの早いし。エリーがやるのは止めるけど、アリシアさんがお家で楽しむ分にはオススメするわよ」
「そうですね、私も今度これで飲むようにします。乾かすのに時間かかりますしね」
「私も、メイドにお願いして入れてもらおうかしら」
「・・・止められると思うわよ」
さすがに公爵家のお嬢様が生のリンゴの皮で香り付けした紅茶を飲むのはどうだろうか。その前にちゃんと商品として『アップルティー』買って飲むものじゃないだろうか。
「コズエさん、昔からこうやってたんですか?」
「ん?まあそうね。私の友達が出してくれたアップルティーはもっとすごかったけど」
そう、それは私が中学生くらいの頃だ。友達の家に遊びに行き、『アップルティー飲む?』と聞かれてイエスと答えたら、まさかのマグカップにリンゴが皮付きで八分の一カットされたものがドドンと入った物が出てきた。…フォークが刺さったままで。
友達曰く『リンゴ食べれて一石二鳥』と言っていたが、それは友達に出すメニューなのか…?とあまりのワイルドなメニューに度肝を抜かれたものだ。
あれ以来そのアップルティーが他の人から提供された事はない。
「・・・それはさすがに」
「まあっ♡見てみたいわ!やってみようかしら!」
「やめて、なんでも興味本位でやっちゃダメ」
「うーん、でも確かにリンゴも食べられて、紅茶に香りも付けられて一石二鳥と言えばそうかも」
「アリシアさん、自分で楽しむのはいいけど、他の人に出すと引かれるからやめた方がいいわよ?エリーはやらなくていいからね」
「わかりました」
「ダメなんですの?」
アリシアさんならともかく、エリーが紅茶に浸かったリンゴ齧るのとかダメな気がする。
百歩譲って、紅茶の香り付けに生のリンゴ使うのはいいとしても、一石二鳥とか思って齧るお嬢様とかダメ、きっとダメ。
「でも、このチョコレート、フォンデュ?はやってもいいですわよね?」
「まあこれくらいはね。私はチーズも好きだけど」
「えっ?」
「えっ?なんですのそれ!」
「えっ?チョコの代わりにチーズ溶かすのよ。それで、ウインナーとか茹でた野菜とかパンとか付けて食べるの。チーズが蕩けて伸びて美味しい・・・って」
二人の目の色が変わっている。しまった、チョコレートフォンデュ自体知らなかったんだから、チーズフォンデュも知らないか。
そもそもこうやってテーブルで何かを作りながら食べる、って事自体の発想がなかったりする?
午前の特別授業が終わっても、私はアリシアさんとエリーの二人から逃げられず、そのまま食堂でランチをした。
彼女達はチョコレートフォンデュだけでなく、チーズフォンデュにも興味津々で私に話を強請ってきた。
「いい事を聞きましたわぁ」
「うーん、私もやってみたいですけど、さすがに寮生活ではできませんよね。といっても街中にそれが食べられるお店はなさそうですし」
「でしたら、私がお招きしますわ?もちろんコズエも来てくださいますわよね?」
「えっ」
「いいんですか?エリザベスさん!」
「当たり前じゃありませんの!お友達をお食事に招くくらいしますわよ?でしたら春季休暇にしましょうか?」
「はい!是非!」
「え、あの、エリー?」
「コズエはもちろん来てもらいますわ。じゃないとちゃんとしたチーズフォンデュの事がわかりませんもの。材料はきちんと私の家で揃えますから、必要なものはちゃんと教えてくださいまし!」
ずい、と近寄ってくるエリー。
アリシアさんはお願いします!とばかりに私を見ている。
し、仕方ないか、私が教えちゃったメニューだし。
しかしチーズフォンデュ、食べたことはあっても作ったことないんだよね。これは春季休暇までに、セバスさんやマートンの協力を仰いでレシピを作らないといけないかも。
私に約束を取り付けたエリーは、にこにこ笑顔で先に食堂を後にした。午後の授業の支度をしませんと、と言っていたので楽しみではある。
「ホント楽しみです、食事会」
「よ、よかったわ・・・」
「・・・私、心配だったんです。今日の授業」
アリシアさんが、ぽつんとこぼした弱音。
「コズエさんが一緒、って事で頑張ろうと思って来たんですけど、どんな事があるだろうって。
私、エリザベスさん以外の貴族生徒の女子にはいい記憶がないので」
申し訳なさそうに笑うアリシアさん。それはそうだろう、今まで何人の貴族女子から暴言を吐かれたのか。
私はあの一度しか見たことはないけれど、多分これまで何度もカーク王子との仲を注意される事があったはずだ。
もしかしたら嫌がらせの類もあったのかもしれない。
だからこそ、今日の授業は怖かったはずだ。いくら私がいても、エリーがいても、一人になる瞬間がないとは言えない。その時に何を言われるか、されるか分からない。
それでも来てくれたのだ、アリシアさんは。
「大丈夫」
「えっ?」
「もし何か嫌がらせされたら、私が殴るわね」
「えっ?殴るんですか?」
アリシアさんもギョっとした。
いや、殴るは言葉の綾だけどね。
「言い返すくらいはするわよ、私。売られた喧嘩は三倍にして返すのが私のモットーだから」
「・・・っ、ふふ、はい。頼りにします」
「でもアリシアさんも嫌なら嫌ってちゃんと言ってね?」
「ど、努力します!」
この時の会話が現実になるだなんて、この時の私は思っていなかった。いや、嘘だ。『多分』何か起こるなら午後かな、と予感はあった。
いかにエリーがホストとはいえ、その目が隅々まで行き届くのは難しいだろう。だってさっき生徒20人はいたもの。
半分なら大丈夫だろうけどね。出来るだけアリシアさんから目を離さないようにしないとなぁ。
486
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】
※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。
※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。
imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。
今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。
あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。
「—っ⁉︎」
私の体は、眩い光に包まれた。
次に目覚めた時、そこは、
「どこ…、ここ……。」
何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる