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第二章:辺境での「戦い」は、二度寝から始まる
~最高級の寝具は、元王太子よりも重いのです~
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北の最果て。王都から馬車で五日もかかるその場所は、一年中深い霧に包まれ、太陽の光さえも遠慮がちに差し込む、静寂の支配する地だった。
(((……楽園。こここそが、私の約束されたエデンだわ……)))
「霧の別荘」に到着した私は、荷解きもそこそこに、真っ先に寝室へと向かった。 そこには、王都から無理やり持ち込ませた、特注の最高級羽毛布団が鎮座している。希少な魔鳥のダウンを惜しみなく使い、表面はシルクのような滑らかさ。一度潜り込めば、重力から解放されたような感覚に陥る「人をダメにするベッド」だ。
「お嬢様! またパジャマのままバルコニーでボーッとして! 荷解きを手伝ってください!」
侍女アニーの声が響く。彼女は公爵家から私に付いてきてくれた唯一の侍女だ。苦労性で、私の「咸魚(しおづけうお)」な本性を知り尽くしている貴重な人材でもある。
「アニー……聞こえないわ。私は今、この部屋に満ちている『マイナスイオン』と対話している最中なのよ……」
「ただの朝寝坊を格好良く言わないでください! ほら、起きてください!」
私はアニーの追撃を華麗にスルーし、バルコニーの寝椅子に寝転んだ。 霧の向こうには、痩せた土地で必死に農作業をする領民たちの姿が見える。本来なら領主代行として彼らを指導すべきなのだろう。でも、私には目的がある。
((……日差しが、ちょっと眩しいわね。これじゃあ深い眠り(二度寝)の妨げになるわ))
私は指先を少しだけ動かし、無詠唱で魔力を解放した。 公爵令嬢として叩き込まれた膨大な魔力。それを、私は「理想的な昼寝環境の構築」のためだけに使う。
「……『カーム・クラウド(静かなる雲)』」
本来なら広範囲の敵を視界不良にするための上級魔法だが、私はそれを「日除け」として展開した。 別荘の上空だけに、ふんわりとした分厚い雲が重なり、直射日光を遮って完璧な木漏れ日を作り出す。さらに、適度な湿度が肌を潤し、霧雨のような心地よい涼風が吹き抜ける。
「ああ……完璧。おやすみなさい……」
私はそのまま、意識を深い闇へと沈めた。 ……しかし、私が夢の中で高級スイーツを食べていたその時、外ではとんでもない事態が起きていた。
「お、おい! 見ろよ! ユーラリア様がバルコニーに立たれた途端、あんなに分厚い雨雲が!」 「数ヶ月も雨が降らなくて枯れかけていた麦が……ユーラリア様の慈悲の雨で生き返っていくぞ!」
領民たちは、私が「寝苦しくて作った日陰」から漏れ出した魔力が、霧を雨に変えたのを見て、涙を流して地面に跪いていた。
「おお……! 追放された悲劇の令嬢は、我らを見捨てなかった! 彼女こそ、真の豊穣の聖女だ!」
そんな称賛の嵐が起きているとは露知らず、私は寝椅子の向こう側で「ムニャムニャ……あと五分……」と、幸せな寝息を立てていたのである。
(((……楽園。こここそが、私の約束されたエデンだわ……)))
「霧の別荘」に到着した私は、荷解きもそこそこに、真っ先に寝室へと向かった。 そこには、王都から無理やり持ち込ませた、特注の最高級羽毛布団が鎮座している。希少な魔鳥のダウンを惜しみなく使い、表面はシルクのような滑らかさ。一度潜り込めば、重力から解放されたような感覚に陥る「人をダメにするベッド」だ。
「お嬢様! またパジャマのままバルコニーでボーッとして! 荷解きを手伝ってください!」
侍女アニーの声が響く。彼女は公爵家から私に付いてきてくれた唯一の侍女だ。苦労性で、私の「咸魚(しおづけうお)」な本性を知り尽くしている貴重な人材でもある。
「アニー……聞こえないわ。私は今、この部屋に満ちている『マイナスイオン』と対話している最中なのよ……」
「ただの朝寝坊を格好良く言わないでください! ほら、起きてください!」
私はアニーの追撃を華麗にスルーし、バルコニーの寝椅子に寝転んだ。 霧の向こうには、痩せた土地で必死に農作業をする領民たちの姿が見える。本来なら領主代行として彼らを指導すべきなのだろう。でも、私には目的がある。
((……日差しが、ちょっと眩しいわね。これじゃあ深い眠り(二度寝)の妨げになるわ))
私は指先を少しだけ動かし、無詠唱で魔力を解放した。 公爵令嬢として叩き込まれた膨大な魔力。それを、私は「理想的な昼寝環境の構築」のためだけに使う。
「……『カーム・クラウド(静かなる雲)』」
本来なら広範囲の敵を視界不良にするための上級魔法だが、私はそれを「日除け」として展開した。 別荘の上空だけに、ふんわりとした分厚い雲が重なり、直射日光を遮って完璧な木漏れ日を作り出す。さらに、適度な湿度が肌を潤し、霧雨のような心地よい涼風が吹き抜ける。
「ああ……完璧。おやすみなさい……」
私はそのまま、意識を深い闇へと沈めた。 ……しかし、私が夢の中で高級スイーツを食べていたその時、外ではとんでもない事態が起きていた。
「お、おい! 見ろよ! ユーラリア様がバルコニーに立たれた途端、あんなに分厚い雨雲が!」 「数ヶ月も雨が降らなくて枯れかけていた麦が……ユーラリア様の慈悲の雨で生き返っていくぞ!」
領民たちは、私が「寝苦しくて作った日陰」から漏れ出した魔力が、霧を雨に変えたのを見て、涙を流して地面に跪いていた。
「おお……! 追放された悲劇の令嬢は、我らを見捨てなかった! 彼女こそ、真の豊穣の聖女だ!」
そんな称賛の嵐が起きているとは露知らず、私は寝椅子の向こう側で「ムニャムニャ……あと五分……」と、幸せな寝息を立てていたのである。
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