婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

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作戦です

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「随分ゆっくりとした行程となっていますが、ブラック家の皆さんや陛下が待っているのではないですか?」

「アーネスト様は早く王都へ行きたいですか?」

 と尋ねてみる。忙しいのなら寂しい? けれどここでお別れ。

「いや、こんなにのんびりと王都に行く事もありませんから新鮮ですよ」

 にこりと笑われた。ちゃんと見守りますよ。ですって。

 グレマン領に向かっている時よりものんびりとした行程になっている。テイラー伯爵領に着くとマークお兄様がすぐに迎えに来て、屋敷に宿泊できるように手配されていた。


『クレイグから連絡が来た! それにフェリクス殿下からもな。身分剥奪は撤回されたんだからうちの屋敷に来てもらう。アーネスト殿もどうぞ』

 マークお兄様は相変わらず面倒見の良い方だわ。テイラー夫妻も戻って来ていたので、伯爵家では三日間お世話になった。久しぶりに夫人とおしゃべりをしたり、今起きている事の情報収集をした。マークお兄様も王都へ行くと言っていたけれど、今は忙しいからもう少し落ち着いたらご家族で王都へ来るそうなので、また会えますね。
 その時はこの騒動? も落ち着いている事でしょう。マークお兄様はすごく残念がっていましたが、なぜそんなに楽しそうなのでしょうか。


 こんな感じでのんびりと過ごしてアーネスト様にゆっくりとしている。などと言われました。でもこれは“作戦”です。

 陛下達はわたくしに早く戻ってきて話を聞きたいと思っているはず。フランツ殿下は謹慎中? それともレイラとの結婚を許され勉強中? レイラを我が家に置いておくことは流石にできない。かといって、男爵領に戻る事もできないでしょうし、こんな騒ぎを起こして婚約予定だったクレマン子息との話も無くなっている。

 クレマン子息は良い方だとは思うけれど、お騒がせ令嬢となったレイラと一緒になれないでしょう。そこに身分剥奪となったわたくしが身を寄せるとなるとどうなるか……

 どうなるのでしょう? うーん。分からないわ。

 フェリクス殿下は気を利かせてクレマンをグレマンと言ってくださったけど、100キロ以上ならどこでも良かったのよね。

 追放後にこうなる事をわかっていたからパフォーマンスのように追放や、身分剥奪を受け入れた。やられたらその分お返しをしたくなってしまうなんて、わたくしは性格に難があると思う。ふふっ



「楽しそうですね?」

 あらいやだ。顔に出ていたのかしら。

「楽しいですわ。こうやって旅行に来る事が出来るのですから。皆さんに感謝しかありませんもの。王都に戻ったらミリーとショーンには休暇をあげようですとか、お父様に頼んでボーナスも弾んでもらおうなども考えています」

「良い関係なのですね」

「ミリーやショーンはわたくしにとって姉と兄の様な存在で感謝しています。王妃様や陛下、王子殿下にお義姉様方達にも感謝をしていますわ。こんなわたくしの味方でいてくださるのですから。王都に戻ったらわたくしはアーネスト様の知っているアリスではなくて、ブラック伯爵家のフランツ殿下の元婚約者としての立ち振る舞いを求められます。グレマン領にお邪魔していた時のアリスはそこにはいません」

 幼い頃から王族に嫁ぐものとして厳しく教育された。魚釣りを躊躇していたアリスはそこにはいませんし、魚の命をいただく事に驚いていたけれど、別の命が消えていく姿を目の当たりにしているアリスフィア・ブラックなのです。だから束の間の道中は楽しみたいのです。


「アリス嬢は何枚の仮面を持っているのでしょうか? 今はアリス嬢でもありアリスフィア嬢でもあるように感じます。どちらにしても素敵な令嬢です。王都に滞在中は頼りにしていますよ」


 グレマン領ではみっともないところを晒していたからアーネスト様の前では調子が狂ってしまう……



 変だわ。第五王子の婚約者の仮面はまだ持っている。

 仮面は……一度脱いでしまうと装着は難しいのね。アーネスト様が上手に例えるものだからつい笑ってしまった。


「ふふっ。王都に戻って装着する仮面は最後の装着となりそうですね」


 終わったら綺麗さっぱり捨ててしまえばいい……

 




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