婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

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ウォーカー子爵領へ

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 のんびりした旅もそろそろ終盤に差し掛かって来た。来た時にお世話になったウォーカー子爵領に足を踏み入れた。


「ウォーカー子爵領まで来たとなるとそろそろ王都まで近くなりましたね」

 アーネスト様に言われ答える。

「はい、そうですね。子爵様にはお世話になりましたので、ご挨拶をしたいと思い連絡をしてあるのです。こちらに滞在中は子爵家でお世話になろうと思います」

「子爵とは何度かお会いした事があります。朗らかで頭の切れる方という印象です」

 ウォーカー子爵様はまた来る時があったら是非連絡を! と言ってくださったのであの言葉に嘘はないと思っている。

「子爵邸が見えてきました」

 長閑な山間にある領地。領民も穏やかでのんびりとしている。


「ブラック伯爵令嬢、お元気そうでなによりです。アーネスト殿! お久しぶりです。まさかお二人がお揃いだとは思いませんでした。お茶を用意してありますのでどうぞお入りください」

 ウォーカー子爵様はとても歓迎してくれました。そして私をブラック伯爵令嬢と呼んだ。以前はアリス嬢と呼ばれていたのだから事情は既にご存知なのでしょう。


「ウォーカー子爵様、お言葉に甘えて立ち寄らせて頂きました。その節はお世話になりありがとうございました」

 まずはお礼を言う。ウォーカー子爵様のお隣には子息がいました。

「いやいや、とんでもございません。ようこそお寄りくださいました。お好きなだけ滞在をしてくださって構いません。ご存知の通り何もない田舎町です。息子が長期休暇で戻ってきた際に令嬢の話を聞きました」

 子息と目が合い笑顔で挨拶をする。

「ウォーカー子息とは学園が同じであのパーティーにも参加されていたのですからご存知だと思いますし、わたくしが子爵様にお世話になっている時は学園が休暇に入る前でしたから驚いた事でしょう。わたくしは西のクレマンへ行ったと思っていらしたでしょう?」

 西のクレマン。東のグレマン。方向は真逆です。

「はい。今思えばあの時、第三王子殿下はクレマンを濁していた様にも思えます。父から話を聞いた時は驚きました。それとこの件について箝口令が出されていましたのに、いくら家族とはいえ話をしてしまいました。申し訳ございません」

 席を立ち頭を下げる子息。

「まぁ! 頭をあげてくださいまし。長期休暇がありますから恐らくこの件については知れ渡っている頃です。そして陛下の名において例の件も無かったことに……ですからどうかお気になさらずに」

 箝口令が敷かれたとはいえ、噂にはなるもので事実やそうではないものまであり曖昧な感じだったと思うの。だけど陛下が命令を覆したことにより、これから何が起こるかというのは気になるでしょう。

「私が息子から聞き出してしまいましたので、」
「気にしておりませんわ。パーティーが台無しになってしまったのは残念でしたし、わたくしが至らぬばかりにこの様な騒ぎになりましたもの。心配をおかけしたり迷惑をかけてしまったと思い、恥ずかしくて王都へ戻る足取りも重いのですわ」

「おぉ、そうでしたか。私どもは令嬢の味方というと烏滸がましいですが、どうぞごゆるりとなさってください」

「子爵様には何から何までお世話になり申し訳ございません。それと、箝口令ですが誰も咎められることはありませんからお気になさらずに。“王都にいる間は話してはならない”と言われませんでしたか?」



「はい。でもどうして……」

「噂が広がっても良かったのですわ。ただ殿下達はわたくしが王都から離れるまでの時間稼ぎをしてくださったのですわ。皆様お優しい方ですから」

 話が終わり、案内された客室へと向かう。



「アリス嬢は凄いですね。子爵相手にも堂々と嘘をつく。恐ろしい方です」


 アーネスト様に言われ心外だわ。という顔をした。王都に行く足取りが重いのは本当ですのに。


「本心も含まれていますわ。どの面下げて戻ってきたのか! よく顔を出せたな。などと罵られても仕方ありませんもの……妃教育は税金で賄われていますし解消したことにより税金の無駄使いなります。そして解消となると王家側に非があったと認めるという事。慰謝料が発生し大きなお金が動いてしまいます」

「では第五王子とそのお相手にしっかり分からせないといけませんね。王子が考えずに行動をした件について貴族達は不満に思っているでしょう。王子妃の教育とは簡単な事ではありません。努力をされて今のアリス嬢がいるのですから。自由な時間もなく何処にいても人に見られる生活は辛い時もあったでしょう……心を鬼にする事、心を閉ざす事、やりたい事もたくさんあったでしょうに」


 やりたい事か……王宮と家と学園と王都の街くらいしか知らないし、何かを考えてやりたいと思った事はない。


「どうでしょう。ただあの頃は必死でしたもの」




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