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自由は不自由2
しおりを挟む~フランツ視点~
「に、苦いな。あ、いや、その少しだけ。飲めないことはない」……はず
レイラが淹れた茶は茶葉が泣いている。香りも飛んでいる。これは本当にいつも飲んでいる茶と同じ茶葉を使っているのか? と思うほど独特的な味がした。
「え、そう?」
レイラがこくりと一口。
「うーん。おかしいなぁ。ちゃんと時間を守ってるのになぁ」
こくこく。と口にするが苦くないのか? 匂いも飛んでいるし飲めたものでは……
「少し苦いけれど、そういうものだと思えば飲めないこともないわよね」
いや、そういう問題ではないぞ。メイドがこの茶を出してきたらクビにするレベル。
王族だからではなく普通の貴族でも怒り出すレベル。
例えば茶会でまずい茶が出てきたら歓迎されていないと思われるんだ。そんなレベル。
分からないのか……
「練習すれば美味しくなるでしょ!」
……前向きだなぁ。初めから上手く淹れられるとは思っていなかったけれど、今まで練習しなかったのだな。伯爵家では学ぶことが多くて。と言っていた時のレイラと同じ人物なのか?
「それよりお腹減ったね。そろそろ昼食が運ばれる時間だよね」
「あぁ、そうだな。午後からはマナーの教師が来るんだったよな」
他国のマナーを覚えてもらわなきゃ外交は出来ない。挨拶をする順番や禁句などもある。国によって違うのだから覚えるのは必須で、挨拶は同じ(共通)に見えても違う。
「そうなんだけどあの教師、ガミガミ五月蝿くて……こんなんじゃ表に出せないって言われるし、十歳の子供の方が上手いなんて言われて自信無くしちゃった」
やる気も無くしちゃって……小声だがしっかり聞こえた。
「レイラはまだ習い始めだから仕方がない。あの教師は義姉上達も教えていたベテランだから間違いない。今日叱られても次は褒められる様に頑張れば良い」
アリスもこの様に愚痴の一つでも吐くのなら慰めてやれたのに可愛げの無い。
「それからね────」
レイラの愚痴は続く。
冷たくなった昼食を食べようやくレイラから解放された。レイラは愚痴を言い出すと止まらないタイプなんだな……
一人でまた執務室に籠る。しまった。書類が溜まり出してどれが急ぎかわからなくなってきた。溜まった書類を急ぎと、そうではないものに分ける。分別をするのにも時間が掛かった。
今までは執務室に必ず人が居て一人になることはなかった。一人になりたいと思っていてもそれは叶わなかったんだが……
黙々と作業を続ける。
「ん、インクを切らしたようだ」
戸棚を見るが、どこに何があるのかわからない。全ての棚を開けようやくインクのストックが見つかった。
書類の分別、備品のストックなど細かい作業があって執務が捗るのだ。と今更思う。
今取り組んでいる書類は他国の言葉で書かれている。分からない単語を辞書で調べて理解することは出来るのだが時間が掛かるし他国の言葉だから訳を間違えると大変なことになる。
この国の言葉はアリスが得意だったよな……アリスがいればこんな書類なんてすぐに終わるのに。ってクソ! 私は自由を手に入れたんだ。
自分で選んだレイラと共に過ごすために。今は少々溝が出来てしまったけれど、必ず理解してくれる。レイラを可愛がってくれるはずだ。
母は努力をする人間に必ずチャンスを与えるような公平な人だ。
夕飯はマナーの教師も一緒に摂るようだ。本番を意識してレイラに学ばせる。
「姿勢が悪いです。正してください。カトラリーの持ちかたが美しくありません。そんなに頬張って口に入れるだなんて……あぁ。同じ空間にいるだけで気分が悪くなりますわ」
普通に食事をする分には問題がないのだが、父や母達に会わせられるレベルには達していない。
「酷いわ。私のどこに問題が……」
「問題が分かっていないこと自体が問題なのです。教えを乞う立場のレイラ様が素直に間違いを認めないという事であればわたくしは不要という事です。マナーなど気にせず自由に楽しくお召し上がりください。本日はこれにて失礼します」
また問題が……
それからマナーの教師はレイラを教える事を拒否、いや。辞退してきたのだ。
自由に教師を選んでも良い。何を学ばせるかを自由に決めても良い。
決められた額内であれば自由に衣装を選んでも良い。休憩も自由に取っても良い。
この離宮の中でなら自由。自由なのに不自由が多い。最近使用人とレイラ以外の顔を見ていない。教師は誰に来てもらえば良いか……
父上や母上、兄上達にも会っていないな……同じ王宮内にいてこんなに会わないことがあるなんて。
寂しい。
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