婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

文字の大きさ
43 / 93

おかしい

しおりを挟む

 ~フランツ視点~

「最近の食事なんだけど少なくなってない?」

 少なくしてくれ。と言ったのは私だ。ずっと離宮に篭りっきりで執務室にしかいないし体を動かす事もないのだから腹が減らない。

「そうか? 腹八分というから丁度いいと思う」

 レイラは相変わらずよく食べる。愚痴ばかり言っているから体力を使うのかもしれない。

「ふーん。まぁ、良いわ、それならお菓子を食べるから。お茶を淹れるわ」


 ……レイラの淹れるお茶ははっきり言って美味しくない。濃くて苦くて胃が痛くなる。胃がもたれる。とは言えない。

 レイラと共に過ごすことによりレイラのよくないところを見ることとなる。


「レイラ、自習は捗っているのか?」


 結局教師が見つからないままだが時間を有効に使う様にと言ってある。執務を手伝って欲しいのだが、婚約者・側近以外には見せられない重要な書類も多い。残念ながらレイラはまだ私の婚約者ではない。


「う、うん。もちろんよ」

 貴族名鑑なら一日もあれば頭に入るだろう。今後の社交を考えると必要不可欠。

 貴族名鑑は一年に一度更新されるから記憶のアップデートも欠かせない。古いデーターも必要だがアップデートを怠ると貴族名鑑を購入する余裕がないのかと笑われてしまう。貴族名鑑は高価で個人情報だし丁寧に扱わなくてはいけない、故に適当な知識では争いの元となる。当主の交代には特に気を遣わなければいけない。

「そうか、それなら次のステップだな。レイラは本を読むのが好きだからコレくらいなら一週間ほどあれば頭に入るだろう」


 渡した本は王国の歴史について。授業でもやっているし歴史については問題ないだろう。興味があればすぐに覚えられるし年表と歴代の王、過去の戦争など王族に嫁ぐのなら知らないと恥な事ばかり。

「ありがとう、わざわざ用意してくれたのね。読んでおくわ」

 こういう素直なところはレイラの良いところだと言える。成績も中々のものだった。


 レイラが会議など重要な場に出ることはないだろうが、王都のハズレにシンボル的な橋がある。現在その橋の補修工事の話が出ている。
 あれは今から三代前の国王時代に作られた橋で歴史的価値があるし、大きな工事だったと当時の資料で見た。先祖の功績を感じられる素晴らしい資料だったのでレイラにも目を通して貰いたい。そして補修するにあたりレイラなりの意見も聞かせて欲しい。

 レイラが政治について分かる様にならなくてはいけない。そうではないと単なるお荷物になってしまう。
 
その点アリスは頼んでもないのに、資料をどっさり持ち込みメリット・デメリットを私に伝えてくる。なるほどな……と思う事もはあったが調べるだけなら時間さえあれば誰でも出来るからな!


「フランツは何をしているの?」

 手に辞書を持ち調べ物をしていた。

「これか? ちょっとわからない単語があって調べていたんだ」

「そうなんだ。フランツは四カ国語が話せるのにまだ十分じゃないんだね」

 カチンと来てしまった。十分じゃなくて悪かったな!

「難しそうだけど、その書類を出す人もおかしいよね。共通言語があるのにわざわざ自国の言葉で書いて寄越してくるんだもの」

 そうか、そうだな。

「本当だな……じゃ、これはあとからにして別の書類から手をつけるか」

 書類を急ぎではない場所に置いた。



 ~数日後~



「殿下! 本日締切の書類がまだ提出されておりません。使者がお待ちで私どもの確認も終えておりません、どうなっているのですか」

 執務を取り仕切るターナーという男が来た。

「書類? どれの事だ?!」


 慌てて書類を確認するがどれの事だかさっぱりわからない。書類は急ぎとそうではないものに……分けたよな?

「はぁっ。お願いした書類はあちらの国の言葉で書かれているものなので時間が掛かるとお伝えしたはずです」


 ! っアレか! ヤバい。確か、確か……どこにやった! 急いで書類を探す。


「はぁっ。殿下……あなた様の良いところは締切を守るところでしたが、それすらも出来ないとは、嘆かわしいです」

「いや、やるぞ、確か、この辺に辞書で単語を調べていたんだ」

「単語よりも締切を調べたほうが良かったですね。もう結構です。殿下にお渡ししたものは控なので問題ありません。こちらで処理する事にします。それでは急いでいるので失礼」


 その後、の仕事を回されることは無くなった。どうでもいい誰でも良い仕事が少しだけ与えられる。給料は出来高制だったのか? と思えるくらい減額された。


 それからレイラのドレス代の請求書が届く。

 は? なんだこの金額? ドレス十着? 靴に宝飾品……


 こんな買い物をしていたら一年以内に破産する!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~

北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!** 「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」  侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。 「あなたの侍女になります」 「本気か?」    匿ってもらうだけの女になりたくない。  レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。  一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。  レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。 ※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません) ※設定はゆるふわ。 ※3万文字で終わります ※全話投稿済です

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む

綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」 婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。 婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。 ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/10/01  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過 2022/07/29  FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過 2022/02/15  小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位 2022/02/12  完結 2021/11/30  小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位 2021/11/29  アルファポリス HOT2位 2021/12/03  カクヨム 恋愛(週間)6位

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

処理中です...