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おかしい
しおりを挟む~フランツ視点~
「最近の食事なんだけど少なくなってない?」
少なくしてくれ。と言ったのは私だ。ずっと離宮に篭りっきりで執務室にしかいないし体を動かす事もないのだから腹が減らない。
「そうか? 腹八分というから丁度いいと思う」
レイラは相変わらずよく食べる。愚痴ばかり言っているから体力を使うのかもしれない。
「ふーん。まぁ、良いわ、それならお菓子を食べるから。お茶を淹れるわ」
……レイラの淹れるお茶ははっきり言って美味しくない。濃くて苦くて胃が痛くなる。胃がもたれる。とは言えない。
レイラと共に過ごすことによりレイラのよくないところを見ることとなる。
「レイラ、自習は捗っているのか?」
結局教師が見つからないままだが時間を有効に使う様にと言ってある。執務を手伝って欲しいのだが、婚約者・側近以外には見せられない重要な書類も多い。残念ながらレイラはまだ私の婚約者ではない。
「う、うん。もちろんよ」
貴族名鑑なら一日もあれば頭に入るだろう。今後の社交を考えると必要不可欠。
貴族名鑑は一年に一度更新されるから記憶のアップデートも欠かせない。古いデーターも必要だがアップデートを怠ると貴族名鑑を購入する余裕がないのかと笑われてしまう。貴族名鑑は高価で個人情報だし丁寧に扱わなくてはいけない、故に適当な知識では争いの元となる。当主の交代には特に気を遣わなければいけない。
「そうか、それなら次のステップだな。レイラは本を読むのが好きだからコレくらいなら一週間ほどあれば頭に入るだろう」
渡した本は王国の歴史について。授業でもやっているし歴史については問題ないだろう。興味があればすぐに覚えられるし年表と歴代の王、過去の戦争など王族に嫁ぐのなら知らないと恥な事ばかり。
「ありがとう、わざわざ用意してくれたのね。読んでおくわ」
こういう素直なところはレイラの良いところだと言える。成績も中々のものだった。
レイラが会議など重要な場に出ることはないだろうが、王都のハズレにシンボル的な橋がある。現在その橋の補修工事の話が出ている。
あれは今から三代前の国王時代に作られた橋で歴史的価値があるし、大きな工事だったと当時の資料で見た。先祖の功績を感じられる素晴らしい資料だったのでレイラにも目を通して貰いたい。そして補修するにあたりレイラなりの意見も聞かせて欲しい。
レイラが政治について分かる様にならなくてはいけない。そうではないと単なるお荷物になってしまう。
その点アリスは頼んでもないのに、資料をどっさり持ち込みメリット・デメリットを私に伝えてくる。なるほどな……と思う事も少しはあったが調べるだけなら時間さえあれば誰でも出来るからな!
「フランツは何をしているの?」
手に辞書を持ち調べ物をしていた。
「これか? ちょっとわからない単語があって調べていたんだ」
「そうなんだ。フランツは四カ国語が話せるのにまだ十分じゃないんだね」
カチンと来てしまった。十分じゃなくて悪かったな!
「難しそうだけど、その書類を出す人もおかしいよね。共通言語があるのにわざわざ自国の言葉で書いて寄越してくるんだもの」
そうか、そうだな。
「本当だな……じゃ、これはあとからにして別の書類から手をつけるか」
書類を急ぎではない場所に置いた。
~数日後~
「殿下! 本日締切の書類がまだ提出されておりません。使者がお待ちで私どもの確認も終えておりません、どうなっているのですか」
執務を取り仕切るターナーという男が来た。
「書類? どれの事だ?!」
慌てて書類を確認するがどれの事だかさっぱりわからない。書類は急ぎとそうではないものに……分けたよな?
「はぁっ。お願いした書類はあちらの国の言葉で書かれているものなので時間が掛かるとお伝えしたはずです」
! っアレか! ヤバい。確か、確か……どこにやった! 急いで書類を探す。
「はぁっ。殿下……あなた様の良いところは締切を守るところでしたが、それすらも出来ないとは、嘆かわしいです」
「いや、やるぞ、確か、この辺に辞書で単語を調べていたんだ」
「単語よりも締切を調べたほうが良かったですね。もう結構です。殿下にお渡ししたものは控なので問題ありません。こちらで処理する事にします。それでは急いでいるので失礼」
その後、急ぎの仕事を回されることは無くなった。どうでもいい誰でも良い仕事が少しだけ与えられる。給料は出来高制だったのか? と思えるくらい減額された。
それからレイラのドレス代の請求書が届く。
は? なんだこの金額? ドレス十着? 靴に宝飾品……
こんな買い物をしていたら一年以内に破産する!
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