あなたの愛はもう要りません。

たろ

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20話 ダイガット。

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 フランソアが不安がって泣いていた。

「また帰ったらお義母様に何を言われるかわからないわ」

 守ると約束した。だから屋敷に連れ帰った。でもまさか何日も帰ろうとしないとは思わなかった。

 ビアンカが怪我をしている。会いに行きたいのに母に絶対行くなと言われてしまった。

『妻がいるのに他の女性を連れ帰って泊まらせているのにどんな顔をして会いに行くの?』

『違います。フランソアは幼馴染で変な関係ではありません。フランソアは学校で転んで怪我をしたんです。もし怪我のことを継母に責められれば彼女の心は傷ついてしまいます』

『傷つく?そう……ではビアンカは傷つかないのかしら?』

『ビアンカは俺のことなどなんとも思っていません』

 ビアンカの冷たい目を思い出すと胸が痛んだ。それにフランソアがまるでビアンカを嵌めたように言われたことを思い出すと無性に腹が立った。

 フランソアは親に虐げられいつも弱い立場なのに。そんなことするわけがない。

 だけどビアンカの怪我のことを思い出すと心配になる。せめて顔だけでも見に行きたいのに、母から止められた。

「ダイガット、庭を散歩したいわ」

「ああ」

 フランソアにせがまれて仕方なく庭に出た。

「痛っ」
 まだ足が痛むからと手を繋いで欲しいと頼まれた。

「ああ」

 すぐ近くにビアンカの部屋がある。気になってフランソアが何か話してもうわの空で、適当に手を繋ぎ歩いた。

 使用人がビアンカが体調を崩していると教えてくれた。

「どんな具合なんだ?」

「学校をお休みされています」

「俺が会いに行くのは無理そうか?」

「………ダイガット様を部屋に通さないようにと命令されております」

「母上か?」

「………はい」

 くそっ。フランソアが帰ってくれればなんとか言い訳して会いに行けるのに。

「フランソア、そろそろ足も良くなったようだし、屋敷に帰った方がいいと思う」

「わたくしを追い返すの?」

「君の家はここではないだろう?ずっと置いておくわけにはいかない」

「………守ってくれると言ったじゃない!」

 うるうるとした瞳で見つめられると強く出られない。

「……あと数日だけだ」

「うん、嬉しい!」

 結局フランソアは1週間も我が家で過ごした。

 その間ビアンカに会うことはなかった。

 何度か様子を使用人に聞いたが「申し訳ありませんお伝えできないのです」とみんなビアンカのことになると逃げてしまう。






 遠くからビアンカと友人のマリアナ嬢が歩いているのが見えた。

 するとそこにバァズがやってきて三人で笑い合っているのが見えた。

 あんなに心配したのに、笑っているのを見ると苛立ちが募る。

「どうしたの?」
 フランソアが下から俺を見上げた。

「いや、なんでもない。早く教室へ行こう」

「うん、わからないところがあるの。教えてくれる?」

「ああ、わかった」

 フランソアは少し勉強が苦手だ。いつも頼ってくるのも当たり前になっていた。

 俺はフランソアと恋人同士だと噂されているなんて全く知らなかった。

 たまに変な目で見てくる生徒がいるが、フランソアは昔から綺麗でモテる。
 幼馴染の俺といつもいるので仲が良すぎるから周囲も気になるんだろうと思っていた。

 俺には妻がいるし、俺が好きなのはビアンカだ。

 まぁ素直に彼女に接することができないが、これからなんとか挽回しようと思っている。

 フランソアに相談したら、少し距離を置いて少しずつ打ち解けていくべきじゃないかしら?と言われた。

 あんまりガツガツ行くとビアンカも引いてしまうかもしれないと。

 1年間そっとしておいた方がいいと言われ距離ができているのに、まだ距離を置くべきなのか?歩み寄るべきではないのか?

 俺の痣は今9個。

 今朝、メイド長から渡されたビアンカからの手紙。

『すぐにとは言いません。ですがやはり離縁するべきではないかと思っております』

 その言葉を読んで、これ以上読み進めることができず手紙をぐしゃぐしゃにして捨てた。







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