あなたの愛はもう要りません。

たろ

文字の大きさ
21 / 125

21話

しおりを挟む
 唯一、学校が私の安心できる場所だった。

 マリアナやリザ、アンジェラたちと過ごす時間が私にとって唯一の癒しの時間。家族がいない私の安心できる場所。

 なのに最近耳にする自分の悪い噂。

『あのこ、クーパー侯爵家の使用人らしいわよ』
『ミラー伯爵に捨てられたと聞いたわ』
『使用人の分際でダイガット様に言い寄っているらしいわ』


 ううん、違います!言い寄ってなんかない!でも……親に捨てられたと言うのは一概に間違いではないかな。

 ダイガットが王太子殿下と親しく、学園でも美少女と言われているフランソア様と仲が良いこともあり、何かと注目されている。
 そしてどうしてなのか私に悪意が飛んでくる。

 まぁ薄々理由はわかってるんだけど。フランソア様がポツリと呟いた話が噂として流れているのだろう。
 と、友人が教えてくれた。

 だってクーパー侯爵家に住んでいることは、親しい友人以外では彼女しか知らないもの。

 はああ、あと2年間、私を放っておいてくれないかしら。そしたら黙ってフランソア様の前から去っていくのに。

 結婚したとはいえ白い結婚。離縁すればお互い結婚はなかったことになる。

 手すら握ったことがない関係なんだもの。

 フランソア様とダイガットの方がよっぽど親しい仲なんだから!

 腕を組んだりお胸がダイガットに当たっていたり。

 手を繋いで歩くのはいつものことだし。

 顔を突き合わせて楽しそうに過ごしているのを何度見たことか。

 別にヤキモチなんて妬いていません。
 でもたまに羨ましい。

 継母に虐げられているからと守ってくれる幼馴染。

 バァズやブラッド兄様も私が虐げられているのを守ろうとしてくれたこともあった。でも私の方から彼らから離れていった。

 だってあの辛辣な継母は、二人に何をするかわからないもの。大切な二人だからこそ離れようと思った。

 ………ま、会わせてもらえないようになったから、離れてしまったのもあるけど。

 ぼんやりと外の景色を見ながらマックスおじさんの運転する馬車に乗り、屋敷へと帰っていると、突然激しい振動を感じた。


「どうしたの?」

「馬車の車輪が緩んでしまいました」

 珍しい。きちんと手入れされた侯爵家の馬車なのに。

 馬車から降りた。
 マックスおじさんが急いで馬車を修理してくれる店へとお願いに行くと言ったので私は快く馬車のそばで留守番することにした。

 のんびりと道ゆく人々を見ながらマックスおじさんを待つことにした。

 すると一台の馬車が止まった。

 一応馬車は邪魔にならないように端によけて止められていた。

「何このみすぼらしい馬車。邪魔だわ」

 聞いたことがある声。
 見たことがある馬車。

「お義母様……」

 私の声が耳に入った途端眉を顰め睨みつけられた。

「あら?どうしてあなたがわたくしのことをお義母様なんて呼ぶのかしら?」

 あ……そうだった。
 伯爵家から追い出された時『もう二度とわたくしのことを母と呼ばないでちょうだい、気持ち悪い』と言われたのだった。

「申し訳ございません」

「その馬車目障りだし邪魔だわ。さっさと退けなさい!」

「………」

 いや、無理でしょう?壊れているのがわかっていて私一人で退けろ?無理だわ。

「何を黙っているの?返事もできないの?」

「……申し訳ありません。私一人ではとても無理なのでもう少しお待ちください」

「はっ?あなたが一人で押せばいいじゃない!」

 いや、無理です。

「申し訳ありません、それは流石に…」

「さっさとおやりなさい!」

 仕方なく馬車を押してみた。

 馬は道の傍に繋がれていて重たい馬車の車輪1個外れかかっている。

 できるわけないじゃない!



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

愛なんか消えてしまえと願う私は悪くないと思う

ましろ
恋愛
「赤ちゃんができたの」 母の言葉に目眩がした。 我が家の両親は恋愛結婚。身分差から駆け落ち同然で一緒になった二人は未だにその愛は消えず、燃え上がり続けているのだからある意味凄いわ。 でもね? どうしてそんなにも子どもを作ってしまうの⁉ 私を入れて子どもは七人。お父さんの給料ではお手伝いさんなんか雇えるわけもなく、おっとりしたお嬢様気質の抜けないお母さんだけで家事育児などできるはずもなく。 そうなると働き手は長女の私だ。 ずっと小さな頃から弟妹のお世話と家事に明け暮れ、それなのにまだ産むと言うの? 「……ねえ、お母さんにとって子どもって何?」 「うふふ。それはね、愛の結晶よ」 愛。愛って何? 私はあなたの愛のために働き詰めなのですけど? 自分達の手に余るなら、そんなモノなど捨ててしまえっ! ❦R-15は保険です。 連載中のものが止まったままのくせに!とは言わないで(泣) 現在、作業中のものがなかなか終わらなくて息抜きのための不定期連載です。

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

誓いを忘れた騎士へ ―私は誰かの花嫁になる

吉乃
恋愛
「帰ってきたら、結婚してくれる?」 ――あの日の誓いを胸に、私は待ち続けた。 最初の三年間は幸せだった。 けれど、騎士の務めに赴いた彼は、やがて音信不通となり―― 気づけば七年の歳月が流れていた。 二十七歳になった私は、もう結婚をしなければならない。 未来を選ぶ年齢。 だから、別の男性との婚姻を受け入れると決めたのに……。 結婚式を目前にした夜。 失われたはずの声が、突然私の心を打ち砕く。 「……リリアナ。迎えに来た」 七年の沈黙を破って現れた騎士。 赦せるのか、それとも拒むのか。 揺れる心が最後に選ぶのは―― かつての誓いか、それとも新しい愛か。 お知らせ ※すみません、PCの不調で更新が出来なくなってしまいました。 直り次第すぐに更新を再開しますので、少しだけお待ちいただければ幸いです。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

【完結】純白のウェディングドレスは二度赤く染まる

春野オカリナ
恋愛
 初夏の日差しが強くなる頃、王都の書店では、ある一冊の本がずらりと並んでいた。  それは、半年前の雪の降る寒い季節に死刑となった一人の囚人の手記を本にまとめたものだった。  囚人の名は『イエニー・フラウ』  彼女は稀代の悪女として知らぬ者のいない程、有名になっていた。  その彼女の手記とあって、本は飛ぶように売れたのだ。  しかし、その内容はとても悪女のものではなかった。  人々は彼女に同情し、彼女が鉄槌を下した夫とその愛人こそが裁きを受けるべきだったと憤りを感じていた。  その手記の内容とは…

始まりはよくある婚約破棄のように

喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

ガネット・フォルンは愛されたい

アズやっこ
恋愛
私はガネット・フォルンと申します。 子供も産めない役立たずの私は愛しておりました元旦那様の嫁を他の方へお譲りし、友との約束の為、辺境へ侍女としてやって参りました。 元旦那様と離縁し、傷物になった私が一人で生きていく為には侍女になるしかありませんでした。 それでも時々思うのです。私も愛されたかったと。私だけを愛してくれる男性が現れる事を夢に見るのです。 私も誰かに一途に愛されたかった。 ❈ 旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。の作品のガネットの話です。 ❈ ガネットにも幸せを…と、作者の自己満足作品です。

処理中です...