あなたの愛はもう要りません。

たろ

文字の大きさ
48 / 77

48話

しおりを挟む
「どうして殿下は私が知らない話をそんなに知っているのですか?」

 わからない……どうして?なぜなの?

「両陛下に聞いたんだ……俺はお前と結婚したいとずっと思っていた……だから、弟と話しをつけた。
 公爵家はこれからもどんな嫌がらせをしてくるかわからない。アイツらの嫌がらせの中でお前を苦しめたくなかった。お前がこの国を出たがっていることは調べでわかっていたから俺もこの国を出るつもりでずっと動いていた」

「ちょ、ちょっと待ってください。私はまだ離縁していないはずでは?」

 どうして殿下と結婚なんて話になっているの?貴方の夢は?苦労は?台無しにしていいわけがない!  
 それに殿下が私のことをまるで好きみたいじゃない!ずっと妹のように扱ってきたのは彼じゃなかったの?

「だから、お前達は結婚なんてしていなかったんだ。俺はお前を娶るつもりでいたのに、伯爵は無理やりクーパー侯爵家のダイガットに嫁がせた。その時俺がどんなに腹が立ったかわかるか?
 絶望してしばらく引きこもって何にもやる気が出なかった。そんな時、お前の父親と母上が俺の部屋にきたんだ」

 殿下はフーッと息を吐いた。

「その時、お前が本当は入籍していないと知った……俺が王太子の地位を反対されても諦めずに下りようと動いていることも両親は知っていた……」

 思い出すように少しずつ話を進めているようだ。

 私はもう口を挟めなかった。
 だって殿下への想いはもう忘れようと思っていたのに、殿下も私のことを想ってくれていた?
 胸がギュッと苦しくなった。

「お前の結婚は偽造だったんだ。カルソン公爵家はお前を無理やり自分の親族の者と結婚させようと企んでいた。お前を傀儡として一生操ろうと思っていたんだろう。自分の娘がそれで満足するならな」

「お継母様は……そこまで私を憎んでいたのでしょうか?」

「アーシャ様に日に日に似てきてたからだと母上が言っていた。ビアンカの姿はミラー伯爵夫人には憎しみや嫉妬しかわかない。
 そしてその気持ちはお前への殺意と変わってきていたらしい…それも簡単に殺すつもりはなく時間をかけてお前を苦しめようと思っていたらしい……」

「どうして?そこまで私や母を憎むの?」

「ミラー伯爵夫人は幼い頃からずっと伯爵を好きだったんだ。なのに伯爵は彼女の気持ちを受け入れることはなかった。そしてアーシャ様を愛し結婚した。公爵令嬢として何不自由なく育った彼女にとって唯一手に入れられなかったのが伯爵だったらしい」

「………だ…から……お母様を……殺…したの?」

 声が震えた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

彼が愛した王女はもういない

黒猫子猫
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。 どちらも叶わない恋をした――はずだった。 ※関連作がありますが、これのみで読めます。 ※全11話です。

好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

戦場からお持ち帰りなんですか?

satomi
恋愛
幼馴染だったけど結婚してすぐの新婚!ってときに彼・ベンは徴兵されて戦場に行ってしまいました。戦争が終わったと聞いたので、毎日ご馳走を作って私エミーは彼を待っていました。 1週間が経ち、彼は帰ってきました。彼の隣に女性を連れて…。曰く、困っている所を拾って連れてきた です。 私の結婚生活はうまくいくのかな?

この幻が消えるまで

豆狸
恋愛
「君は自分が周りにどう見られているのかわかっているのかい? 幻に悋気を妬く頭のおかしい公爵令嬢だよ?」 なろう様でも公開中です。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

心を失った彼女は、もう婚約者を見ない

基本二度寝
恋愛
女癖の悪い王太子は呪われた。 寝台から起き上がれず、食事も身体が拒否し、原因不明な状態の心労もあり、やせ細っていった。 「こりゃあすごい」 解呪に呼ばれた魔女は、しゃがれ声で場違いにも感嘆した。 「王族に呪いなんて効かないはずなのにと思ったけれど、これほど大きい呪いは見たことがないよ。どれだけの女の恨みを買ったんだい」 王太子には思い当たる節はない。 相手が勝手に勘違いして想いを寄せられているだけなのに。 「こりゃあ対価は大きいよ?」 金ならいくらでも出すと豪語する国王と、「早く息子を助けて」と喚く王妃。 「なら、その娘の心を対価にどうだい」 魔女はぐるりと部屋を見渡し、壁際に使用人らと共に立たされている王太子の婚約者の令嬢を指差した。

処理中です...