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72話
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「それは捨てておいてちょうだい」
お祖母様に用事があって部屋をノックしようとしたら中から不機嫌なお祖母様の声が聞こえてきた。
どうしようかと迷いつつも、少しだけ間を置いてから、扉をノックした。
「誰?」
「ビアンカです」
「ああ、ビアンカなの?どうぞ入ってちょうだい」
「失礼致します」
眉根を寄せて不機嫌さを隠そうともせずソファに座ってお茶を飲んでいるお祖母様。
「お祖母様……私今回の舞踏会での社交界デビューは見送りたいと思っているんです」
フェリックス様と会わなくなって不安で落ち込んでいる中、お祖母様からそろそろ社交界にも顔を出すようにと勧められた。
お祖母様は私の事情を知らない。もしこのまま舞踏会に参加することになればパートナーはフェリックス様ではなく他の人に頼まなければならなくなりそう。
彼とは恋人だと思っていたけど今は……どんな関係になるのだろう。
「そうね、わたくしもビアンカの事情を知らなかったから今回の舞踏会がベストだと思っていたのだけど……」
ご存知なんだと知って驚きを隠せなかった。
「ビアンカ………もう噂はわたくしにも届いているわ……姪の息子だし信用していたのだけど………本家の公爵家との付き合いはしばらく考えさせてもらわないといけないわね」
「お祖母様………」
何か言わないといけないとわかっているのに口から言葉が出てこない。
ダイガットがどんなにフランソア様を大切にしていても、私のことを無視しても心は痛まなかった。
なのに大好きなフェリックス様から連絡すらなくなり、彼が他の女性との噂が立ち始めて、私の心は惨めで悲しみに溢れていた。
せめて別れを告げてくれれば……これ以上苦しまなくてもすむのに。
結局お祖母様に舞踏会に欠席することは認めてもらえなかった。
いつも優しいお祖母様が今はとても近寄り難くピリピリしていた。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
「ビアンカ、早く行きましょう」
「ゆっくり話しすぎたわね、次の授業に遅れちゃうわ」
昼食のあと中庭のベンチでゆっくりおしゃべりしすぎて慌てて教室へ戻ろうとしていた。
小走りで走っているとミーシャが突然止まった。
痛っ!
ミーシャにぶつかった。
「もう!どうしたの?」
「ほんと、いきなり止まるんだもの」
みんなが文句を言っているとミーシャが左の方へと目を向けたまま固まっていた。
なんとなくミーシャの視線を辿る。
「あ………」
声を失ったのは私。
そこには仲睦まじく腕を組んで歩くフェリックス様と女性。
その女性は………
ガルカッタ王国の王女殿下、ミリル様だった。
「ごめん、行こう」
ハッと我に返ったのはミーシャ。
私も「うん」と小さな声で頷いた。
私が立ち去ろうとした時。
一瞬……フェリックス様と目が遭った気がしたのは気のせいかも。
「ミリル様、フェリックス様に夢中らしいの」
仲の良い伯爵令嬢のエリナがムッとしながら私に言った。
「だから、悪いのはミリル様だからね?まぁ、恋人を放ってあんなに親しくしているフェリックス様も……最低だけど」
「王女殿下に対してそんな発言したら駄目だよ」
私は誰が聞いているかわからないので焦ってエリナに声を落とすように言った。
「だって許せないわ。ビアンカの目の前で……」
エリナは悔しいと言って私の代わりに泣いてくれる。
お祖母様たちは私の前でフェリックス様の話は絶対しないので耳に入ってこなかった。
でも学校に行けば嫌でも二人の仲の良い姿が目に入る。
そして噂も………
お祖母様に用事があって部屋をノックしようとしたら中から不機嫌なお祖母様の声が聞こえてきた。
どうしようかと迷いつつも、少しだけ間を置いてから、扉をノックした。
「誰?」
「ビアンカです」
「ああ、ビアンカなの?どうぞ入ってちょうだい」
「失礼致します」
眉根を寄せて不機嫌さを隠そうともせずソファに座ってお茶を飲んでいるお祖母様。
「お祖母様……私今回の舞踏会での社交界デビューは見送りたいと思っているんです」
フェリックス様と会わなくなって不安で落ち込んでいる中、お祖母様からそろそろ社交界にも顔を出すようにと勧められた。
お祖母様は私の事情を知らない。もしこのまま舞踏会に参加することになればパートナーはフェリックス様ではなく他の人に頼まなければならなくなりそう。
彼とは恋人だと思っていたけど今は……どんな関係になるのだろう。
「そうね、わたくしもビアンカの事情を知らなかったから今回の舞踏会がベストだと思っていたのだけど……」
ご存知なんだと知って驚きを隠せなかった。
「ビアンカ………もう噂はわたくしにも届いているわ……姪の息子だし信用していたのだけど………本家の公爵家との付き合いはしばらく考えさせてもらわないといけないわね」
「お祖母様………」
何か言わないといけないとわかっているのに口から言葉が出てこない。
ダイガットがどんなにフランソア様を大切にしていても、私のことを無視しても心は痛まなかった。
なのに大好きなフェリックス様から連絡すらなくなり、彼が他の女性との噂が立ち始めて、私の心は惨めで悲しみに溢れていた。
せめて別れを告げてくれれば……これ以上苦しまなくてもすむのに。
結局お祖母様に舞踏会に欠席することは認めてもらえなかった。
いつも優しいお祖母様が今はとても近寄り難くピリピリしていた。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
「ビアンカ、早く行きましょう」
「ゆっくり話しすぎたわね、次の授業に遅れちゃうわ」
昼食のあと中庭のベンチでゆっくりおしゃべりしすぎて慌てて教室へ戻ろうとしていた。
小走りで走っているとミーシャが突然止まった。
痛っ!
ミーシャにぶつかった。
「もう!どうしたの?」
「ほんと、いきなり止まるんだもの」
みんなが文句を言っているとミーシャが左の方へと目を向けたまま固まっていた。
なんとなくミーシャの視線を辿る。
「あ………」
声を失ったのは私。
そこには仲睦まじく腕を組んで歩くフェリックス様と女性。
その女性は………
ガルカッタ王国の王女殿下、ミリル様だった。
「ごめん、行こう」
ハッと我に返ったのはミーシャ。
私も「うん」と小さな声で頷いた。
私が立ち去ろうとした時。
一瞬……フェリックス様と目が遭った気がしたのは気のせいかも。
「ミリル様、フェリックス様に夢中らしいの」
仲の良い伯爵令嬢のエリナがムッとしながら私に言った。
「だから、悪いのはミリル様だからね?まぁ、恋人を放ってあんなに親しくしているフェリックス様も……最低だけど」
「王女殿下に対してそんな発言したら駄目だよ」
私は誰が聞いているかわからないので焦ってエリナに声を落とすように言った。
「だって許せないわ。ビアンカの目の前で……」
エリナは悔しいと言って私の代わりに泣いてくれる。
お祖母様たちは私の前でフェリックス様の話は絶対しないので耳に入ってこなかった。
でも学校に行けば嫌でも二人の仲の良い姿が目に入る。
そして噂も………
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