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23話 クリス殿下編
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「王子」
僕のことを「クリス様」から「王子」と言い換えて呼ぶようになって、どのくらいの時間が経ったのだろう。
幼い頃から、歳が近く父上とリサ様がいとこ同士なのもあり、子どもの頃から仲が良かったアイシャ。
ブロンドの髪がとても綺麗でグリーンの瞳に見つめられると吸い込まれてしまいそうになる。
僕はいつもドキドキしてしまう。
あんなに大好きで、いつも笑い合っていたのに、気がつけば意地悪なことばかり言うようになっていた。
最初は僕の気持ちを父上に話して、婚約したいとお願いしたのがきっかけだった。
まだ幼いうちからの婚約は考えられないと断られて、父上にもう少し時間を置いてから婚約を打診するべきだろうと言われた。
僕は大好きなアイシャが他の誰かの婚約者にならないか不安で、でも嫌われたくなくて
「わかりました。少し待ちます」
と、我慢することにしたのが8歳の時だった。
それからは毎年父上にアイシャとの婚約の話をお願いした。
だけど、ずっと「まだ今は早い」と言われ続けた。
僕はだんだんイライラが抑えられなくなり、アイシャに会うとちょっと意地悪を言ってしまう。
本当に最初はほんの少しだけ……
「クリス様遊びましょう?」
「え?今日は気分が乗らない」
「クリス様、このお菓子美味しいですね」
「そうかな」
アイシャがちょっと困った顔をしているのを見ると、僕の心はチクっと痛んだが、ずっと僕との婚約を断り続けるアイシャがいけないんだ!と、心の中でアイシャを責めた。
知ってはいるんだ。
アイシャが断ったわけではないこと。
僕がアイシャが大好きで、何度も婚約したいと願っていることをアイシャは知らない。
そんなある日、母上のお茶会にとても綺麗な夫人が参加するようになった。
その夫人は外国のとある貴族の未亡人で、今はルビラ王国にいる親戚のガイスラー侯爵の元に身を寄せているらしい。
とても妖艶な夫人で母上は、エレン夫人と呼んでいた。
僕が母上に呼ばれてお茶会でみんなに挨拶をした時に、エレン夫人は「まあ、優秀な王子様ね」と、僕に気軽に話しかけて、
「私にも息子がいたのよ、今は離れ離れに暮らしているのだけど」
と、寂しそうに言った。
それからはお茶会などで王宮に来ると、僕にも挨拶をして来て、外国の話を聞かせてくれる優しいおばさまとして会うことが増えた。
母上も外国のことを色々知るのにいいだろうと、エレン夫人を月に数回呼んで僕と会わせて、勉強するようにと言われた。
エレン夫人の所作はとても綺麗で知識も豊富で、かなり高度な教育を受けているのだろうと母上が言っていた。
色々な外国の成り立ちや考え、文化など教わるのがとても楽しかった。
そんなある日、エレン夫人が聞いた。
「クリス殿下には婚約者はまだいらっしゃらないのですね」
「まだいない。だが婚約者として相応しいと思っている相手はいるよ」
「もしかして、たまにクリス殿下と一緒に仲良くしておられるアイシャ・レオンバルド様ですか?」
「何故わかるんだ?」
「ふふ、だってクリス殿下のアイシャ様を見る目はとてもお優しく愛おしそうにしていらっしゃいますもの」
「……そんなにわかりやすいのか」
僕は指摘されて恥ずかしくなった。
「婚約の打診はまだされていないのですか?」
「何度か父上がしてくれたが、まだ幼いうちは婚約者は決めたくないと言って断られているんだ」
エレン夫人とは打ち解けているので、僕も気楽に返事をしてしまった。
「あら?だったらアイシャ様が断ったわけではないのですね。アイシャ様の気を引いてみるのはどうですか」
「気を引く?」
「そうです、優しくして仲良くしていても振り向いてもらえないなら、少しだけ意地悪をしてみるのです。女の子はそうすると違う目線で貴方のことを見て、気にかけてくれるかもしれませんよ?もちろんやりすぎはダメですよ?」
そうか……つい意地悪を言っていたけど、アレはアイシャの気を引くのに悪いことではなかったんだ。
それからはエレン夫人に勉強以外も色々と相談した。
特にアイシャのことは親身になってくれる。
父上も母上もしばらく待ちなさいと言って話を聞いてくれない。
エレン夫人は唯一僕の気持ちをわかってくれる。
「アイシャ様はご両親に全く似ておりませんね」
ふとエレン夫人が呟いた。
確かに……
僕は子どもだからそんなふうに感じていなかったが、周りをよく観察していると、アイシャの屋敷の使用人達もそんな噂をしていた。
僕はアイシャの気を引くために
「アイシャは両親に似ていないな」
と、言ってみた。
アイシャの顔色が変わった。
気にしていたようだ。
僕は「アイシャの味方は僕がなるからな」
と言うつもりだった。
そうしてアイシャの辛い気持ちに寄り添い優しくしてまた仲良くなりたかった。
なのにアイシャは僕に対して
「クリス様なんか大っ嫌い」
と、叫んで僕の前から立ち去った。
それからのアイシャは僕に対して冷たくなった。
そのことをエレン夫人に相談したら、
「女の子だから照れくさいのかもしれませんね。気にしないでいいのでは?」
軽く言われたので、僕も気にしないようにつとめた。
だけどアイシャが笑わない。
他の人の前ではあんなに可愛く笑うのに僕に対しては冷めた顔をしている。
悪循環に陥ったのはわかっていてもやめられない。
僕のことを「クリス様」から「王子」と言い換えて呼ぶようになって、どのくらいの時間が経ったのだろう。
幼い頃から、歳が近く父上とリサ様がいとこ同士なのもあり、子どもの頃から仲が良かったアイシャ。
ブロンドの髪がとても綺麗でグリーンの瞳に見つめられると吸い込まれてしまいそうになる。
僕はいつもドキドキしてしまう。
あんなに大好きで、いつも笑い合っていたのに、気がつけば意地悪なことばかり言うようになっていた。
最初は僕の気持ちを父上に話して、婚約したいとお願いしたのがきっかけだった。
まだ幼いうちからの婚約は考えられないと断られて、父上にもう少し時間を置いてから婚約を打診するべきだろうと言われた。
僕は大好きなアイシャが他の誰かの婚約者にならないか不安で、でも嫌われたくなくて
「わかりました。少し待ちます」
と、我慢することにしたのが8歳の時だった。
それからは毎年父上にアイシャとの婚約の話をお願いした。
だけど、ずっと「まだ今は早い」と言われ続けた。
僕はだんだんイライラが抑えられなくなり、アイシャに会うとちょっと意地悪を言ってしまう。
本当に最初はほんの少しだけ……
「クリス様遊びましょう?」
「え?今日は気分が乗らない」
「クリス様、このお菓子美味しいですね」
「そうかな」
アイシャがちょっと困った顔をしているのを見ると、僕の心はチクっと痛んだが、ずっと僕との婚約を断り続けるアイシャがいけないんだ!と、心の中でアイシャを責めた。
知ってはいるんだ。
アイシャが断ったわけではないこと。
僕がアイシャが大好きで、何度も婚約したいと願っていることをアイシャは知らない。
そんなある日、母上のお茶会にとても綺麗な夫人が参加するようになった。
その夫人は外国のとある貴族の未亡人で、今はルビラ王国にいる親戚のガイスラー侯爵の元に身を寄せているらしい。
とても妖艶な夫人で母上は、エレン夫人と呼んでいた。
僕が母上に呼ばれてお茶会でみんなに挨拶をした時に、エレン夫人は「まあ、優秀な王子様ね」と、僕に気軽に話しかけて、
「私にも息子がいたのよ、今は離れ離れに暮らしているのだけど」
と、寂しそうに言った。
それからはお茶会などで王宮に来ると、僕にも挨拶をして来て、外国の話を聞かせてくれる優しいおばさまとして会うことが増えた。
母上も外国のことを色々知るのにいいだろうと、エレン夫人を月に数回呼んで僕と会わせて、勉強するようにと言われた。
エレン夫人の所作はとても綺麗で知識も豊富で、かなり高度な教育を受けているのだろうと母上が言っていた。
色々な外国の成り立ちや考え、文化など教わるのがとても楽しかった。
そんなある日、エレン夫人が聞いた。
「クリス殿下には婚約者はまだいらっしゃらないのですね」
「まだいない。だが婚約者として相応しいと思っている相手はいるよ」
「もしかして、たまにクリス殿下と一緒に仲良くしておられるアイシャ・レオンバルド様ですか?」
「何故わかるんだ?」
「ふふ、だってクリス殿下のアイシャ様を見る目はとてもお優しく愛おしそうにしていらっしゃいますもの」
「……そんなにわかりやすいのか」
僕は指摘されて恥ずかしくなった。
「婚約の打診はまだされていないのですか?」
「何度か父上がしてくれたが、まだ幼いうちは婚約者は決めたくないと言って断られているんだ」
エレン夫人とは打ち解けているので、僕も気楽に返事をしてしまった。
「あら?だったらアイシャ様が断ったわけではないのですね。アイシャ様の気を引いてみるのはどうですか」
「気を引く?」
「そうです、優しくして仲良くしていても振り向いてもらえないなら、少しだけ意地悪をしてみるのです。女の子はそうすると違う目線で貴方のことを見て、気にかけてくれるかもしれませんよ?もちろんやりすぎはダメですよ?」
そうか……つい意地悪を言っていたけど、アレはアイシャの気を引くのに悪いことではなかったんだ。
それからはエレン夫人に勉強以外も色々と相談した。
特にアイシャのことは親身になってくれる。
父上も母上もしばらく待ちなさいと言って話を聞いてくれない。
エレン夫人は唯一僕の気持ちをわかってくれる。
「アイシャ様はご両親に全く似ておりませんね」
ふとエレン夫人が呟いた。
確かに……
僕は子どもだからそんなふうに感じていなかったが、周りをよく観察していると、アイシャの屋敷の使用人達もそんな噂をしていた。
僕はアイシャの気を引くために
「アイシャは両親に似ていないな」
と、言ってみた。
アイシャの顔色が変わった。
気にしていたようだ。
僕は「アイシャの味方は僕がなるからな」
と言うつもりだった。
そうしてアイシャの辛い気持ちに寄り添い優しくしてまた仲良くなりたかった。
なのにアイシャは僕に対して
「クリス様なんか大っ嫌い」
と、叫んで僕の前から立ち去った。
それからのアイシャは僕に対して冷たくなった。
そのことをエレン夫人に相談したら、
「女の子だから照れくさいのかもしれませんね。気にしないでいいのでは?」
軽く言われたので、僕も気にしないようにつとめた。
だけどアイシャが笑わない。
他の人の前ではあんなに可愛く笑うのに僕に対しては冷めた顔をしている。
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