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22話

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わたしはしばらく学園を休むことになった。

多少は癒しで治してもらったが、完全に体が戻るのに時間がかかった。

それに精神的にも参ってしまった。

もうあんな事はないとお祖父様が言ってくれた。
でも、また他の人が?

とか、あの王子が絡んできたら?

とか考えると、やはり恐怖が先に出てしまう。

ふと考える。

わたしが怪我をしたと聞いてもお父様もお母様も会いには来てくれないのね……

もし今抱きしめてくれたら、頭を撫でてくれたらそれだけで心が救われるのに……

ううん、そんなこと考えてはいけない。

魔法を自分のものにして制御ができるようになればお父様もお母様もわたしを褒めてくれるかもしれない。

そうすればわたしもレオンバルド家の一員になれるかもしれない。

そういえば最近あの怖い夢を見ることが減ってきた。

お祖父様の家は何故か温かくてホッとする。

自分の家にいる時は息苦しくて、居場所がなくて、それでも自分の居場所を作るのに必死で、笑って明るいアイシャを演じていた。

今は自然に笑える。
わざわざ笑顔を作らなくても、楽しい時に笑い、つまんない時はつまんない顔、疲れた時には疲れた顔をしても平気になった。

元気になったら学園の医務室に行って、わたしを助けてくれた人の名前を尋ねて、お礼を言わなくっちゃ。

お腹の痛みはかなり酷かった。
あのままだと腹部損傷を起こして大量出血や腹腔内出血のほか、腹膜炎、骨折などが生じる可能性があり、命の危険にさらされることもあったらしい。

それを医務室に連れて行ってくれて、そこでお腹の怪我をほとんど治療してくれたと聞いた。

かなり高度な癒しの魔法と医療知識を持っている人なのだと思う。

わたしもお母様のような癒しの魔法を使えるようになりたくて、医療の勉強をこっそりしている。
だから知識だけなら少しはあるが、魔法を使うにはかなり繊細な制御と動きが求められる。
だから、わたしは制御が出来るようになるのに必死なのだ。

自分の属性が分からない。
ならばお母様の光属性があるかもしれない。

お母様の子どもかわからないけど……それでもまだ可能性は捨てていない。

わたしを助けてくれた人にお礼を言い、もし少しでも時間があるなら、わたしにも癒しの魔法を教えてくれないかなとほんの少しだけ期待をしている。

お祖父様曰く、15歳くらいの男の子だったらしい。

大人の人でないなら仲良くなって教えてもらえる可能性あるかも。



「アイシャ様、起きていたんですか?」

メリッサがわたしの顔を覗き込んだ。

「うん、少し体が楽になってきたの……ベッドから出てお庭を散歩したいの」

「駄目です!お医者様からのお許しを頂くまでは!」

「でも退屈だわ。それに少しずつ体も動かさないと日常生活に戻る時逆に疲れてしまうわ」

「そうですが……カイザ様から許可をもらえるか聞いてきますのでお待ちください」

「メリッサ、大好き!」

メリッサはなんだかんだ言ってわたしの我儘を聞いてくれる。
もう四日もベッドで寝ているとストレスで頭がおかしくなっちゃう。

わたしはベッドから見える窓の外をじっと眺めた。

昼間の外の青空がとても綺麗だ。

少し肌寒くなってはきたが、昼間ならちょうどいい気温で散歩にはもってこいだと思う。




「カイザ様から許可がおりました」

メリッサは車椅子を用意してくれて、ロウトが抱っこして車椅子に乗せてくれた。
本当は一人で歩きたかったが、久しぶりにベッドから出て立ちあがろうとしたが、フラフラして歩くのは無理だった。
だからわかっていたのだろう。
わたしはさっさと車椅子に乗せられた。

とりあえず部屋から脱出して久々の外の空気を吸えたので気分だけでも違った。





◇ ◇ ◇

アイシャが学園で女子生徒達に怪我を負わさられた聞いて急ぎ学園の医務室に向かった。

そこには何故かキリアンがいた。

「カイザ様、たまたま学園に用事があって来て、帰りに女の子が倒れているので助けようとしたらアイシャでした。アイシャはお腹をかなり蹴られていました。急ぎ処置が必要なので、僕が癒しの魔法をかけました。アイシャの負担にならないギリギリまでかけたのですが、完全に治す事は出来ませんでした。
あとはカイド様が少しずつ治してあげてください」

わたしはアイシャの真っ青な顔を見てからまたキリアンの方に振り返った。

「キリアン、助けてくれてありがとう。腹部外傷を起こしていたみたいだな。何故アイシャがこんな酷い目に遭うんだ」

「アイシャに暴力を振るった女の子達五人は魔法で縛りあげて動けないようにしてその場に放置しています。アイシャはまた不幸なことが続いているみたいですね……カイザ様、守るとの約束忘れないでください。リサ様は忘れているのか……それとも本人は守っていたつもりなのか……僕にはわかりませんが、今のリサ様は母親失格ですね」

キリアンの鋭い一言にわたしは何も言い返せなかった。

とにかく女の子達を捕まえて事情を聞くしかない。

わたしはアイシャが目覚める前に去っていくキリアンに頭を下げるしかなかった。

娘のリサの気持ちがわからない。
だがリサ達には厳しい姿勢で接し、アイシャのことを今一度見つめ直し考えてもらうつもりだ。
それが悪い結果になろうと、わたしはアイシャを守る。

だが、アイシャはわたしに気を使い何も尋ねないが、ロウトとメリッサには両親のことをたまに聞いているらしい。

アイシャを屋敷に連れ帰る前に女子生徒達のいるところへ向かった。

彼女達は魔法で縛り上げられて土の上に座り込み動けないように五人が一纏めにされていた。

わたしを見ると慌てて

「た、助けてください」

「知らない人がわたし達をこんな風に縛ったんです」

などと、自分達がいかにも被害者だと言わんばかりにわたしに助けを求めてきた。

わたしはついて来た護衛騎士達にそのまま王宮にある牢に連れていくように命令した。

騒ぐ口を魔法で黙らせて、女子生徒達は真っ赤な顔をして口をパクパクさせていたが、何も聞こえないので、騎士達は平然と連れて行った。

すぐに学園長に会い、女子生徒達の親に書状を書き、牢に入れたこと、このまましばらくは出てこれない、会うことも許されないことを伝えさせた。

もちろん学園長にもこの学園のトップとして責任がある事は伝えた。

わたしは静かに淡々とことを運んだ。

怒りが爆発してこのままでは学園なんか吹き飛ばしてしまうかもしれない。
我が可愛い孫を傷つけた女子生徒を本当は同じ目に合わせて、森にでも捨てて仕舞えばいいのだが、アイシャの前では優しいお祖父様でいたいから、我慢するしかなかった。

わたしが手を下さなくても、彼女達はもう貴族社会で生きていく事は二度とできない。

















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