【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

文字の大きさ
2 / 156
離縁してください

【2】

しおりを挟む
 今日もまた夜勤で屋敷に帰れない。

 最近はソニア殿下の我儘が酷くなり、彼女を諭せる近衛騎士が少なく俺が休暇返上でそばにいるしかない。

「アレック、わたくし外出したいの。あなたがついてきてくれるわよね?」
「お散歩に行くわ、さっさと出かけるわよ」
「お茶が飲みたいの、嫌よ、侍女の淹れたお茶って美味しくないの。アレック、侍女長を呼んできてちょうだい」
「今日は気分が乗らないから仕事はお休みよ」

 彼女の気分に振り回され近衛騎士も侍女もメイドも、そして彼女付きの官僚達も振り回されっぱなしだ。

 幼馴染の俺はソニア殿下の護衛騎士にさせられた。

 ソニア殿下の兄であるバライズ殿下と俺は幼馴染でソニア殿下ともよく一緒に遊んでいた。俺の言うことなら割と聞いてくれるソニア殿下。少しなら叱っても問題視されない、バライズ殿下からも許可を得ていた。

 両陛下も手のかかる娘に甘いところはあるが、叱ることができる者がいることをむしろ喜んでくれた。



 ただ……結婚前までのソニア殿下は……

「わたし、アレックのお嫁さんになりたいの」

 子供の頃からソニア殿下に何度となく言われたこの言葉だけはソニア殿下に甘い陛下達も頷くことはなかった。

「アレック、お前にはソニアの護衛としてそばについてはもらうが、そなたに嫁がせることはない」

 陛下にもそう言われていた。

 ソニア殿下はその言葉に「どうして?」「絶対わたしはアレックのお嫁さんになるの!」と泣いて陛下達を困らせたこともあった。

 バライズ殿下に一度俺の気持ちを聞かれたことがある。

「アレックはソニアのことを好きかい?」

「…………バライズ殿下がソニア殿下に対して想っている気持ちと同じです」

 俺はそう答えた。

 ソニア殿下からの気持ちを俺は受け入れることはできなかった。どう断ればいいのか悩みながらも護衛対象の殿下に強く言うことも否定することもできずに時間だけが過ぎていった。


「やっぱり……どう見ても恋愛感情じゃなさそうだったからな」

「………(手のかかる)妹のような気持ちです」

「うん、そうみえていたよ」

 殿下の言葉に俺はホッとした。

 陛下からは結婚はさせられないと言われていたが、ソニア殿下は納得していなかった。兄であるバライズ殿下を味方につけて俺との結婚を強引にすすめられるのは困る。

 しかし俺には結婚のことを王族に対して発言できる立場ではないため、訊かれるまで答えることは出来なかった。

 俺に婚約者がいればよかったのだが、次男で後継者ではないため幼い頃から騎士になりたいとそれだけを目指してきた俺に両親は『無理に婚約者は作らなくてもいい』と言ってくれた。

 兄上も侯爵家を継ぐとはいえ、婚約者選びは本人の意思を尊重して選ばれた。

 両親が恋愛結婚だったため、政略結婚はさせないと言ってくれていた。おかげでずっと煩わしいことは考えずに騎士として邁進していくことができた。

 女は面倒だと思っていた。

 派手な化粧にドレスを毎日のように着替えて着飾る。香水の匂いもつけ過ぎればただの害でしかない。
 宝石をゴテゴテと体につけて自慢をして回る姿も俺からすれば滑稽にしか見えない。

 それにキャーキャーうるさいし、何かと話しかけてくるのも鬱陶しい。せっかく鍛錬しているのに邪魔をしにやってきて、危険な目に遭いそうになると「アレック様ぁ」と涙目で訴えてくる。
 「勝手に鍛錬場に入ってきたんだろう!」と文句を言いたいがどこぞの令嬢に文句でもいえば親が出てきてまた問題が大きくなる。

 仕方なく優しくエスコートして鍛錬場から出てもらうしかない。

 俺はそんな女達にうんざりしていた。ソニア殿下に対してもいくら妹のように思えても、全く恋愛感情はわかないし、どちらかと言うと、こんな妹を持ったバライズ殿下に同情していた。

 そんな生活の中、俺はとても興味深い女性に出会った。

 いや、実際には見かけただけだった。

 同じ騎士団の所属ではあるが部隊が違う近衛騎士と第二部隊の騎士。仕事でたまに絡むことがある。
 共同演習や大々的な国の行事の時など互いに連携を取り合う。

 俺は下っ端で第二部隊にお遣いをさせられた。書類を持って行き印をもらったり取りに行ったりするのが担当だった。他の奴らもそれぞれ他の隊の担当のお遣いをさせられていたので不満は言えなかった。

 その時にたまに見かけるのが俺の妻の『シルビア』だった。








 
しおりを挟む
感想 155

あなたにおすすめの小説

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

心の中にあなたはいない

ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。 一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

処理中です...