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城。②
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「そんなところで寝ているのですか?」
城に連れて来られ厩舎の片隅にある狭い休憩室に寝具を持ち込んで寝泊まりすることにした。
何度となく騎士や陛下の部下達が王宮のわたしの部屋で過ごすようにと言ってくる。
「またあの部屋でわたしを軟禁するのですか?使用人達に無視されまともに世話もされず時には食事も抜かれ、人としての尊厳すら守ってもらえず、あの部屋でわたくしは屍のように過ごせとでも言うの?」
それならこの厩舎でルドルフや他の馬、優しいおじちゃん達と過ごした方がいい。
それに悔やまれるのは宿屋に置き去りにしたわたしのカバン。あそこには服や小物以外にも村のおじちゃんが作ってくれた大切な木細工の小物入れや櫛、それに大金も隠してある。
ルドーが宿屋の店主と知り合いだと言っていたから何かしら動いてくれているかもしれないと希望は持っているのだけど。
わたしがいなくなった理由を把握してくれていたらいいのだけど。
以前わたしの世話をしていた侍女や侍従、近衛騎士が頭を下げてやってくる。
「今度来たら馬の糞をかけてやるわ」
あんまりしつこいので冷たく言い放ったら青い顔をして逃げ出した。
それを見ていたソラさんが大笑い。
「ソラさん?久しぶりですね?」
「ソフィア姫……ご無事にお帰りになって安心しました」
恭しく頭を下げ少し涙ぐみながらソラさんがわたしを見た。その目には優しい温かな気持ちが伺える。
「ええ、無理やりこの城に連れ戻されました」
「わたし達使用人は皆、姫様が無事に過ごしているのか心配しておりました。でも風の噂で、庶民にまじり楽しく過ごしていると聞いて少しは安心しておりました」
「うん、村のみんなは優しくてとても幸せだったわ」
わたしを心配してくれていた人がいた。それだけで胸の中が温かさでいっぱいになる。
「ソフィア姫、こんなところで過ごしてはお体に差し支えがありませんか?」
「ルドルフ達と一緒にいたほうが幸せなの」
「せめて、使用人達が住む寮で過ごしませんか?そこならもう少し寝心地のいいベッドもあります」
「そこへ行けば今度はあなた達に迷惑をかけてしまうわ。あの人達が何をするかわからないもの」
「あの人達……」
言い淀むソラさん。
「あの人達とはわたしを産んだ人達のことよ。そして血は繋がらないけど一応姉である人のこと」
「両陛下もオリビア様も聡明で心優しく、民に寄り添ってくださる素晴らしい方々です」
まあ!なんて素敵な褒め言葉。
ソラさんは彼らを尊敬しているのね。
「そうね、王族としてこの国では素晴らしい方々なのかもしれないわね。でもわたしにとっては……もう家族でもないのにまた無理やり連れ戻されて、いったい何をしたいのかよくわからない人達でしかないの」
多分理由はネルヴァン様とわたしを結婚させたいのだろう。
でもオリビア様がネルヴァン様を気に入っているようだし、聖女様がまた逃げ出さないように彼女をネルヴァン様の側に置いていたほうがいいのではないのかしら?
聖女様なんだから今度こそ国を救わなくちゃ。
わたしはそれを遠くからただ見ててあげるわ。ただの平民として。
「姫様………」
「ソラさん。ここではソフィよ?以前はそう呼んでくれていたじゃない?」
「それは……あまりにも姫様が不憫で……」
「うん、今も不憫でしょう?この城からは出してもらえないんだもの」
厩舎に居座ることは出来ても城からだけは抜け出せない。何度かチャレンジしたけど、門番は融通が利かず何があっても通してくれないし隠し通路も封鎖されてしまって逃げ場がない。
ソラさんはそれからもよく顔を出してくれた。
食事も心配してソラさんがいつも用意してくれるし、服などもどこからか持ってきてくれる。
綺麗なドレスを着るよりいつもと同じワンピースの方が気楽でいい。
馬の世話をする時はおじちゃん達の作業着を借りて笑い合いながら作業をする。
これはこれでわたしの幸せなのかもしれない。
でもやはり、わたしのことを放っておいてはくれなかった。
「まぁ、ソフィア様ったらなんて格好をしているの?」
オリビア様の一言に傍にいる令嬢達がクスクスと笑う。
わたしはまるで見せ物のようだった。
城に連れて来られ厩舎の片隅にある狭い休憩室に寝具を持ち込んで寝泊まりすることにした。
何度となく騎士や陛下の部下達が王宮のわたしの部屋で過ごすようにと言ってくる。
「またあの部屋でわたしを軟禁するのですか?使用人達に無視されまともに世話もされず時には食事も抜かれ、人としての尊厳すら守ってもらえず、あの部屋でわたくしは屍のように過ごせとでも言うの?」
それならこの厩舎でルドルフや他の馬、優しいおじちゃん達と過ごした方がいい。
それに悔やまれるのは宿屋に置き去りにしたわたしのカバン。あそこには服や小物以外にも村のおじちゃんが作ってくれた大切な木細工の小物入れや櫛、それに大金も隠してある。
ルドーが宿屋の店主と知り合いだと言っていたから何かしら動いてくれているかもしれないと希望は持っているのだけど。
わたしがいなくなった理由を把握してくれていたらいいのだけど。
以前わたしの世話をしていた侍女や侍従、近衛騎士が頭を下げてやってくる。
「今度来たら馬の糞をかけてやるわ」
あんまりしつこいので冷たく言い放ったら青い顔をして逃げ出した。
それを見ていたソラさんが大笑い。
「ソラさん?久しぶりですね?」
「ソフィア姫……ご無事にお帰りになって安心しました」
恭しく頭を下げ少し涙ぐみながらソラさんがわたしを見た。その目には優しい温かな気持ちが伺える。
「ええ、無理やりこの城に連れ戻されました」
「わたし達使用人は皆、姫様が無事に過ごしているのか心配しておりました。でも風の噂で、庶民にまじり楽しく過ごしていると聞いて少しは安心しておりました」
「うん、村のみんなは優しくてとても幸せだったわ」
わたしを心配してくれていた人がいた。それだけで胸の中が温かさでいっぱいになる。
「ソフィア姫、こんなところで過ごしてはお体に差し支えがありませんか?」
「ルドルフ達と一緒にいたほうが幸せなの」
「せめて、使用人達が住む寮で過ごしませんか?そこならもう少し寝心地のいいベッドもあります」
「そこへ行けば今度はあなた達に迷惑をかけてしまうわ。あの人達が何をするかわからないもの」
「あの人達……」
言い淀むソラさん。
「あの人達とはわたしを産んだ人達のことよ。そして血は繋がらないけど一応姉である人のこと」
「両陛下もオリビア様も聡明で心優しく、民に寄り添ってくださる素晴らしい方々です」
まあ!なんて素敵な褒め言葉。
ソラさんは彼らを尊敬しているのね。
「そうね、王族としてこの国では素晴らしい方々なのかもしれないわね。でもわたしにとっては……もう家族でもないのにまた無理やり連れ戻されて、いったい何をしたいのかよくわからない人達でしかないの」
多分理由はネルヴァン様とわたしを結婚させたいのだろう。
でもオリビア様がネルヴァン様を気に入っているようだし、聖女様がまた逃げ出さないように彼女をネルヴァン様の側に置いていたほうがいいのではないのかしら?
聖女様なんだから今度こそ国を救わなくちゃ。
わたしはそれを遠くからただ見ててあげるわ。ただの平民として。
「姫様………」
「ソラさん。ここではソフィよ?以前はそう呼んでくれていたじゃない?」
「それは……あまりにも姫様が不憫で……」
「うん、今も不憫でしょう?この城からは出してもらえないんだもの」
厩舎に居座ることは出来ても城からだけは抜け出せない。何度かチャレンジしたけど、門番は融通が利かず何があっても通してくれないし隠し通路も封鎖されてしまって逃げ場がない。
ソラさんはそれからもよく顔を出してくれた。
食事も心配してソラさんがいつも用意してくれるし、服などもどこからか持ってきてくれる。
綺麗なドレスを着るよりいつもと同じワンピースの方が気楽でいい。
馬の世話をする時はおじちゃん達の作業着を借りて笑い合いながら作業をする。
これはこれでわたしの幸せなのかもしれない。
でもやはり、わたしのことを放っておいてはくれなかった。
「まぁ、ソフィア様ったらなんて格好をしているの?」
オリビア様の一言に傍にいる令嬢達がクスクスと笑う。
わたしはまるで見せ物のようだった。
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