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城。
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馬車に乗せられてついた場所は……あの記憶から消し去りたい『城』だった。
「どうぞ」
馬車から降ろされ、周りを一望する。
2年近く経っても変わらない、なんとも言い難い重く感じられる場所。
二度と足を踏み入れることはない。そう誓ったのに。
わたしを拐った男達は突然地面に跪き頭を下げた。
「姫様乱暴をお許しください。国王陛下がお待ちです」
「………」
返事はしなかった。
彼らは城の中ではわたしに乱暴な扱いは出来ないようだ。
無視してそのまま厩舎へと向かった。
「姫様!お待ちください」
慌てて追いかけて来た男を冷たく睨みつけた。
「わたくしの背中は貴方がたの剣の刃先で傷を負っております。貴方達を信用することはできませんわ」
「申し訳ございません」
彼らの顔が引き攣り青ざめているのが分かった。
たとえ陛下達に愛されていない『姫様』であっても傷をつけてしまった。
その代償を考えると甘くはないだろう。
ここに来てから気持ちが前世の『姫様』の頃に傾いているのが分かる。
両親に愛されたい。
誰かわたしを見て欲しい。
わたしの孤独な心に気がついて。
心が悲鳴を上げ始めた。
自由に暮らしたい、もうこの人たちに煩わされたくないと思っていたはずなのに、頭の中が霧がかかってしまったように、思考がぼんやりしてうまく考えられなくなってきた。
ただ、ルドルフに会いたい。
あの子は不思議なくらいわたしの心を落ち着かせてくれる。
誰かが突然わたしの肩を掴んだ。
歩いていた足が突然止まり、立ち止まらざるを得ない。
肩の痛みに「うっ」と声が漏れる。
ーー誰?
後ろに仕方なく視線を向ける。
何故貴方がここに?
ううん、居るのは仕方がない。
この時期だった。
わたしがこの人の国へと嫁いだのだ。
でも、わたしは去っていた。わたしの顔を知らないはずなのに。
彼と視線が絡み合った。わたしの肩を掴んで離そうとしないネルヴァン様。
何か言いたそうな顔をしているが声を発そうとしない。
わたしは彼の腕を強い力で振り払った。
「痛いわ!」
「あ……すまない」
「………」
彼のことをわたしも知っているのはおかしい。そう思い無視することにした。
わたしは以前この人に声をかけられ大きな声で叫んで彼から逃げ出した。
おかげであの時全ての記憶が戻った。
だから、彼からもこの城からも逃げ出したのに。また会うなんて。
さっさと聖女様であるオリビア様と結婚して出て行けばいいのに。
彼女は聖女様なんだから、ルワナ王国も災害など起こらず幸せに暮らせるはずだわ。
オリビア様ならリリア様のことを……うーん、多分毛嫌いして憎み、辛辣なことをしそうだけど。
リリア様って思い出すとよくわからない人だったな。
ただネルヴァン様のそばで柔らかな微笑みをたたえていた。
でも何を考えているのかよくわからない、ある意味不気味なひとだったな。
出来るだけ早歩きで厩舎へと向かった。
ネルヴァン様はこちらへ視線を向けてはいたけど、これ以上追ってはこないし声もかけてこなかった。
露骨に嫌な顔をして正解だった。
厩舎につくとルドルフがいた。
「ルドルフ!」
ルドルフに声をかけると近くにいた懐かしい顔のおじちゃん達がわたしの顔を見て跪いた。
「申し訳ありませんでした」
「おじちゃん達は城で雇われているのだから、上からの命令は聞かざるを得ないのはわかってるわ。だから謝らないで。わたしの方が勝手にルドルフを連れて出て行ったんだもの」
「ルドルフは姫様が大好きなんです。ですからついて行ったんです。この子は姫様のそばにいることが幸せなのですから」
「ええ、わたしも幸せなの。それを知ってて無理やりルドルフをこの城に連れて来させたのは国王陛下?」
「……陛下はずっと姫様を心配されておりました」
「わたしのことをない者として扱っていたくせに?」
ふざけないで。あの人から心配なんてしてもらいたくないわ。
「陛下はずっと探しておられました」
「わたしのことをまた利用しようと思っているのかしら?」
おじちゃん達に八つ当たりしても仕方がないのについ強い口調になってしまう。
「……ごめんなさい… ルドルフに乗りたいの、いいかしら?」
「もちろんです」
わたしはルドルフと馬場でのんびりと楽しんだ。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
「ネルヴァン殿下」
「俺は彼女に嫌われているようです」
「わしも娘に嫌われて顔すら合わせてもらえない」
「前世の記憶が戻った今、彼女に出来ることはずっと遠くから見守ってあげることだけなんだとわかっています」
「ああ、しかし、ソフィアがいなければ災いは止まらない、もう放っておくことは出来ない」
「でも彼女にもう一度俺と結婚するように強制することは難しいでしょう」
「それでもわしは国民を救うためにあの子を犠牲にするしかないんだ」
「俺は……」
「どうぞ」
馬車から降ろされ、周りを一望する。
2年近く経っても変わらない、なんとも言い難い重く感じられる場所。
二度と足を踏み入れることはない。そう誓ったのに。
わたしを拐った男達は突然地面に跪き頭を下げた。
「姫様乱暴をお許しください。国王陛下がお待ちです」
「………」
返事はしなかった。
彼らは城の中ではわたしに乱暴な扱いは出来ないようだ。
無視してそのまま厩舎へと向かった。
「姫様!お待ちください」
慌てて追いかけて来た男を冷たく睨みつけた。
「わたくしの背中は貴方がたの剣の刃先で傷を負っております。貴方達を信用することはできませんわ」
「申し訳ございません」
彼らの顔が引き攣り青ざめているのが分かった。
たとえ陛下達に愛されていない『姫様』であっても傷をつけてしまった。
その代償を考えると甘くはないだろう。
ここに来てから気持ちが前世の『姫様』の頃に傾いているのが分かる。
両親に愛されたい。
誰かわたしを見て欲しい。
わたしの孤独な心に気がついて。
心が悲鳴を上げ始めた。
自由に暮らしたい、もうこの人たちに煩わされたくないと思っていたはずなのに、頭の中が霧がかかってしまったように、思考がぼんやりしてうまく考えられなくなってきた。
ただ、ルドルフに会いたい。
あの子は不思議なくらいわたしの心を落ち着かせてくれる。
誰かが突然わたしの肩を掴んだ。
歩いていた足が突然止まり、立ち止まらざるを得ない。
肩の痛みに「うっ」と声が漏れる。
ーー誰?
後ろに仕方なく視線を向ける。
何故貴方がここに?
ううん、居るのは仕方がない。
この時期だった。
わたしがこの人の国へと嫁いだのだ。
でも、わたしは去っていた。わたしの顔を知らないはずなのに。
彼と視線が絡み合った。わたしの肩を掴んで離そうとしないネルヴァン様。
何か言いたそうな顔をしているが声を発そうとしない。
わたしは彼の腕を強い力で振り払った。
「痛いわ!」
「あ……すまない」
「………」
彼のことをわたしも知っているのはおかしい。そう思い無視することにした。
わたしは以前この人に声をかけられ大きな声で叫んで彼から逃げ出した。
おかげであの時全ての記憶が戻った。
だから、彼からもこの城からも逃げ出したのに。また会うなんて。
さっさと聖女様であるオリビア様と結婚して出て行けばいいのに。
彼女は聖女様なんだから、ルワナ王国も災害など起こらず幸せに暮らせるはずだわ。
オリビア様ならリリア様のことを……うーん、多分毛嫌いして憎み、辛辣なことをしそうだけど。
リリア様って思い出すとよくわからない人だったな。
ただネルヴァン様のそばで柔らかな微笑みをたたえていた。
でも何を考えているのかよくわからない、ある意味不気味なひとだったな。
出来るだけ早歩きで厩舎へと向かった。
ネルヴァン様はこちらへ視線を向けてはいたけど、これ以上追ってはこないし声もかけてこなかった。
露骨に嫌な顔をして正解だった。
厩舎につくとルドルフがいた。
「ルドルフ!」
ルドルフに声をかけると近くにいた懐かしい顔のおじちゃん達がわたしの顔を見て跪いた。
「申し訳ありませんでした」
「おじちゃん達は城で雇われているのだから、上からの命令は聞かざるを得ないのはわかってるわ。だから謝らないで。わたしの方が勝手にルドルフを連れて出て行ったんだもの」
「ルドルフは姫様が大好きなんです。ですからついて行ったんです。この子は姫様のそばにいることが幸せなのですから」
「ええ、わたしも幸せなの。それを知ってて無理やりルドルフをこの城に連れて来させたのは国王陛下?」
「……陛下はずっと姫様を心配されておりました」
「わたしのことをない者として扱っていたくせに?」
ふざけないで。あの人から心配なんてしてもらいたくないわ。
「陛下はずっと探しておられました」
「わたしのことをまた利用しようと思っているのかしら?」
おじちゃん達に八つ当たりしても仕方がないのについ強い口調になってしまう。
「……ごめんなさい… ルドルフに乗りたいの、いいかしら?」
「もちろんです」
わたしはルドルフと馬場でのんびりと楽しんだ。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
「ネルヴァン殿下」
「俺は彼女に嫌われているようです」
「わしも娘に嫌われて顔すら合わせてもらえない」
「前世の記憶が戻った今、彼女に出来ることはずっと遠くから見守ってあげることだけなんだとわかっています」
「ああ、しかし、ソフィアがいなければ災いは止まらない、もう放っておくことは出来ない」
「でも彼女にもう一度俺と結婚するように強制することは難しいでしょう」
「それでもわしは国民を救うためにあの子を犠牲にするしかないんだ」
「俺は……」
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