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城。③
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「あら?この服装を見てわからないほど皆様、頭が悪いのかしら?」
皆が見せ物として笑う。わたしは平然と答えた。
「な、何を言ってるの?」
「だって、見ればわかるでしょう?馬の世話をするために作業着を着ているのよ?」
ふんっ!と鼻で笑ってやった。
「そんなことわかってるわ」
一人の令嬢が眉をひそめてジロジロわたしを見て、ハンカチで鼻を押さえた。
「なんだか臭くないかしら?」
「ほんとだわ」
「こんな汚らしいところで恥ずかしくないのかしら?」
「平民と変わらないわね?」
「やだあ、あんな風にはなりたくないわ」
「馬なんて汚らしい」
うーん……わたし、一応この国の姫なのに、なんて口の利き方なの?
わたしは大きく息を吸い、吐いてから淡々と話す。
「オリビア様が平民だったからなのか、やはりその友人も平民の知識しかないのかしら?
馬の世話をすれば匂いがあるのは当たり前のこと。人にも体臭はあるのよ?
そんな当たり前のことも知らないの?
それから……わたくしの体には本物の王族の血が流れています。
そのわたくしを馬鹿にするということは国王陛下を馬鹿にしているのと同じだとわからないのですか?今からその言葉、そのままを両陛下の前でも話してください。
わたくしが恥ずかしい人間だと、そして汚らしい馬に乗る人は恥ずかしいのだと」
まあ、どう見てもわたしの方が平民なんだけど。ここは、『血』の繋がりで強く出ておこう。
わたしは仕事の手を止めて、令嬢達とオリビア様を一瞥し、そのまま両陛下のいる王宮へと足を運んだ。
本当は会いたくもないし、内心怒ってもいない。
脅して厩舎にもう近寄らせないようにするためだ。
おずおずとついてくる彼女たち。
「ソフィア様……本気で陛下のところへ行かれるのですか?」
「そうよ、お父様はわたくしのことを大切にしてくださっているの。あなたが何を言ったって聞く耳を持たないわ」
オリビア様も少し焦っていた。
わたしが本気で陛下に会いにいこうとしているのをなんとかやめさせたいらしい。
力づくで止めることもできるはずだけど、厩舎でオリビア様たちの行動は実はたくさんの人たちの前で見られていた。
使用人や近衛騎士、それに数人の官僚や貴族もいた。
実は厩舎にはちょうど乗馬を楽しもうと、官僚や貴族が遊びに来ていたのだ。
わたしが歩き出した瞬間、彼女たちは少し離れて見えないところにいた貴族たちを見つけ、顔を真っ青にした。
たった今自分たちが話したこと、全てを大人たちに聞かれていたのだ。
それでもオリビア様は悪びれるわたしに文句を言いながら仕方なくついてきた。
「オリビア様は聖女様です。普通、友人たちの悪意のある言葉を窘めるものではないのですか?傍で聞いていて、共に妹であるわたくしを馬鹿にするのは人として、そして聖女様として、恥ずかしい行いだとは思いませんか?それをネルヴァン様が知ったらどう思われるでしょうね?」
前世のわたしは言い返したりしなかった。でも今のわたしは、嫌われようと愛されまいとどうでもいいから、思ったことを口にする。
城に戻り、初めて両陛下にお会いする。
作業着を着たままの姿で。なんの許可も得ず。
「陛下にお会いしたいの」
護衛騎士たちがわたしの姿に驚いてはいても誰も止めようとしない。
だって彼らはわたしと陛下を何度も対面させようとしていたのに、わたしがそれを拒否していたのだもの。
彼らはここに無理やり連れてはきたけど、無理やり対面させようとはしなかった。何度も頭を下げてきたけどわたしは強固に断り続けた。
本当に会いたければ、陛下が会いに来たらいい。それをしなかったのは本気で会いたかったわけではないから。
わたしが厩舎から離れないのも、今は気がすむまで放っておけばいいと思っていたからだと思う。
この城から逃げ出せないのだから好きにさせていたのだと。
だから今好きにさせてもらう。
陛下に会うのに許可など必要ない。
皆が見せ物として笑う。わたしは平然と答えた。
「な、何を言ってるの?」
「だって、見ればわかるでしょう?馬の世話をするために作業着を着ているのよ?」
ふんっ!と鼻で笑ってやった。
「そんなことわかってるわ」
一人の令嬢が眉をひそめてジロジロわたしを見て、ハンカチで鼻を押さえた。
「なんだか臭くないかしら?」
「ほんとだわ」
「こんな汚らしいところで恥ずかしくないのかしら?」
「平民と変わらないわね?」
「やだあ、あんな風にはなりたくないわ」
「馬なんて汚らしい」
うーん……わたし、一応この国の姫なのに、なんて口の利き方なの?
わたしは大きく息を吸い、吐いてから淡々と話す。
「オリビア様が平民だったからなのか、やはりその友人も平民の知識しかないのかしら?
馬の世話をすれば匂いがあるのは当たり前のこと。人にも体臭はあるのよ?
そんな当たり前のことも知らないの?
それから……わたくしの体には本物の王族の血が流れています。
そのわたくしを馬鹿にするということは国王陛下を馬鹿にしているのと同じだとわからないのですか?今からその言葉、そのままを両陛下の前でも話してください。
わたくしが恥ずかしい人間だと、そして汚らしい馬に乗る人は恥ずかしいのだと」
まあ、どう見てもわたしの方が平民なんだけど。ここは、『血』の繋がりで強く出ておこう。
わたしは仕事の手を止めて、令嬢達とオリビア様を一瞥し、そのまま両陛下のいる王宮へと足を運んだ。
本当は会いたくもないし、内心怒ってもいない。
脅して厩舎にもう近寄らせないようにするためだ。
おずおずとついてくる彼女たち。
「ソフィア様……本気で陛下のところへ行かれるのですか?」
「そうよ、お父様はわたくしのことを大切にしてくださっているの。あなたが何を言ったって聞く耳を持たないわ」
オリビア様も少し焦っていた。
わたしが本気で陛下に会いにいこうとしているのをなんとかやめさせたいらしい。
力づくで止めることもできるはずだけど、厩舎でオリビア様たちの行動は実はたくさんの人たちの前で見られていた。
使用人や近衛騎士、それに数人の官僚や貴族もいた。
実は厩舎にはちょうど乗馬を楽しもうと、官僚や貴族が遊びに来ていたのだ。
わたしが歩き出した瞬間、彼女たちは少し離れて見えないところにいた貴族たちを見つけ、顔を真っ青にした。
たった今自分たちが話したこと、全てを大人たちに聞かれていたのだ。
それでもオリビア様は悪びれるわたしに文句を言いながら仕方なくついてきた。
「オリビア様は聖女様です。普通、友人たちの悪意のある言葉を窘めるものではないのですか?傍で聞いていて、共に妹であるわたくしを馬鹿にするのは人として、そして聖女様として、恥ずかしい行いだとは思いませんか?それをネルヴァン様が知ったらどう思われるでしょうね?」
前世のわたしは言い返したりしなかった。でも今のわたしは、嫌われようと愛されまいとどうでもいいから、思ったことを口にする。
城に戻り、初めて両陛下にお会いする。
作業着を着たままの姿で。なんの許可も得ず。
「陛下にお会いしたいの」
護衛騎士たちがわたしの姿に驚いてはいても誰も止めようとしない。
だって彼らはわたしと陛下を何度も対面させようとしていたのに、わたしがそれを拒否していたのだもの。
彼らはここに無理やり連れてはきたけど、無理やり対面させようとはしなかった。何度も頭を下げてきたけどわたしは強固に断り続けた。
本当に会いたければ、陛下が会いに来たらいい。それをしなかったのは本気で会いたかったわけではないから。
わたしが厩舎から離れないのも、今は気がすむまで放っておけばいいと思っていたからだと思う。
この城から逃げ出せないのだから好きにさせていたのだと。
だから今好きにさせてもらう。
陛下に会うのに許可など必要ない。
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