31 / 39
城。③
しおりを挟む
「あら?この服装を見てわからないほど皆様、頭が悪いのかしら?」
皆が見せ物として笑う。わたしは平然と答えた。
「な、何を言ってるの?」
「だって、見ればわかるでしょう?馬の世話をするために作業着を着ているのよ?」
ふんっ!と鼻で笑ってやった。
「そんなことわかってるわ」
一人の令嬢が眉をひそめてジロジロわたしを見て、ハンカチで鼻を押さえた。
「なんだか臭くないかしら?」
「ほんとだわ」
「こんな汚らしいところで恥ずかしくないのかしら?」
「平民と変わらないわね?」
「やだあ、あんな風にはなりたくないわ」
「馬なんて汚らしい」
うーん……わたし、一応この国の姫なのに、なんて口の利き方なの?
わたしは大きく息を吸い、吐いてから淡々と話す。
「オリビア様が平民だったからなのか、やはりその友人も平民の知識しかないのかしら?
馬の世話をすれば匂いがあるのは当たり前のこと。人にも体臭はあるのよ?
そんな当たり前のことも知らないの?
それから……わたくしの体には本物の王族の血が流れています。
そのわたくしを馬鹿にするということは国王陛下を馬鹿にしているのと同じだとわからないのですか?今からその言葉、そのままを両陛下の前でも話してください。
わたくしが恥ずかしい人間だと、そして汚らしい馬に乗る人は恥ずかしいのだと」
まあ、どう見てもわたしの方が平民なんだけど。ここは、『血』の繋がりで強く出ておこう。
わたしは仕事の手を止めて、令嬢達とオリビア様を一瞥し、そのまま両陛下のいる王宮へと足を運んだ。
本当は会いたくもないし、内心怒ってもいない。
脅して厩舎にもう近寄らせないようにするためだ。
おずおずとついてくる彼女たち。
「ソフィア様……本気で陛下のところへ行かれるのですか?」
「そうよ、お父様はわたくしのことを大切にしてくださっているの。あなたが何を言ったって聞く耳を持たないわ」
オリビア様も少し焦っていた。
わたしが本気で陛下に会いにいこうとしているのをなんとかやめさせたいらしい。
力づくで止めることもできるはずだけど、厩舎でオリビア様たちの行動は実はたくさんの人たちの前で見られていた。
使用人や近衛騎士、それに数人の官僚や貴族もいた。
実は厩舎にはちょうど乗馬を楽しもうと、官僚や貴族が遊びに来ていたのだ。
わたしが歩き出した瞬間、彼女たちは少し離れて見えないところにいた貴族たちを見つけ、顔を真っ青にした。
たった今自分たちが話したこと、全てを大人たちに聞かれていたのだ。
それでもオリビア様は悪びれるわたしに文句を言いながら仕方なくついてきた。
「オリビア様は聖女様です。普通、友人たちの悪意のある言葉を窘めるものではないのですか?傍で聞いていて、共に妹であるわたくしを馬鹿にするのは人として、そして聖女様として、恥ずかしい行いだとは思いませんか?それをネルヴァン様が知ったらどう思われるでしょうね?」
前世のわたしは言い返したりしなかった。でも今のわたしは、嫌われようと愛されまいとどうでもいいから、思ったことを口にする。
城に戻り、初めて両陛下にお会いする。
作業着を着たままの姿で。なんの許可も得ず。
「陛下にお会いしたいの」
護衛騎士たちがわたしの姿に驚いてはいても誰も止めようとしない。
だって彼らはわたしと陛下を何度も対面させようとしていたのに、わたしがそれを拒否していたのだもの。
彼らはここに無理やり連れてはきたけど、無理やり対面させようとはしなかった。何度も頭を下げてきたけどわたしは強固に断り続けた。
本当に会いたければ、陛下が会いに来たらいい。それをしなかったのは本気で会いたかったわけではないから。
わたしが厩舎から離れないのも、今は気がすむまで放っておけばいいと思っていたからだと思う。
この城から逃げ出せないのだから好きにさせていたのだと。
だから今好きにさせてもらう。
陛下に会うのに許可など必要ない。
皆が見せ物として笑う。わたしは平然と答えた。
「な、何を言ってるの?」
「だって、見ればわかるでしょう?馬の世話をするために作業着を着ているのよ?」
ふんっ!と鼻で笑ってやった。
「そんなことわかってるわ」
一人の令嬢が眉をひそめてジロジロわたしを見て、ハンカチで鼻を押さえた。
「なんだか臭くないかしら?」
「ほんとだわ」
「こんな汚らしいところで恥ずかしくないのかしら?」
「平民と変わらないわね?」
「やだあ、あんな風にはなりたくないわ」
「馬なんて汚らしい」
うーん……わたし、一応この国の姫なのに、なんて口の利き方なの?
わたしは大きく息を吸い、吐いてから淡々と話す。
「オリビア様が平民だったからなのか、やはりその友人も平民の知識しかないのかしら?
馬の世話をすれば匂いがあるのは当たり前のこと。人にも体臭はあるのよ?
そんな当たり前のことも知らないの?
それから……わたくしの体には本物の王族の血が流れています。
そのわたくしを馬鹿にするということは国王陛下を馬鹿にしているのと同じだとわからないのですか?今からその言葉、そのままを両陛下の前でも話してください。
わたくしが恥ずかしい人間だと、そして汚らしい馬に乗る人は恥ずかしいのだと」
まあ、どう見てもわたしの方が平民なんだけど。ここは、『血』の繋がりで強く出ておこう。
わたしは仕事の手を止めて、令嬢達とオリビア様を一瞥し、そのまま両陛下のいる王宮へと足を運んだ。
本当は会いたくもないし、内心怒ってもいない。
脅して厩舎にもう近寄らせないようにするためだ。
おずおずとついてくる彼女たち。
「ソフィア様……本気で陛下のところへ行かれるのですか?」
「そうよ、お父様はわたくしのことを大切にしてくださっているの。あなたが何を言ったって聞く耳を持たないわ」
オリビア様も少し焦っていた。
わたしが本気で陛下に会いにいこうとしているのをなんとかやめさせたいらしい。
力づくで止めることもできるはずだけど、厩舎でオリビア様たちの行動は実はたくさんの人たちの前で見られていた。
使用人や近衛騎士、それに数人の官僚や貴族もいた。
実は厩舎にはちょうど乗馬を楽しもうと、官僚や貴族が遊びに来ていたのだ。
わたしが歩き出した瞬間、彼女たちは少し離れて見えないところにいた貴族たちを見つけ、顔を真っ青にした。
たった今自分たちが話したこと、全てを大人たちに聞かれていたのだ。
それでもオリビア様は悪びれるわたしに文句を言いながら仕方なくついてきた。
「オリビア様は聖女様です。普通、友人たちの悪意のある言葉を窘めるものではないのですか?傍で聞いていて、共に妹であるわたくしを馬鹿にするのは人として、そして聖女様として、恥ずかしい行いだとは思いませんか?それをネルヴァン様が知ったらどう思われるでしょうね?」
前世のわたしは言い返したりしなかった。でも今のわたしは、嫌われようと愛されまいとどうでもいいから、思ったことを口にする。
城に戻り、初めて両陛下にお会いする。
作業着を着たままの姿で。なんの許可も得ず。
「陛下にお会いしたいの」
護衛騎士たちがわたしの姿に驚いてはいても誰も止めようとしない。
だって彼らはわたしと陛下を何度も対面させようとしていたのに、わたしがそれを拒否していたのだもの。
彼らはここに無理やり連れてはきたけど、無理やり対面させようとはしなかった。何度も頭を下げてきたけどわたしは強固に断り続けた。
本当に会いたければ、陛下が会いに来たらいい。それをしなかったのは本気で会いたかったわけではないから。
わたしが厩舎から離れないのも、今は気がすむまで放っておけばいいと思っていたからだと思う。
この城から逃げ出せないのだから好きにさせていたのだと。
だから今好きにさせてもらう。
陛下に会うのに許可など必要ない。
789
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】元婚約者の次の婚約者は私の妹だそうです。ところでご存知ないでしょうが、妹は貴方の妹でもありますよ。
葉桜鹿乃
恋愛
あらぬ罪を着せられ婚約破棄を言い渡されたジュリア・スカーレット伯爵令嬢は、ある秘密を抱えていた。
それは、元婚約者モーガンが次の婚約者に望んだジュリアの妹マリアが、モーガンの実の妹でもある、という秘密だ。
本当ならば墓まで持っていくつもりだったが、ジュリアを婚約者にとモーガンの親友である第一王子フィリップが望んでくれた事で、ジュリアは真実を突きつける事を決める。
※エピローグにてひとまず完結ですが、疑問点があがっていた所や、具体的な姉妹に対する差など、サクサク読んでもらうのに削った所を(現在他作を書いているので不定期で)番外編で更新しますので、暫く連載中のままとさせていただきます。よろしくお願いします。
番外編に手が回らないため、一旦完結と致します。
(2021/02/07 02:00)
小説家になろう・カクヨムでも別名義にて連載を始めました。
恋愛及び全体1位ありがとうございます!
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)
王太子の愚行
よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。
彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。
婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。
さて、男爵令嬢をどうするか。
王太子の判断は?
『悪女と呼ばれた令嬢は、親友の幸せのために婚約者を捨てた』
由香
恋愛
婚約者である王太子を、親友のために手放した令嬢リュシエンヌ。
彼女はすべての非難を一身に受け、「悪女」と呼ばれる道を選ぶ。
真実を語らぬまま、親友である騎士カイルとも距離を置き、
ただ一人、守るべきものを守り抜いた。
それは、愛する人の未来のための選択。
誤解と孤独の果てで、彼女が手にした本当の結末とは――。
悪女と呼ばれた令嬢が、自ら選び取る静かな幸福の物語。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
婚約者に妹を紹介したら、美人な妹の方と婚約したかったと言われたので、譲ってあげることにいたしました
奏音 美都
恋愛
「こちら、妹のマリアンヌですわ」
妹を紹介した途端、私のご婚約者であるジェイコブ様の顔つきが変わったのを感じました。
「マリアンヌですわ。どうぞよろしくお願いいたします、お義兄様」
「ど、どうも……」
ジェイコブ様が瞳を大きくし、マリアンヌに見惚れています。ジェイコブ様が私をチラッと見て、おっしゃいました。
「リリーにこんな美しい妹がいたなんて、知らなかったよ。婚約するなら妹君の方としたかったなぁ、なんて……」
「分かりましたわ」
こうして私のご婚約者は、妹のご婚約者となったのでした。
一年だけの夫婦でも私は幸せでした。
クロユキ
恋愛
騎士のブライドと結婚をしたフローズンは夫がまだ婚約者だった姉を今でも想っている事を知っていた。
フローズンとブライドは政略結婚で結婚式当日にブライドの婚約者だった姉が姿を消してしまった。
フローズンは姉が戻るまでの一年の夫婦の生活が始まった。
更新が不定期です。誤字脱字がありますが宜しくお願いします。
ガネス公爵令嬢の変身
くびのほきょう
恋愛
1年前に現れたお父様と同じ赤い目をした美しいご令嬢。その令嬢に夢中な幼なじみの王子様に恋をしていたのだと気づいた公爵令嬢のお話。
※「小説家になろう」へも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる