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ネルヴァン編
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「ソフィア……いや、沙耶香……」
ルドルフとブライアンと楽しそうに過ごす彼女の姿を遠くから見つめる。
何度か声をかけるが、不快な顔をして俺と話す時、露骨に嫌な顔を隠そうとしない。
沙耶香が目の前でホームに落ちた。
近くにいたのは田所有紗だった。
彼女は俺の恋人。
沙耶香を捨てて俺は有紗と付き合い出した。気持ちが彼女に移ったわけではない。
有紗に初めて会った時に思い出したのだ。
有紗はオリビアだったことを。
有紗が俺に執着し始めた。
俺を沙耶香から引き離すために何をしでかすか分からない。
それはとても危険なことだった。
だから、沙耶香を守りたくて、沙耶香を捨てて有紗と付き合い出した。そうすれば有紗の自尊心を満たすことができると思った。
オリビアはソフィアの義姉でリシャ国の聖女。
リシャ国では国民に愛され慈しまれていた。
そして俺に……
ソフィアがわがままで傲慢、ろくな性格ではないと言った。
側妃であるリリアのことも虐めるであろう悪女だと何度も情報を与えてくれた。
政略結婚で仕方なく娶ったソフィア。
彼女との結婚式は簡素に終わらせた。寝所を共にすることも食事を一緒にすることも拒否して、政務だけを押し付けた。
そしてすぐに俺は幼馴染であるリリアを側妃として娶った。
元々彼女と結婚する予定だった。そこにソフィアが入り込んできたのだ。
俺は嫌いなソフィアに仕事を多く押し付け、リリアと幸せに暮らしていた。
だが国は、災難に何度か見舞われ、疲弊していった。これも全てソフィアのせいだ。
疫病神のような女、そうとしか思えなかった。
リシャ国から支援物資が届く。俺はそれを貴族に回し、国民にまで渡すことはしなかった。
貴族あっての王。
彼らへの優先的な配給は、反乱を防ぎ、統治体制を維持する上で重要だった。
真面目すぎるソフィアは融通が利かない。
『国民の命を守ることが一番大切です』
俺に対して従順なソフィアが唯一逆らうのは、国民を守ろうとする時だけ。
『貴族は国の上層部を構成しているんだ!彼らの支持や権威が社会全体の安定に不可欠だと思わないのか!』
『わかっております!でも国民は飢えているのです!ほんの少しでも民に分け与えるべきではないのですか?』
確かにリシャ国からの支援だけでは足りなくなってきた。国民の不満は王家へと向かっていた。
このままでは国が崩壊する。
臣下である貴族たちも何も与えてもらえなければ、表ではとりあえずいい顔をしているが、裏では王家を嘲笑していた。
だからリリアを連れて他国へ支援の要請をするために、混乱の国をソフィアに任せて逃げるように出た。
国王としての自覚もなく、面倒なことはソフィアに押し付け、俺はリリアと二人、外遊を楽しみながら、国際会議で国の惨状を訴えた。
それでもなんとか支援をすると言質をとり、少し遊んでから帰ろうと思った。
ゆっくり帰った頃には他国から支援物資も届きみんな行き渡っているだろう。
でも、国は反乱によってソフィアは処刑され、何も知らずに帰ってきた俺とリリアもまた処刑されることになった。
リリアはただソフィアへの恨みごとだけを叫びながら。
『あの女のせいだわ。あの女がこの国に嫁いで来なければ、この国もわたくしも不幸にならなかったのに!わたくしは王妃としてこの国の皆から仕えられ讃えられたはずなのに!』
『あんな女、殺されて当然だわ!でもわたくしは違う!皆から愛されるリリアなの。ねぇ、お願い。殺さないでちょうだい』
『殺すならネルヴァンだけでいいじゃない!彼はまともに政務もせず、遊んでばかりだったわ。無能な馬鹿な男なのよ?でもわたくしは違う。この国で最も美しく高貴な女性なの。新しい王のもとで精一杯尽くすわ』
新国王に向かって自分だけが命乞いをするリリア。
俺は何を間違えたのか?
新国王は言った。
『ネルヴァン殿、貴方は選ぶ女性を間違えましたな。ソフィア様ほど優秀でこの国のために尽くした女性はおりません。
心優しいあのお方をないがしろにして、無能で貪欲なリリア様を大切にした。それが貴方の間違いです。
そしてソフィア様も、そんな貴方を無償の愛で支えたのに、国民に捨てられ殺された。ソフィア様も馬鹿な人です。彼女がもう少し融通の利く性格ならば僕のそばでこき使って利用してやったのに』
ニヤリと笑う。
『ソフィア様は誰の手もつけられていない綺麗な体のままだった。あの美しい体を無理やりねじ伏せ暴くのも一興だったのに惜しいことをしました。
でも国民の憎悪を一人で全て受けてくれたありがたいお人でした。おかげで、僕は楽してこの国の頂点に立つことができました』
俺は処刑される時になってソフィアの本当の姿を知った。
健気で真面目で、この国の人間でもないのに一番この国を想い、働いてくれたことを。でもそれはあまりにも遅すぎた。
ルドルフとブライアンと楽しそうに過ごす彼女の姿を遠くから見つめる。
何度か声をかけるが、不快な顔をして俺と話す時、露骨に嫌な顔を隠そうとしない。
沙耶香が目の前でホームに落ちた。
近くにいたのは田所有紗だった。
彼女は俺の恋人。
沙耶香を捨てて俺は有紗と付き合い出した。気持ちが彼女に移ったわけではない。
有紗に初めて会った時に思い出したのだ。
有紗はオリビアだったことを。
有紗が俺に執着し始めた。
俺を沙耶香から引き離すために何をしでかすか分からない。
それはとても危険なことだった。
だから、沙耶香を守りたくて、沙耶香を捨てて有紗と付き合い出した。そうすれば有紗の自尊心を満たすことができると思った。
オリビアはソフィアの義姉でリシャ国の聖女。
リシャ国では国民に愛され慈しまれていた。
そして俺に……
ソフィアがわがままで傲慢、ろくな性格ではないと言った。
側妃であるリリアのことも虐めるであろう悪女だと何度も情報を与えてくれた。
政略結婚で仕方なく娶ったソフィア。
彼女との結婚式は簡素に終わらせた。寝所を共にすることも食事を一緒にすることも拒否して、政務だけを押し付けた。
そしてすぐに俺は幼馴染であるリリアを側妃として娶った。
元々彼女と結婚する予定だった。そこにソフィアが入り込んできたのだ。
俺は嫌いなソフィアに仕事を多く押し付け、リリアと幸せに暮らしていた。
だが国は、災難に何度か見舞われ、疲弊していった。これも全てソフィアのせいだ。
疫病神のような女、そうとしか思えなかった。
リシャ国から支援物資が届く。俺はそれを貴族に回し、国民にまで渡すことはしなかった。
貴族あっての王。
彼らへの優先的な配給は、反乱を防ぎ、統治体制を維持する上で重要だった。
真面目すぎるソフィアは融通が利かない。
『国民の命を守ることが一番大切です』
俺に対して従順なソフィアが唯一逆らうのは、国民を守ろうとする時だけ。
『貴族は国の上層部を構成しているんだ!彼らの支持や権威が社会全体の安定に不可欠だと思わないのか!』
『わかっております!でも国民は飢えているのです!ほんの少しでも民に分け与えるべきではないのですか?』
確かにリシャ国からの支援だけでは足りなくなってきた。国民の不満は王家へと向かっていた。
このままでは国が崩壊する。
臣下である貴族たちも何も与えてもらえなければ、表ではとりあえずいい顔をしているが、裏では王家を嘲笑していた。
だからリリアを連れて他国へ支援の要請をするために、混乱の国をソフィアに任せて逃げるように出た。
国王としての自覚もなく、面倒なことはソフィアに押し付け、俺はリリアと二人、外遊を楽しみながら、国際会議で国の惨状を訴えた。
それでもなんとか支援をすると言質をとり、少し遊んでから帰ろうと思った。
ゆっくり帰った頃には他国から支援物資も届きみんな行き渡っているだろう。
でも、国は反乱によってソフィアは処刑され、何も知らずに帰ってきた俺とリリアもまた処刑されることになった。
リリアはただソフィアへの恨みごとだけを叫びながら。
『あの女のせいだわ。あの女がこの国に嫁いで来なければ、この国もわたくしも不幸にならなかったのに!わたくしは王妃としてこの国の皆から仕えられ讃えられたはずなのに!』
『あんな女、殺されて当然だわ!でもわたくしは違う!皆から愛されるリリアなの。ねぇ、お願い。殺さないでちょうだい』
『殺すならネルヴァンだけでいいじゃない!彼はまともに政務もせず、遊んでばかりだったわ。無能な馬鹿な男なのよ?でもわたくしは違う。この国で最も美しく高貴な女性なの。新しい王のもとで精一杯尽くすわ』
新国王に向かって自分だけが命乞いをするリリア。
俺は何を間違えたのか?
新国王は言った。
『ネルヴァン殿、貴方は選ぶ女性を間違えましたな。ソフィア様ほど優秀でこの国のために尽くした女性はおりません。
心優しいあのお方をないがしろにして、無能で貪欲なリリア様を大切にした。それが貴方の間違いです。
そしてソフィア様も、そんな貴方を無償の愛で支えたのに、国民に捨てられ殺された。ソフィア様も馬鹿な人です。彼女がもう少し融通の利く性格ならば僕のそばでこき使って利用してやったのに』
ニヤリと笑う。
『ソフィア様は誰の手もつけられていない綺麗な体のままだった。あの美しい体を無理やりねじ伏せ暴くのも一興だったのに惜しいことをしました。
でも国民の憎悪を一人で全て受けてくれたありがたいお人でした。おかげで、僕は楽してこの国の頂点に立つことができました』
俺は処刑される時になってソフィアの本当の姿を知った。
健気で真面目で、この国の人間でもないのに一番この国を想い、働いてくれたことを。でもそれはあまりにも遅すぎた。
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