裏切られ殺されたわたし。生まれ変わったわたしは今度こそ幸せになりたい。

たろ

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しつこい男。

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 厩舎で過ごす毎日はルドルフたちのそばにいられるのでとても楽しい。

 でも最近……鬱陶しい男がたびたび現れる。

「申し訳ありませんが仕事の邪魔になるので帰っていただけませんか?」

 不機嫌さを隠そうともせず嫌な顔をして彼に言った。

「邪魔ではないだろう?君に仕事を与えてあげているんだ。乗馬をするから早めに馬の準備を頼むよ」

 おじちゃんの手伝いをしているのだから馬装具の準備もわたしの仕事だ。

 馬のブラッシングをして馬装具を装着する。

 彼の馬の名は『ブライアン』、とても賢い。そしてルドルフとも気が合うのかとても仲良しだ。

 この厩舎に来てからすぐに二頭は仲良くなった。

 馬場に放すと二頭は楽しそうに走っている。動物でも気が合う、合わないがあるみたい。

 ブライアンのことはもちろんわたしも大好きだ。でもネルヴァン様のことは前世の記憶のおかげで、嫌い……いや、大っ嫌いだ。

 以前のネルヴァン様はわたしに興味すらなかった。
 わたしに政務を押し付け、自分は側妃である愛するリリア様と仲睦まじく過ごされていた。

 表立っての仕事は二人でこなされていた。わたしはいつも雑務や政務に追われ、ゆっくりと寝る暇もなかった。

 それでも国民のため、夫を支えるためだと自分に言い聞かせていた。

 そう思わなければ自分の心を支えることが出来なかった。


「君、遅いぞ。早く用意してくれ」

 確かに考え事をして手が止まっていた。
 彼は他国の王子様。

「申し訳ございません。ですがあまり急かされると、装具が緩んで事故の原因になっては困ります。丁寧に準備をさせてください。貴方の身体はとても大切なのですから」
(わたしと違って!わたしは死んでも構わないでしょうけど)

 ふんっ!と無視して時間をかけてゆっくりと装具をつけた。

 彼は近くでそんなわたしの姿を見ていた。
 何が楽しいのかわたしに向かって笑みを浮かべている。

 憎らしい。今世では絶対貴方に嫁いだりしないわ。
 オリビア様とリリア様と3人仲良く幸せに暮らせばいいのよ!



「準備が出来ました」

 後ろを振り向いて冷たい視線を彼の方へ向けた。

「じゃあ馬場までよろしく頼むよ」

「畏まりました」

 ブライアンの手綱を持って歩いた。

 ネルヴァン様もわたしの隣について来た。

 だったら自分で行けばいいのに。

「君さ、」
「わたしは君ではありませんわ。ソフィという名があります」

「違うよね?ソフィア・リシャだろう?」

「いいえ、ソフィです。その名は随分前に捨てました。わたしの名前はただのソフィ。
 殿下もいい加減にわたしに構わずに、大好きなリリア様のところへお帰りになられてはいかがですか?」

「君、リリアを知っているのか?」

「お噂で聞いておりますわ。殿下の大切な幼馴染で想い人なのでしょう?」

「ふうん、こんな小さな国にまで話が聞こえてるのか?」

「ええ、お二人は愛し合っているのでしょう?それでも、この国と縁を結ばなければならないのなら、貴方を慕っている聖女様であるオリビア様を娶られればよいのではないでしょうか?」

 わたしは絶対いや、御免だわ。

「俺は君がいい。君を娶りたいんだ」

「わたしはもう姫ではありません。ただの平民のソフィです。貴方なんか大っ嫌いです」

「君の体には王族の血が流れているんだろう?そうオリビア姫や令嬢達に啖呵を切ったはずだが?」

「ああ、確かに……この血を全てこの体から抜いて、新しい血と入れ替えたいのですが、死にたくはないですから諦めております」

?」

「聞き違いでしょう?」

 わたしは無視して馬場に着くと「どうぞごゆっくりお楽しみください」と頭を下げて厩舎へと戻った。

 もう関わらないでほしい。

 ネルヴァン様のそばにいると、どんなに強気でいようと思っても、あの裏切られた時の絶望感を思い出し、手が震えてしまう。




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