裏切られ殺されたわたし。生まれ変わったわたしは今度こそ幸せになりたい。

たろ

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ネルヴァン編。②

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 沙耶香との付き合いはとても穏やかで幸せだった。

 このままいずれは結婚するだろうと思っていた。

 有紗と出会うまでは。

 沙耶香がデートの待ち合わせの場所に連れて来たのが有紗だった。

 相談があると俺も有紗の話を聞き二人でアドバイスをした。

 そしてその後、三人で食事をして有紗を同じ方向だからと俺が送ることになった。

 躓きそうになった有紗。

「きゃっ、ごめんなさい」

 ふらっとしたと思ったら彼女の手が何気なく俺の腕に触れた。

「……ああ」

 大丈夫か?と聞くどころか俺の頭の中に走馬灯のように記憶が次々と蘇ってきた。

 黙ったまま二人で歩く。その間、生汗が出てきた。

 気持ちが悪い。この女は俺に何度も嘘ばかりを告げたオリビアだ。

 そして俺は……ソフィアを裏切り死なせたネルヴァン。

 ソフィアは……沙耶香だ。

 なぜか記憶を取り戻した瞬間、沙耶香に惹かれた理由に納得した。

 一目惚れだった。ずっと沙耶香から目が離せず、彼女へすぐにアプローチした。やっと付き合えた。

 愛していた。ずっとずっと幸せが続くと思っていた。

 だけど、記憶を取り戻した瞬間、不安だけが押し寄せて来た。嫌な予感がする。有紗を見張らなければと思った。


 沙耶香になんと説明をすればいい?

 お前の命が危ないかもしれない。俺はお前を守るためにお前から離れる。

 有紗を好きなふりをして彼女の様子を伺うことにした。

 信じてもらえるわけがない。

 前世の記憶があるのは俺だけだ。いや、もしかしたら有紗にもあるのかも。
 そして有紗のそばにいるとオリビアの気配だけではなく、リリアの気配もした。

 幼馴染で愛していたリリア。
 しかし彼女もまた俺を裏切っていた。

 有紗からリリアとオリビアの二人の気配を感じた。


 別れてからの沙耶香が気になる。

 だから有紗と約束のない休日。
 沙耶香の家の近くで彼女に会えないかとウロウロしていた。

 ただの不審者だなと自分でも思う。

 でも会いたい。ずっと忘れられない。

 一目だけでも会えれば、苦痛な有紗と過ごす時間も耐えられる。

 自分勝手だとわかっていても会いたかった。


 

 彼女の家の鍵はまだ返していない。
 だけど勝手に鍵を使うわけにはいかない。それでもオートロックを開けて、マンションに入り、彼女の玄関の前に立ってしまった。

 突然扉が開いた。

「…………なんであんたがここにいるの?」
 冷たい目が俺の心を凍らせる。

「うん?」

 心の中では動揺しているのに、なんとか淡々と見えるように言った。

 沙耶香は怒っているのだろう、睨まれた。

「有紗が君のことを心配だって言うから、ちょっと見にきた」

「元気よ。じゃあね」

 無視して去って行こうとする沙耶香の手首を掴んだ。

「待って」

「触らないで!気持ち悪い!!」

 大きな声で振り払われた。

 ショックで驚き、唇を噛み締めた。

「貴方とわたしはもうとっくの昔に別れたの!貴方と話すことなんてないし、会いたくもない」

 沙耶香の無表情で冷たい言葉。

 沙耶香は玄関の鍵を閉めてすぐにエレベーターへ向かった。

 俺はそんな姿を見送るしか出来なかった。

 それでも俺は有紗とできるだけ共に時間を過ごした。

 沙耶香に何かするのではないかと不安だったから。

 愛してもいない女を抱くことは義務でしかない。

 もう元には戻れない。沙耶香を愛する資格なんてなくなった。

 いや、最初からなかったんだ。

 俺がソフィアを見殺しにした時から。冷遇した時から。


 そして、また、あの前世と同じ時に戻ってしまった。


 今回はソフィアやオリビアに出会う少し前に記憶が戻っていた。

 今生ではソフィアを見守りながらも、近くにいる時は嫌われるような行動を取ることにした。

 オリビアと親しくして、オリビアと結婚するつもりだ。

 リシャ国の国王もまた記憶を持っていた。
 彼はソフィアのことを娘として大切に思ってはいても、国を選んだ。

 国王としては当たり前のこと。

 だけど俺はオリビアとリリアと共に破滅の道を選ぶ。

 ソフィアには今度こそ幸せになってほしい。

 ソフィアにもう二度と負担はかけない。

 自分達が支え守れないのなら破滅も仕方がない。彼女ひとりに負わせてしまうことではない。

 だけど、ソフィアと話すこの時間がとても愛おしく楽しい。

 今だけのほんの束の間の幸せを噛みしめた。








 
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