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第6話「盾のない騎士」
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路地裏では、ありふれたパーティ追放劇が繰り広げられていた。
「何度言ったらわかるんだ! お前みたいにトロい騎士は邪魔なんだよ!」
怒鳴り声を上げているのは、軽装の剣士だ。その背後には魔法使いらしき男と、僧侶の女がいる。 怒鳴られているのは、ボロボロの金属鎧をまとった女だった。 背が高い。女にしては肩幅も広く、体格が良い。だが、その顔は悔しさと情けなさで歪んでいた。
「で、ですが……私は前衛として、皆を守ろうと……」
「守れてねえんだよ! 攻撃を全部身体で受けてどうする! 回復魔法の無駄遣いなんだよ!」
「それは……避けようとしても、体が……」
「言い訳はいい。今日限りでクビだ。装備は置いていけ。それはパーティの共有資産で買ったものだからな」
男たちは女から剣と盾を奪い取ると、唾を吐き捨てて去っていった。 残されたのは、インナーと薄汚れた鎧だけの女騎士。 彼女は壁に背を預け、ずるずると座り込んだ。
「ひどい……」
隣で見ていたリーナが眉をひそめる。 だが、俺の感想は違った。 俺は【鑑定】を発動し、うなだれる女騎士のステータスを覗き見る。
【名前:サラ】
【種族:ヒューマン】
【職業:騎士】
【HP:2500/2500】
【スキル:挑発、苦痛耐性、自己治癒(微)】
【特記事項:敏捷性が極端に低いが、頑強さは異常値】
HP2500。 俺のHPが現在400程度、エルフのリーナが250程度だ。 この女の体力は桁が違う。 敏捷性が低いために回避行動が取れず、攻撃を食らい続けているようだが、そもそもこのHPなら避ける必要がない。 前のパーティは、彼女の使い方を間違えていた。あるいは、彼女の耐久力に見合う防具を用意できなかったかだ。
「拾い物だな」
俺は呟き、路地裏へと足を踏み入れる。
「マスター?」
「行くぞ、リーナ。新しい盾の調達だ」
俺はサラの前に立つ。 彼女は虚ろな目で俺を見上げた。赤い髪が汗で額に張り付いている。
「……何? 笑いに来たの?」
「仕事を探しているのか」
俺は単刀直入に聞いた。 サラは自嘲気味に笑う。
「見てたんでしょ。私はクビになったの。動きが遅すぎて、ただ攻撃を受けるだけのサンドバッグだって」
「それがいいんだ」
「は?」
「チョロチョロと動き回る前衛はいらない。俺が欲しいのは、敵の足元に杭のように突き刺さり、一歩も引かずに攻撃を受け止める壁だ」
俺の言葉に、サラは怪訝な顔をする。
「壁って……。装備もないのよ? こんなガラクタ鎧じゃ、ゴブリンの攻撃だって痛いわ」
「装備なら俺が用意する。お前はただ、そこに立って敵のヘイトを集めればいい」
俺はインベントリから、金貨が入った革袋を取り出し、彼女の目の前で振ってみせた。 ジャラジャラという音が響く。 サラの目が釘付けになる。
「俺のパーティに入れ。衣食住と最強の防具は保証する。その代わり、俺の命令には絶対服従だ。死ぬまで盾として使い潰すかもしれんがな」
「……本気、なの?」
「俺は効率主義だ。お前のその無駄に高い体力と『苦痛耐性』は、俺の戦術に合致している」
サラはふらりと立ち上がった。 俺よりも頭一つ分背が高い。見事な体躯だ。
「……いいわ。どうせ行くあてもない。私を必要としてくれるなら、なんだってやる。壁でもサンドバッグでもなってやるわよ」
「契約成立だな」
俺は手を差し出す。 サラはその手を強く握り返してきた。手には無数のマメがあり、剣士の手というよりは労働者の手のようにゴツゴツしていた。
「名前はサラよ」
「俺はカズヤ。こっちはリーナだ」
「よろしくね、サラさん。一緒に頑張りましょう」
リーナが微笑みかけるが、サラはまだ自身の境遇を卑下しているのか、ぎこちなく頷くだけだった。
「まずは装備を整える。武器屋へ行くぞ」
俺たちはメインストリートへ戻った。 武器屋に入り、サラの体格に合う大剣と、全身を覆うフルプレートアーマーを購入する。店売りの品なので性能はそこそこだが、つなぎとしては十分だ。 サラは新品の鎧に袖を通し、重そうな大剣を軽々と持ち上げた。
「すごい……こんな高い装備、本当にいいの?」
「投資だ。きっちり働いて返してもらう」
俺は店主に金を払いながら、次の目的地のことを考えていた。 物理耐性の高い敵が出る場所。 サラの「頑丈さ」を試し、かつ彼女のための真の装備――ドロップ品を手に入れるための狩り場だ。
「サラ、お前の初仕事が決まった」
「早いわね。どこへ行くの?」
「『岩石の迷宮』だ。ゴーレムを狩る」
その言葉に、店主とサラが同時に動きを止めた。 岩石の迷宮は、物理攻撃が効きにくいゴーレムが巣食う難所だ。生半可な武器では傷一つつけることすらできない。
「ゴーレム!? 私の剣じゃ歯が立たないわよ!」
「お前は倒さなくていい。耐えるだけでいいと言ったはずだ」
俺は店の外に出る。 ゴーレムは硬い。だが、どんなに硬い物質にも『構造上の弱点』は存在する。 そして俺には、それが見える。 さらに、そこにはレアモンスター『ミスリルゴーレム』が出ると聞く。奴が落とすドロップ品こそが、俺がサラに用意したい『本命』だ。
「行くぞ。俺たちの快進撃の始まりだ」
俺は振り返らずに歩き出す。 不安そうなサラの背中を、リーナが押しているのが気配でわかった。 役者は揃いつつある。 次は、この「盾」を最強の硬度に鍛え上げる番だ。
「何度言ったらわかるんだ! お前みたいにトロい騎士は邪魔なんだよ!」
怒鳴り声を上げているのは、軽装の剣士だ。その背後には魔法使いらしき男と、僧侶の女がいる。 怒鳴られているのは、ボロボロの金属鎧をまとった女だった。 背が高い。女にしては肩幅も広く、体格が良い。だが、その顔は悔しさと情けなさで歪んでいた。
「で、ですが……私は前衛として、皆を守ろうと……」
「守れてねえんだよ! 攻撃を全部身体で受けてどうする! 回復魔法の無駄遣いなんだよ!」
「それは……避けようとしても、体が……」
「言い訳はいい。今日限りでクビだ。装備は置いていけ。それはパーティの共有資産で買ったものだからな」
男たちは女から剣と盾を奪い取ると、唾を吐き捨てて去っていった。 残されたのは、インナーと薄汚れた鎧だけの女騎士。 彼女は壁に背を預け、ずるずると座り込んだ。
「ひどい……」
隣で見ていたリーナが眉をひそめる。 だが、俺の感想は違った。 俺は【鑑定】を発動し、うなだれる女騎士のステータスを覗き見る。
【名前:サラ】
【種族:ヒューマン】
【職業:騎士】
【HP:2500/2500】
【スキル:挑発、苦痛耐性、自己治癒(微)】
【特記事項:敏捷性が極端に低いが、頑強さは異常値】
HP2500。 俺のHPが現在400程度、エルフのリーナが250程度だ。 この女の体力は桁が違う。 敏捷性が低いために回避行動が取れず、攻撃を食らい続けているようだが、そもそもこのHPなら避ける必要がない。 前のパーティは、彼女の使い方を間違えていた。あるいは、彼女の耐久力に見合う防具を用意できなかったかだ。
「拾い物だな」
俺は呟き、路地裏へと足を踏み入れる。
「マスター?」
「行くぞ、リーナ。新しい盾の調達だ」
俺はサラの前に立つ。 彼女は虚ろな目で俺を見上げた。赤い髪が汗で額に張り付いている。
「……何? 笑いに来たの?」
「仕事を探しているのか」
俺は単刀直入に聞いた。 サラは自嘲気味に笑う。
「見てたんでしょ。私はクビになったの。動きが遅すぎて、ただ攻撃を受けるだけのサンドバッグだって」
「それがいいんだ」
「は?」
「チョロチョロと動き回る前衛はいらない。俺が欲しいのは、敵の足元に杭のように突き刺さり、一歩も引かずに攻撃を受け止める壁だ」
俺の言葉に、サラは怪訝な顔をする。
「壁って……。装備もないのよ? こんなガラクタ鎧じゃ、ゴブリンの攻撃だって痛いわ」
「装備なら俺が用意する。お前はただ、そこに立って敵のヘイトを集めればいい」
俺はインベントリから、金貨が入った革袋を取り出し、彼女の目の前で振ってみせた。 ジャラジャラという音が響く。 サラの目が釘付けになる。
「俺のパーティに入れ。衣食住と最強の防具は保証する。その代わり、俺の命令には絶対服従だ。死ぬまで盾として使い潰すかもしれんがな」
「……本気、なの?」
「俺は効率主義だ。お前のその無駄に高い体力と『苦痛耐性』は、俺の戦術に合致している」
サラはふらりと立ち上がった。 俺よりも頭一つ分背が高い。見事な体躯だ。
「……いいわ。どうせ行くあてもない。私を必要としてくれるなら、なんだってやる。壁でもサンドバッグでもなってやるわよ」
「契約成立だな」
俺は手を差し出す。 サラはその手を強く握り返してきた。手には無数のマメがあり、剣士の手というよりは労働者の手のようにゴツゴツしていた。
「名前はサラよ」
「俺はカズヤ。こっちはリーナだ」
「よろしくね、サラさん。一緒に頑張りましょう」
リーナが微笑みかけるが、サラはまだ自身の境遇を卑下しているのか、ぎこちなく頷くだけだった。
「まずは装備を整える。武器屋へ行くぞ」
俺たちはメインストリートへ戻った。 武器屋に入り、サラの体格に合う大剣と、全身を覆うフルプレートアーマーを購入する。店売りの品なので性能はそこそこだが、つなぎとしては十分だ。 サラは新品の鎧に袖を通し、重そうな大剣を軽々と持ち上げた。
「すごい……こんな高い装備、本当にいいの?」
「投資だ。きっちり働いて返してもらう」
俺は店主に金を払いながら、次の目的地のことを考えていた。 物理耐性の高い敵が出る場所。 サラの「頑丈さ」を試し、かつ彼女のための真の装備――ドロップ品を手に入れるための狩り場だ。
「サラ、お前の初仕事が決まった」
「早いわね。どこへ行くの?」
「『岩石の迷宮』だ。ゴーレムを狩る」
その言葉に、店主とサラが同時に動きを止めた。 岩石の迷宮は、物理攻撃が効きにくいゴーレムが巣食う難所だ。生半可な武器では傷一つつけることすらできない。
「ゴーレム!? 私の剣じゃ歯が立たないわよ!」
「お前は倒さなくていい。耐えるだけでいいと言ったはずだ」
俺は店の外に出る。 ゴーレムは硬い。だが、どんなに硬い物質にも『構造上の弱点』は存在する。 そして俺には、それが見える。 さらに、そこにはレアモンスター『ミスリルゴーレム』が出ると聞く。奴が落とすドロップ品こそが、俺がサラに用意したい『本命』だ。
「行くぞ。俺たちの快進撃の始まりだ」
俺は振り返らずに歩き出す。 不安そうなサラの背中を、リーナが押しているのが気配でわかった。 役者は揃いつつある。 次は、この「盾」を最強の硬度に鍛え上げる番だ。
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