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第5話「冒険者ギルドと換金」
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城壁に囲まれた都市、アルディア。 門番による簡易的な検問を終え、俺たちは街の中へと足を踏み入れた。石畳の道路に、木骨造りの建物が並ぶ。活気はあるが、俺の興味を引くものは特にない。 道行く人々が、俺の隣を歩くリーナを見て振り返る。エルフという種族が珍しいのか、それとも彼女の容姿が優れているからか。どちらでもいい。
「マスター、まずはどこへ?」
「冒険者ギルドだ。身分証がないと宿にも泊まれないし、何よりこの荷物を金に換えなきゃならない」
俺はインベントリ代わりの麻袋を肩に担ぎ直す。 ここに来るまでに狩った雑魚魔物の素材と、バジリスクの素材が入っている。かなりの重量だが、『剛力の腕輪』のおかげで重さは感じない。
街の中心部にある大きな建物。剣と盾が交差した看板が掲げられている。冒険者ギルドだ。 重厚な扉を押し開けて中に入ると、喧騒と酒の匂いが押し寄せてきた。 昼間だというのに、併設された酒場では荒くれ者たちがジョッキを傾けている。
俺たちの入場に気づいた数人が視線を向けてくるが、すぐに興味を失ってそれぞれの会話に戻った。俺のような見た目が平凡な男と、装備の整っていないエルフの組み合わせなど、取るに足らないと思われたのだろう。
俺は真っ直ぐに受付カウンターへと向かう。 窓口には制服を着た若い女性職員が座っていた。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「冒険者登録をしたい。それと、素材の買取だ」
「かしこまりました。登録には銀貨一枚かかりますが」
俺は道中の盗賊から『ドロップ』させた財布から、銀貨を取り出して置く。 手続きは事務的だった。名前と年齢、職業(クラス)を申告し、魔道具に手をかざしてステータスの簡易チェックを受ける。 俺の職業は『剣士』、リーナは『射手』として登録された。ランクは当然、最低のFランクからだ。
「では、買取の品はこちらのトレイにお願いします」
職員が大きな木製のトレイをカウンターに出す。 俺は担いでいた袋を逆さにし、中身をぶちまけた。
ゴロゴロと音を立てて素材が転がり出る。 ウルフの毛皮、ホーンラビットの角、怪鳥のくちばし。 そして最後に、異様な存在感を放つ黒光りした皮と、鋭利な牙がこぼれ落ちた。
「……え?」
職員の動きが止まる。 彼女は黒い皮を手に取り、まじまじと見つめた後、震える声で言った。
「こ、これは……バジリスクの皮ですか? それに、この牙も……」
「森で拾った」
俺は適当に答える。 職員は慌てて奥の扉に向かって叫んだ。
「鑑定士の方! 至急お願いします! 高ランク素材の持ち込みです!」
ギルド内がざわつく。 すぐに奥から眼鏡をかけた初老の男が出てきて、カウンターの素材を検分し始めた。 男はルーペを取り出し、バジリスクの皮を舐めるように観察する。そして、信じられないものを見るように唸り声を上げた。
「なんという……」
「どうなんですか、爺さん」
「完璧だ……。傷一つない。剥ぎ取った形跡すら見当たらん。まるで最初から『皮』という状態でそこに存在していたかのような……」
当然だ。 俺が手に入れたのは、死体から剥ぎ取ったものではなく、システムが生成した『ドロップアイテム』としての皮だ。不純物もなければ、切り損じもない。データとして出力された最高品質の素材そのものだ。
「それに、この魔力残存量。新鮮なんてもんじゃない。ついさっき倒されたばかりのようだが、血の汚れも一切ない。一体どうやって……」
「買取額はいくらになる」
俺は男の疑問を遮った。 説明する義務はないし、理解させる必要もない。
「あ、ああ、すまん。……これほどの完品は見たことがない。加工の手間が省けるどころか、最高級の防具が作れるだろう。通常の相場の三倍……いや、五倍は出せる」
鑑定士が提示した金額は、金貨五十枚だった。 周囲の冒険者たちが息を飲む音が聞こえる。Fランクの初心者が手にする額ではない。 普通の暮らしなら数年は遊んで暮らせる大金だ。
「交渉成立だ」
俺は即答する。 職員が震える手で革袋に入った金貨を数え、俺に渡してきた。 ずしりとした重み。 これが、この世界での俺の力だ。
「行こう、リーナ」
「は、はい! さすがです、マスター……」
リーナが感嘆のため息を漏らしながらついてくる。 周囲の視線が変わっていた。 侮蔑や無関心ではない。畏怖と、嫉妬と、値踏みするような視線。 だが、誰も声をかけてこようとはしない。バジリスクを狩り、無傷で素材を持ち帰る実力者を前にして、うかつに手を出せる馬鹿はいなかった。
俺はギルドを出る。 懐には大量の資金。左手には攻撃力を底上げする腕輪。腰には石化の魔眼。 準備は整った。 次は、パーティの防御面を固める番だ。
「リーナ、この街で一番いい宿を取るぞ。その後は装備の買い出しだ」
「はい! ……あの、私の弓も、買っていただけるんでしょうか」
「当然だ。戦力が下がれば効率が落ちる」
俺たちは街の目抜き通りへと歩き出す。 その途中、路地裏から怒鳴り声が聞こえてきた。
「役立たずが! お前のようなノロマは追放だ!」
「ま、待ってください! 私はまだ……」
よく通る、だが悲痛な女の声。 俺は足を止めた。 何かを感じたわけではない。ただ、その声の主が『女騎士』のような格好をしていたのが目に入ったからだ。 そして、俺の【鑑定】が、彼女の隠された価値を捉えていた。
あれは、使えるかもしれない。 俺は口元をわずかに歪め、その騒ぎの方へと足を向けた。
「マスター、まずはどこへ?」
「冒険者ギルドだ。身分証がないと宿にも泊まれないし、何よりこの荷物を金に換えなきゃならない」
俺はインベントリ代わりの麻袋を肩に担ぎ直す。 ここに来るまでに狩った雑魚魔物の素材と、バジリスクの素材が入っている。かなりの重量だが、『剛力の腕輪』のおかげで重さは感じない。
街の中心部にある大きな建物。剣と盾が交差した看板が掲げられている。冒険者ギルドだ。 重厚な扉を押し開けて中に入ると、喧騒と酒の匂いが押し寄せてきた。 昼間だというのに、併設された酒場では荒くれ者たちがジョッキを傾けている。
俺たちの入場に気づいた数人が視線を向けてくるが、すぐに興味を失ってそれぞれの会話に戻った。俺のような見た目が平凡な男と、装備の整っていないエルフの組み合わせなど、取るに足らないと思われたのだろう。
俺は真っ直ぐに受付カウンターへと向かう。 窓口には制服を着た若い女性職員が座っていた。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「冒険者登録をしたい。それと、素材の買取だ」
「かしこまりました。登録には銀貨一枚かかりますが」
俺は道中の盗賊から『ドロップ』させた財布から、銀貨を取り出して置く。 手続きは事務的だった。名前と年齢、職業(クラス)を申告し、魔道具に手をかざしてステータスの簡易チェックを受ける。 俺の職業は『剣士』、リーナは『射手』として登録された。ランクは当然、最低のFランクからだ。
「では、買取の品はこちらのトレイにお願いします」
職員が大きな木製のトレイをカウンターに出す。 俺は担いでいた袋を逆さにし、中身をぶちまけた。
ゴロゴロと音を立てて素材が転がり出る。 ウルフの毛皮、ホーンラビットの角、怪鳥のくちばし。 そして最後に、異様な存在感を放つ黒光りした皮と、鋭利な牙がこぼれ落ちた。
「……え?」
職員の動きが止まる。 彼女は黒い皮を手に取り、まじまじと見つめた後、震える声で言った。
「こ、これは……バジリスクの皮ですか? それに、この牙も……」
「森で拾った」
俺は適当に答える。 職員は慌てて奥の扉に向かって叫んだ。
「鑑定士の方! 至急お願いします! 高ランク素材の持ち込みです!」
ギルド内がざわつく。 すぐに奥から眼鏡をかけた初老の男が出てきて、カウンターの素材を検分し始めた。 男はルーペを取り出し、バジリスクの皮を舐めるように観察する。そして、信じられないものを見るように唸り声を上げた。
「なんという……」
「どうなんですか、爺さん」
「完璧だ……。傷一つない。剥ぎ取った形跡すら見当たらん。まるで最初から『皮』という状態でそこに存在していたかのような……」
当然だ。 俺が手に入れたのは、死体から剥ぎ取ったものではなく、システムが生成した『ドロップアイテム』としての皮だ。不純物もなければ、切り損じもない。データとして出力された最高品質の素材そのものだ。
「それに、この魔力残存量。新鮮なんてもんじゃない。ついさっき倒されたばかりのようだが、血の汚れも一切ない。一体どうやって……」
「買取額はいくらになる」
俺は男の疑問を遮った。 説明する義務はないし、理解させる必要もない。
「あ、ああ、すまん。……これほどの完品は見たことがない。加工の手間が省けるどころか、最高級の防具が作れるだろう。通常の相場の三倍……いや、五倍は出せる」
鑑定士が提示した金額は、金貨五十枚だった。 周囲の冒険者たちが息を飲む音が聞こえる。Fランクの初心者が手にする額ではない。 普通の暮らしなら数年は遊んで暮らせる大金だ。
「交渉成立だ」
俺は即答する。 職員が震える手で革袋に入った金貨を数え、俺に渡してきた。 ずしりとした重み。 これが、この世界での俺の力だ。
「行こう、リーナ」
「は、はい! さすがです、マスター……」
リーナが感嘆のため息を漏らしながらついてくる。 周囲の視線が変わっていた。 侮蔑や無関心ではない。畏怖と、嫉妬と、値踏みするような視線。 だが、誰も声をかけてこようとはしない。バジリスクを狩り、無傷で素材を持ち帰る実力者を前にして、うかつに手を出せる馬鹿はいなかった。
俺はギルドを出る。 懐には大量の資金。左手には攻撃力を底上げする腕輪。腰には石化の魔眼。 準備は整った。 次は、パーティの防御面を固める番だ。
「リーナ、この街で一番いい宿を取るぞ。その後は装備の買い出しだ」
「はい! ……あの、私の弓も、買っていただけるんでしょうか」
「当然だ。戦力が下がれば効率が落ちる」
俺たちは街の目抜き通りへと歩き出す。 その途中、路地裏から怒鳴り声が聞こえてきた。
「役立たずが! お前のようなノロマは追放だ!」
「ま、待ってください! 私はまだ……」
よく通る、だが悲痛な女の声。 俺は足を止めた。 何かを感じたわけではない。ただ、その声の主が『女騎士』のような格好をしていたのが目に入ったからだ。 そして、俺の【鑑定】が、彼女の隠された価値を捉えていた。
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