5 / 25
第5話「冒険者ギルドと換金」
しおりを挟む
城壁に囲まれた都市、アルディア。 門番による簡易的な検問を終え、俺たちは街の中へと足を踏み入れた。石畳の道路に、木骨造りの建物が並ぶ。活気はあるが、俺の興味を引くものは特にない。 道行く人々が、俺の隣を歩くリーナを見て振り返る。エルフという種族が珍しいのか、それとも彼女の容姿が優れているからか。どちらでもいい。
「マスター、まずはどこへ?」
「冒険者ギルドだ。身分証がないと宿にも泊まれないし、何よりこの荷物を金に換えなきゃならない」
俺はインベントリ代わりの麻袋を肩に担ぎ直す。 ここに来るまでに狩った雑魚魔物の素材と、バジリスクの素材が入っている。かなりの重量だが、『剛力の腕輪』のおかげで重さは感じない。
街の中心部にある大きな建物。剣と盾が交差した看板が掲げられている。冒険者ギルドだ。 重厚な扉を押し開けて中に入ると、喧騒と酒の匂いが押し寄せてきた。 昼間だというのに、併設された酒場では荒くれ者たちがジョッキを傾けている。
俺たちの入場に気づいた数人が視線を向けてくるが、すぐに興味を失ってそれぞれの会話に戻った。俺のような見た目が平凡な男と、装備の整っていないエルフの組み合わせなど、取るに足らないと思われたのだろう。
俺は真っ直ぐに受付カウンターへと向かう。 窓口には制服を着た若い女性職員が座っていた。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「冒険者登録をしたい。それと、素材の買取だ」
「かしこまりました。登録には銀貨一枚かかりますが」
俺は道中の盗賊から『ドロップ』させた財布から、銀貨を取り出して置く。 手続きは事務的だった。名前と年齢、職業(クラス)を申告し、魔道具に手をかざしてステータスの簡易チェックを受ける。 俺の職業は『剣士』、リーナは『射手』として登録された。ランクは当然、最低のFランクからだ。
「では、買取の品はこちらのトレイにお願いします」
職員が大きな木製のトレイをカウンターに出す。 俺は担いでいた袋を逆さにし、中身をぶちまけた。
ゴロゴロと音を立てて素材が転がり出る。 ウルフの毛皮、ホーンラビットの角、怪鳥のくちばし。 そして最後に、異様な存在感を放つ黒光りした皮と、鋭利な牙がこぼれ落ちた。
「……え?」
職員の動きが止まる。 彼女は黒い皮を手に取り、まじまじと見つめた後、震える声で言った。
「こ、これは……バジリスクの皮ですか? それに、この牙も……」
「森で拾った」
俺は適当に答える。 職員は慌てて奥の扉に向かって叫んだ。
「鑑定士の方! 至急お願いします! 高ランク素材の持ち込みです!」
ギルド内がざわつく。 すぐに奥から眼鏡をかけた初老の男が出てきて、カウンターの素材を検分し始めた。 男はルーペを取り出し、バジリスクの皮を舐めるように観察する。そして、信じられないものを見るように唸り声を上げた。
「なんという……」
「どうなんですか、爺さん」
「完璧だ……。傷一つない。剥ぎ取った形跡すら見当たらん。まるで最初から『皮』という状態でそこに存在していたかのような……」
当然だ。 俺が手に入れたのは、死体から剥ぎ取ったものではなく、システムが生成した『ドロップアイテム』としての皮だ。不純物もなければ、切り損じもない。データとして出力された最高品質の素材そのものだ。
「それに、この魔力残存量。新鮮なんてもんじゃない。ついさっき倒されたばかりのようだが、血の汚れも一切ない。一体どうやって……」
「買取額はいくらになる」
俺は男の疑問を遮った。 説明する義務はないし、理解させる必要もない。
「あ、ああ、すまん。……これほどの完品は見たことがない。加工の手間が省けるどころか、最高級の防具が作れるだろう。通常の相場の三倍……いや、五倍は出せる」
鑑定士が提示した金額は、金貨五十枚だった。 周囲の冒険者たちが息を飲む音が聞こえる。Fランクの初心者が手にする額ではない。 普通の暮らしなら数年は遊んで暮らせる大金だ。
「交渉成立だ」
俺は即答する。 職員が震える手で革袋に入った金貨を数え、俺に渡してきた。 ずしりとした重み。 これが、この世界での俺の力だ。
「行こう、リーナ」
「は、はい! さすがです、マスター……」
リーナが感嘆のため息を漏らしながらついてくる。 周囲の視線が変わっていた。 侮蔑や無関心ではない。畏怖と、嫉妬と、値踏みするような視線。 だが、誰も声をかけてこようとはしない。バジリスクを狩り、無傷で素材を持ち帰る実力者を前にして、うかつに手を出せる馬鹿はいなかった。
俺はギルドを出る。 懐には大量の資金。左手には攻撃力を底上げする腕輪。腰には石化の魔眼。 準備は整った。 次は、パーティの防御面を固める番だ。
「リーナ、この街で一番いい宿を取るぞ。その後は装備の買い出しだ」
「はい! ……あの、私の弓も、買っていただけるんでしょうか」
「当然だ。戦力が下がれば効率が落ちる」
俺たちは街の目抜き通りへと歩き出す。 その途中、路地裏から怒鳴り声が聞こえてきた。
「役立たずが! お前のようなノロマは追放だ!」
「ま、待ってください! 私はまだ……」
よく通る、だが悲痛な女の声。 俺は足を止めた。 何かを感じたわけではない。ただ、その声の主が『女騎士』のような格好をしていたのが目に入ったからだ。 そして、俺の【鑑定】が、彼女の隠された価値を捉えていた。
あれは、使えるかもしれない。 俺は口元をわずかに歪め、その騒ぎの方へと足を向けた。
「マスター、まずはどこへ?」
「冒険者ギルドだ。身分証がないと宿にも泊まれないし、何よりこの荷物を金に換えなきゃならない」
俺はインベントリ代わりの麻袋を肩に担ぎ直す。 ここに来るまでに狩った雑魚魔物の素材と、バジリスクの素材が入っている。かなりの重量だが、『剛力の腕輪』のおかげで重さは感じない。
街の中心部にある大きな建物。剣と盾が交差した看板が掲げられている。冒険者ギルドだ。 重厚な扉を押し開けて中に入ると、喧騒と酒の匂いが押し寄せてきた。 昼間だというのに、併設された酒場では荒くれ者たちがジョッキを傾けている。
俺たちの入場に気づいた数人が視線を向けてくるが、すぐに興味を失ってそれぞれの会話に戻った。俺のような見た目が平凡な男と、装備の整っていないエルフの組み合わせなど、取るに足らないと思われたのだろう。
俺は真っ直ぐに受付カウンターへと向かう。 窓口には制服を着た若い女性職員が座っていた。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「冒険者登録をしたい。それと、素材の買取だ」
「かしこまりました。登録には銀貨一枚かかりますが」
俺は道中の盗賊から『ドロップ』させた財布から、銀貨を取り出して置く。 手続きは事務的だった。名前と年齢、職業(クラス)を申告し、魔道具に手をかざしてステータスの簡易チェックを受ける。 俺の職業は『剣士』、リーナは『射手』として登録された。ランクは当然、最低のFランクからだ。
「では、買取の品はこちらのトレイにお願いします」
職員が大きな木製のトレイをカウンターに出す。 俺は担いでいた袋を逆さにし、中身をぶちまけた。
ゴロゴロと音を立てて素材が転がり出る。 ウルフの毛皮、ホーンラビットの角、怪鳥のくちばし。 そして最後に、異様な存在感を放つ黒光りした皮と、鋭利な牙がこぼれ落ちた。
「……え?」
職員の動きが止まる。 彼女は黒い皮を手に取り、まじまじと見つめた後、震える声で言った。
「こ、これは……バジリスクの皮ですか? それに、この牙も……」
「森で拾った」
俺は適当に答える。 職員は慌てて奥の扉に向かって叫んだ。
「鑑定士の方! 至急お願いします! 高ランク素材の持ち込みです!」
ギルド内がざわつく。 すぐに奥から眼鏡をかけた初老の男が出てきて、カウンターの素材を検分し始めた。 男はルーペを取り出し、バジリスクの皮を舐めるように観察する。そして、信じられないものを見るように唸り声を上げた。
「なんという……」
「どうなんですか、爺さん」
「完璧だ……。傷一つない。剥ぎ取った形跡すら見当たらん。まるで最初から『皮』という状態でそこに存在していたかのような……」
当然だ。 俺が手に入れたのは、死体から剥ぎ取ったものではなく、システムが生成した『ドロップアイテム』としての皮だ。不純物もなければ、切り損じもない。データとして出力された最高品質の素材そのものだ。
「それに、この魔力残存量。新鮮なんてもんじゃない。ついさっき倒されたばかりのようだが、血の汚れも一切ない。一体どうやって……」
「買取額はいくらになる」
俺は男の疑問を遮った。 説明する義務はないし、理解させる必要もない。
「あ、ああ、すまん。……これほどの完品は見たことがない。加工の手間が省けるどころか、最高級の防具が作れるだろう。通常の相場の三倍……いや、五倍は出せる」
鑑定士が提示した金額は、金貨五十枚だった。 周囲の冒険者たちが息を飲む音が聞こえる。Fランクの初心者が手にする額ではない。 普通の暮らしなら数年は遊んで暮らせる大金だ。
「交渉成立だ」
俺は即答する。 職員が震える手で革袋に入った金貨を数え、俺に渡してきた。 ずしりとした重み。 これが、この世界での俺の力だ。
「行こう、リーナ」
「は、はい! さすがです、マスター……」
リーナが感嘆のため息を漏らしながらついてくる。 周囲の視線が変わっていた。 侮蔑や無関心ではない。畏怖と、嫉妬と、値踏みするような視線。 だが、誰も声をかけてこようとはしない。バジリスクを狩り、無傷で素材を持ち帰る実力者を前にして、うかつに手を出せる馬鹿はいなかった。
俺はギルドを出る。 懐には大量の資金。左手には攻撃力を底上げする腕輪。腰には石化の魔眼。 準備は整った。 次は、パーティの防御面を固める番だ。
「リーナ、この街で一番いい宿を取るぞ。その後は装備の買い出しだ」
「はい! ……あの、私の弓も、買っていただけるんでしょうか」
「当然だ。戦力が下がれば効率が落ちる」
俺たちは街の目抜き通りへと歩き出す。 その途中、路地裏から怒鳴り声が聞こえてきた。
「役立たずが! お前のようなノロマは追放だ!」
「ま、待ってください! 私はまだ……」
よく通る、だが悲痛な女の声。 俺は足を止めた。 何かを感じたわけではない。ただ、その声の主が『女騎士』のような格好をしていたのが目に入ったからだ。 そして、俺の【鑑定】が、彼女の隠された価値を捉えていた。
あれは、使えるかもしれない。 俺は口元をわずかに歪め、その騒ぎの方へと足を向けた。
403
あなたにおすすめの小説
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
寿明結未
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる