9 / 25
第9話「最強のタンク」
しおりを挟む
ミスリルゴーレムが消滅した広間に、再び重い地響きが近づいてくる。 どうやら戦闘の騒ぎを聞きつけた他の魔物たちが集まってきたらしい。通路の奥から、三体のストーンゴーレムが姿を現した。 さっきサラをボロボロにした奴らと同種だ。
「ちょうどいい実験台だ」
俺は剣を抜こうとはせず、顎で敵を示した。
「サラ、行けるか?」
「ええ……試させてもらうわ」
サラは新しい相棒――『絶対防御の大盾』を構えて前に出る。 漆黒の塔盾は彼女の全身をすっぽりと隠してしまうほどの大きさだが、彼女はそれを羽毛のように軽く扱っている。
ゴオオオオッ!
先頭のストーンゴーレムが、邪魔な鉄板を排除しようと両手を組んで振り下ろした。 体重数トンの一撃。 先ほどまでのサラなら、防いでも吹き飛ばされ、骨にヒビが入っていた威力だ。
「来なさいッ!」
サラは退かない。 盾を斜めに構え、衝撃を受け流す姿勢すら取らず、真正面から受け止める構えを取った。
ドォォォォン!!
爆音と共に、洞窟が揺れる。 だが。
「……え?」
サラの声が漏れた。 彼女は一歩も下がっていなかった。 それどころか、足元の地面すらひび割れていない。 盾の表面に薄い光の膜が展開され、ゴーレムの攻撃エネルギーを完全に相殺していたのだ。 腕を振り下ろしたゴーレムの方が、反動でよろめいている。
「嘘……全然、重くない。衝撃も来ない……」
サラが盾の陰から顔を覗かせる。 その表情は、呆然としたものから、次第に歓喜へと変わっていく。
「私、守れてる……! 完璧に!」
残りの二体のゴーレムも加勢し、左右からサラを殴りつける。 ガン! ガン! ドガン! 岩の拳が何度叩きつけられても、サラの体は揺らぎもしない。盾が自動的に最適角で攻撃を受け止め、ダメージを無効化しているのだ。 これこそが、防御力1500の暴力的なまでの性能だ。
「すげえ……」
「カズヤさん、これなら魔法の援護もいらないですね」
後ろで見ていたリーナも舌を巻いている。 サラは攻撃の雨の中、高笑いを上げ始めた。
「あはははは! 何よあんたたち! 蚊が止まったかと思ったわよ! もっと本気で殴りなさいよ!」
これまで「柔らかい」「脆い」と罵られ、回復魔法の無駄遣いだと蔑まれてきた彼女が、今は無敵の要塞として君臨している。 ゴーレムたちが疲れを見せ始めた頃、俺は静かに前に出た。 動きの止まったゴーレムの急所を、事務的に三回突く。
パパン、パン。 三体のゴーレムはあっけなく光となって消えた。
静寂が戻る。 サラはゆっくりと大盾を下ろし、地面に突き立てた。 そして、自分の両手を見つめ、それから俺の方へと向き直る。 その目からは、大粒の涙が溢れていた。
「……ずっと、言われてきたの」
サラが震える声で語り出す。
「デカいだけで役に立たないって。攻撃を受けるしか能がないのに、その攻撃ですぐ死にかけるお荷物だって。どのパーティに行っても、最後は捨てられた。私は冒険者に向いてないんだって、ずっと思ってた」
彼女は涙を拭おうともせず、俺を見つめ続ける。
「でも、あんたは私を見つけてくれた。『攻撃を受けること』が必要だって言ってくれた。そして、本当に私を……誰にも負けない盾にしてくれた」
ドサッ。 サラはその場に膝をついた。 巨大な盾に寄り添うようにして、俺に頭を下げる。
「ありがとう、カズヤ。あんたは私の居場所をくれた。私の価値を証明してくれた」
騎士としての誇りを取り戻した女の顔だった。
「誓うわ。この『絶対防御の大盾』がある限り、あんたには指一本触れさせない。あんたが背中を預けてくれるなら、私はどんな敵の攻撃だって笑って受け止めてみせる。私は、あんただけの最強の盾になる」
俺は短く答えた。
「期待している」
感情的な言葉はいらない。結果で示してくれればそれでいい。 だが、サラのその誓いが決して軽いものではないことは理解できた。 彼女はこれから先、たとえドラゴンブレスの前だろうと、俺のために一歩も退かずに立ち続けるだろう。 そういう「手駒」が欲しかったのだ。
「立つぞ。街へ戻る」
「うん……! あ、ちょっと待って、足が震えて……嬉しすぎて力が入らないかも」
「情けないこと言うな」
「うるさいわね! 乙女の感動的なシーンでしょ!」
サラが泣き笑いのような顔で立ち上がる。 俺たちは迷宮を後にした。
帰り道、サラはずっと上機嫌で、重いはずの盾を鼻歌交じりに担いでいた。 時折、リーナと楽しそうに話している。 俺は先頭を歩きながら、ステータス画面を確認する。
攻撃(俺・リーナ)。 防御(サラ)。 戦力のバランスは整った。 だが、冒険には戦闘以外の要素も重要だ。 罠の解除、鍵開け、敵の索敵、隠密行動。 それらを専門とする『盗賊(シーフ)』の枠が空いている。
俺は次の獲物を探すように、思考を巡らせる。 確かこの近くの森には、盗賊団や奴隷商人がよく出没するという噂があったはずだ。 そこには、俺の役に立つ人材――あるいはスキルが転がっているかもしれない。
俺たちのパーティ『ドロップアウト(仮)』は、着実に最強への階段を上っていた。
「ちょうどいい実験台だ」
俺は剣を抜こうとはせず、顎で敵を示した。
「サラ、行けるか?」
「ええ……試させてもらうわ」
サラは新しい相棒――『絶対防御の大盾』を構えて前に出る。 漆黒の塔盾は彼女の全身をすっぽりと隠してしまうほどの大きさだが、彼女はそれを羽毛のように軽く扱っている。
ゴオオオオッ!
先頭のストーンゴーレムが、邪魔な鉄板を排除しようと両手を組んで振り下ろした。 体重数トンの一撃。 先ほどまでのサラなら、防いでも吹き飛ばされ、骨にヒビが入っていた威力だ。
「来なさいッ!」
サラは退かない。 盾を斜めに構え、衝撃を受け流す姿勢すら取らず、真正面から受け止める構えを取った。
ドォォォォン!!
爆音と共に、洞窟が揺れる。 だが。
「……え?」
サラの声が漏れた。 彼女は一歩も下がっていなかった。 それどころか、足元の地面すらひび割れていない。 盾の表面に薄い光の膜が展開され、ゴーレムの攻撃エネルギーを完全に相殺していたのだ。 腕を振り下ろしたゴーレムの方が、反動でよろめいている。
「嘘……全然、重くない。衝撃も来ない……」
サラが盾の陰から顔を覗かせる。 その表情は、呆然としたものから、次第に歓喜へと変わっていく。
「私、守れてる……! 完璧に!」
残りの二体のゴーレムも加勢し、左右からサラを殴りつける。 ガン! ガン! ドガン! 岩の拳が何度叩きつけられても、サラの体は揺らぎもしない。盾が自動的に最適角で攻撃を受け止め、ダメージを無効化しているのだ。 これこそが、防御力1500の暴力的なまでの性能だ。
「すげえ……」
「カズヤさん、これなら魔法の援護もいらないですね」
後ろで見ていたリーナも舌を巻いている。 サラは攻撃の雨の中、高笑いを上げ始めた。
「あはははは! 何よあんたたち! 蚊が止まったかと思ったわよ! もっと本気で殴りなさいよ!」
これまで「柔らかい」「脆い」と罵られ、回復魔法の無駄遣いだと蔑まれてきた彼女が、今は無敵の要塞として君臨している。 ゴーレムたちが疲れを見せ始めた頃、俺は静かに前に出た。 動きの止まったゴーレムの急所を、事務的に三回突く。
パパン、パン。 三体のゴーレムはあっけなく光となって消えた。
静寂が戻る。 サラはゆっくりと大盾を下ろし、地面に突き立てた。 そして、自分の両手を見つめ、それから俺の方へと向き直る。 その目からは、大粒の涙が溢れていた。
「……ずっと、言われてきたの」
サラが震える声で語り出す。
「デカいだけで役に立たないって。攻撃を受けるしか能がないのに、その攻撃ですぐ死にかけるお荷物だって。どのパーティに行っても、最後は捨てられた。私は冒険者に向いてないんだって、ずっと思ってた」
彼女は涙を拭おうともせず、俺を見つめ続ける。
「でも、あんたは私を見つけてくれた。『攻撃を受けること』が必要だって言ってくれた。そして、本当に私を……誰にも負けない盾にしてくれた」
ドサッ。 サラはその場に膝をついた。 巨大な盾に寄り添うようにして、俺に頭を下げる。
「ありがとう、カズヤ。あんたは私の居場所をくれた。私の価値を証明してくれた」
騎士としての誇りを取り戻した女の顔だった。
「誓うわ。この『絶対防御の大盾』がある限り、あんたには指一本触れさせない。あんたが背中を預けてくれるなら、私はどんな敵の攻撃だって笑って受け止めてみせる。私は、あんただけの最強の盾になる」
俺は短く答えた。
「期待している」
感情的な言葉はいらない。結果で示してくれればそれでいい。 だが、サラのその誓いが決して軽いものではないことは理解できた。 彼女はこれから先、たとえドラゴンブレスの前だろうと、俺のために一歩も退かずに立ち続けるだろう。 そういう「手駒」が欲しかったのだ。
「立つぞ。街へ戻る」
「うん……! あ、ちょっと待って、足が震えて……嬉しすぎて力が入らないかも」
「情けないこと言うな」
「うるさいわね! 乙女の感動的なシーンでしょ!」
サラが泣き笑いのような顔で立ち上がる。 俺たちは迷宮を後にした。
帰り道、サラはずっと上機嫌で、重いはずの盾を鼻歌交じりに担いでいた。 時折、リーナと楽しそうに話している。 俺は先頭を歩きながら、ステータス画面を確認する。
攻撃(俺・リーナ)。 防御(サラ)。 戦力のバランスは整った。 だが、冒険には戦闘以外の要素も重要だ。 罠の解除、鍵開け、敵の索敵、隠密行動。 それらを専門とする『盗賊(シーフ)』の枠が空いている。
俺は次の獲物を探すように、思考を巡らせる。 確かこの近くの森には、盗賊団や奴隷商人がよく出没するという噂があったはずだ。 そこには、俺の役に立つ人材――あるいはスキルが転がっているかもしれない。
俺たちのパーティ『ドロップアウト(仮)』は、着実に最強への階段を上っていた。
354
あなたにおすすめの小説
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。
いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。
そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。
【第二章】
原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。
原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる