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第12話「鍵を求めて」
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目の前の死神――ジェイルキーパーが、身の丈ほどもある巨大な断頭斧を軽々と振り上げた。 錆びついた刃が、薄暗い地下空間で鈍く光る。
「グォォオオオッ……!」
低く、腹の底に響くような咆哮。 それは生者の言葉ではなく、死者からの呪詛のように聞こえた。
「来るぞ! サラ、受けろ!」
「任せなさい!」
サラが『絶対防御の大盾』を構えて前に出る。 ジェイルキーパーの一撃は速かった。骸骨の身体からは想像もつかない瞬発力で踏み込み、横薙ぎに斧を振るう。 風切り音すら置き去りにするような豪速。
ガガァァァンッ!!
凄まじい衝撃音が響き渡り、火花が散る。 サラの足が地面を削り、数メートル後退させられた。 だが、彼女は倒れない。盾も砕けない。
「くっ……重い……! これ、ゴーレムより強いわよ!」
サラが歯を食いしばる。 当然だ。こいつはレベル40相当のボスモンスター。物理攻撃力だけなら、先ほどのミスリルゴーレムをも上回る。 だが、サラが耐えてくれているおかげで、俺たちに攻撃の機会が回ってくる。
「リーナ、援護だ! 関節を狙え!」
「はい!」
リーナが矢を放つ。 矢は正確にジェイルキーパーの膝関節を狙うが、奴は空いた左手でジャラジャラと腰の鎖を操り、矢を叩き落とした。
「鎖で防御を!? なんて器用な……」
リーナが驚愕する。 ジェイルキーパーは防御だけに留まらず、その鎖を鞭のようにしならせ、俺たち後衛に向かって飛ばしてきた。 先端に分銅がついた鎖が、蛇のように襲いかかる。
「ちっ!」
俺は剣で鎖を弾く。 重い。一撃一撃が必殺の威力を持っている。 俺はミオを庇いながら後退した。 ミオは壁際で荒い息をついている。首輪の締め付けが限界に近いのだ。顔色は土気色になり、目は虚ろだ。
「……右……来る……」
ミオが掠れた声で呟いた。
「なに?」
「鎖……壁を伝って……右から……」
俺は反射的に右を見た。 暗闇の中、ジェイルキーパーが放ったもう一本の鎖が、天井の梁を経由して、死角から俺の頭上へ迫っていた。 見えていなかった。
「っ!」
俺は咄嗟に身を屈める。 頭上数センチを、鉄の塊が風を巻いて通り過ぎ、地面のアスファルトを粉砕した。 直撃していれば頭が割れていただろう。
「助かった。よく見えてるな」
「……音……鎖が擦れる音……」
ミオは苦しげに胸を押さえる。 視界が効かず、乱戦となるこの状況下で、彼女の聴覚だけが戦場の全てを把握しているらしい。 瀕死の状態だというのに、その生存本能はずば抜けている。
「サラ、鎖に気をつけろ! 変則的な軌道で来るぞ!」
「分かってる! でも、こいつ全然隙がないわよ!」
サラが叫ぶ。 ジェイルキーパーは斧と鎖を巧みに使い分け、サラを釘付けにしつつ、隙あらば後衛を狙ってくる。 近づこうにも、鎖の間合いが広すぎて踏み込めない。 俺の武器は剣だ。懐に入らなければ攻撃できない。
そして何より、奴の『急所』が見当たらない。 いや、正確には見えているのだが、位置が悪い。 奴の急所は、肋骨の奥。心臓があるべき場所のさらに奥、背骨の内側に守られるようにして輝いている。 正面からでは肋骨と鎧に阻まれ、背後からでも背骨が邪魔をする。 あの堅牢な骨の隙間を、ピンポイントで貫く必要がある。
一瞬の隙があればいい。 奴が大きく体勢を崩し、骨の隙間が露わになる瞬間。
「……カズヤ……あいつ、足……」
再びミオが呟く。
「足?」
「右足……踏み込む時……一瞬、音が変わる……古傷がある……」
俺はジェイルキーパーの足元を見る。 確かに、斧を振るうために踏ん張る際、右足首をわずかに庇うような動作をしている。骨にヒビが入っているのか、あるいは関節が摩耗しているのか。 そこを攻めれば、体勢を崩せるかもしれない。
「リーナ! 右足首だ! そこを集中的に狙え!」
「わかりました!」
リーナが弓を構え直す。 ジェイルキーパーが鎖を振るう隙間を縫って、彼女は矢を連射した。 一本、二本と矢が弾かれるが、三本目が奴の右足首の関節に突き刺さる。
「ガアッ!?」
ジェイルキーパーが初めて苦悶の声を上げ、膝を折った。 巨体が傾く。
「今だ、サラ! 押し込め!」
「了解ッ! 【シールドバッシュ】!」
サラが好機を逃さず突進する。 スキルによる盾打撃。 黒い塊と化した彼女が、体勢を崩したジェイルキーパーの胸板に激突した。 ドゴォォォォン! 凄まじい衝撃に、ジェイルキーパーが仰向けに倒れ込む。
ガラ空きだ。 奴の胸郭が開き、肋骨の隙間から、奥にある赤い光がはっきりと見えた。
「もらったァッ!」
俺は走る。 地面を蹴り、倒れたジェイルキーパーの上空へと躍り出る。 剣を逆手に持ち替え、全体重を乗せて落下する。
狙うは一点。 死をもたらす心臓部。
ジェイルキーパーが虚ろな目で俺を見上げ、絶望したように口を開けた。 俺の剣が、その肋骨の間を滑り落ちていく。
ズプッ。
硬い骨を避け、柔らかな魔力の核を貫く感触。 俺の手元に、確かな手応えが伝わってきた。
「グォォオオオッ……!」
低く、腹の底に響くような咆哮。 それは生者の言葉ではなく、死者からの呪詛のように聞こえた。
「来るぞ! サラ、受けろ!」
「任せなさい!」
サラが『絶対防御の大盾』を構えて前に出る。 ジェイルキーパーの一撃は速かった。骸骨の身体からは想像もつかない瞬発力で踏み込み、横薙ぎに斧を振るう。 風切り音すら置き去りにするような豪速。
ガガァァァンッ!!
凄まじい衝撃音が響き渡り、火花が散る。 サラの足が地面を削り、数メートル後退させられた。 だが、彼女は倒れない。盾も砕けない。
「くっ……重い……! これ、ゴーレムより強いわよ!」
サラが歯を食いしばる。 当然だ。こいつはレベル40相当のボスモンスター。物理攻撃力だけなら、先ほどのミスリルゴーレムをも上回る。 だが、サラが耐えてくれているおかげで、俺たちに攻撃の機会が回ってくる。
「リーナ、援護だ! 関節を狙え!」
「はい!」
リーナが矢を放つ。 矢は正確にジェイルキーパーの膝関節を狙うが、奴は空いた左手でジャラジャラと腰の鎖を操り、矢を叩き落とした。
「鎖で防御を!? なんて器用な……」
リーナが驚愕する。 ジェイルキーパーは防御だけに留まらず、その鎖を鞭のようにしならせ、俺たち後衛に向かって飛ばしてきた。 先端に分銅がついた鎖が、蛇のように襲いかかる。
「ちっ!」
俺は剣で鎖を弾く。 重い。一撃一撃が必殺の威力を持っている。 俺はミオを庇いながら後退した。 ミオは壁際で荒い息をついている。首輪の締め付けが限界に近いのだ。顔色は土気色になり、目は虚ろだ。
「……右……来る……」
ミオが掠れた声で呟いた。
「なに?」
「鎖……壁を伝って……右から……」
俺は反射的に右を見た。 暗闇の中、ジェイルキーパーが放ったもう一本の鎖が、天井の梁を経由して、死角から俺の頭上へ迫っていた。 見えていなかった。
「っ!」
俺は咄嗟に身を屈める。 頭上数センチを、鉄の塊が風を巻いて通り過ぎ、地面のアスファルトを粉砕した。 直撃していれば頭が割れていただろう。
「助かった。よく見えてるな」
「……音……鎖が擦れる音……」
ミオは苦しげに胸を押さえる。 視界が効かず、乱戦となるこの状況下で、彼女の聴覚だけが戦場の全てを把握しているらしい。 瀕死の状態だというのに、その生存本能はずば抜けている。
「サラ、鎖に気をつけろ! 変則的な軌道で来るぞ!」
「分かってる! でも、こいつ全然隙がないわよ!」
サラが叫ぶ。 ジェイルキーパーは斧と鎖を巧みに使い分け、サラを釘付けにしつつ、隙あらば後衛を狙ってくる。 近づこうにも、鎖の間合いが広すぎて踏み込めない。 俺の武器は剣だ。懐に入らなければ攻撃できない。
そして何より、奴の『急所』が見当たらない。 いや、正確には見えているのだが、位置が悪い。 奴の急所は、肋骨の奥。心臓があるべき場所のさらに奥、背骨の内側に守られるようにして輝いている。 正面からでは肋骨と鎧に阻まれ、背後からでも背骨が邪魔をする。 あの堅牢な骨の隙間を、ピンポイントで貫く必要がある。
一瞬の隙があればいい。 奴が大きく体勢を崩し、骨の隙間が露わになる瞬間。
「……カズヤ……あいつ、足……」
再びミオが呟く。
「足?」
「右足……踏み込む時……一瞬、音が変わる……古傷がある……」
俺はジェイルキーパーの足元を見る。 確かに、斧を振るうために踏ん張る際、右足首をわずかに庇うような動作をしている。骨にヒビが入っているのか、あるいは関節が摩耗しているのか。 そこを攻めれば、体勢を崩せるかもしれない。
「リーナ! 右足首だ! そこを集中的に狙え!」
「わかりました!」
リーナが弓を構え直す。 ジェイルキーパーが鎖を振るう隙間を縫って、彼女は矢を連射した。 一本、二本と矢が弾かれるが、三本目が奴の右足首の関節に突き刺さる。
「ガアッ!?」
ジェイルキーパーが初めて苦悶の声を上げ、膝を折った。 巨体が傾く。
「今だ、サラ! 押し込め!」
「了解ッ! 【シールドバッシュ】!」
サラが好機を逃さず突進する。 スキルによる盾打撃。 黒い塊と化した彼女が、体勢を崩したジェイルキーパーの胸板に激突した。 ドゴォォォォン! 凄まじい衝撃に、ジェイルキーパーが仰向けに倒れ込む。
ガラ空きだ。 奴の胸郭が開き、肋骨の隙間から、奥にある赤い光がはっきりと見えた。
「もらったァッ!」
俺は走る。 地面を蹴り、倒れたジェイルキーパーの上空へと躍り出る。 剣を逆手に持ち替え、全体重を乗せて落下する。
狙うは一点。 死をもたらす心臓部。
ジェイルキーパーが虚ろな目で俺を見上げ、絶望したように口を開けた。 俺の剣が、その肋骨の間を滑り落ちていく。
ズプッ。
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