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第11話「呪いの首輪」
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俺たちは街の地下に広がる広大な水路、通称『地下水路ダンジョン』の入り口に立っていた。 腐敗臭と湿気が混じった生温かい風が吹き上げてくる。
「はぁ、はぁ……ごめん、足手まといで……」
俺の背中で、ミオが苦しげな息を漏らす。 彼女の首にある『隷属の首輪』は、先ほどよりも強く赤く発光し、ゆっくりと、だが確実に収縮を始めていた。 ミオの白い肌に、鉄の跡が食い込み始めている。
「喋るな。体力を消耗する」
俺はミオを背負い直す。 軽い。食べていないせいか、骨と皮だけのような感触だ。だが、その筋肉はしなやかで、戦士としての素質を感じさせる。
「ねえカズヤ、本当に大丈夫なの? 鍵なんて本当にあるの?」
サラが不安そうに聞いてくる。彼女は大きな盾を構え、周囲を警戒している。 俺は【鑑定】で得た知識を反芻する。
「ある。この地下水路の主、『ジェイルキーパー』は、捕らえた獲物を閉じ込めるために様々な『鍵』を収集する習性がある。そいつのドロップリストには『万能の鍵』が含まれているはずだ」
「はずって……確定情報じゃないの?」
「俺の勘は当たる」
根拠は【鑑定】だが、彼女たちには勘ということにしておく。 俺たちは暗い階段を降り、地下水路へと足を踏み入れた。
中は薄暗く、壁には発光する苔がわずかに張り付いているだけだ。視界が悪い。 足元はぬかるみ、汚水が流れる水路が中央を走っている。
「うっ、臭いですね……」
リーナが鼻をつまむ。 だが、俺の背中にいるミオが、ピクリと耳を動かした。
「……臭いだけじゃない。この匂い、魔物がいる」
「どっちだ?」
「右の通路の奥。三体……いや、四体。壁に張り付いてる」
ミオが小声で告げる。 俺は視線を向ける。暗闇でよく見えないが、目を凝らすと天井付近に赤い点が四つ、揺らいでいるのが見えた。 『ジャイアントバット』だ。吸血コウモリの群れ。
「正解だ。コウモリがいる」
「えっ、全然見えないわよ?」
サラが目を凝らすが、彼女には見えていないらしい。 俺はリーナに合図を送る。
「リーナ、天井だ。俺が指差す方向を射て」
「はい!」
俺が指差すと同時に、リーナが矢を放つ。 風を切る音。 直後、ギャッ! という短い悲鳴と共に、ボトボトと何かが水路に落ちる音がした。
「当たった……!」
「すごい……位置も数も完璧だった」
サラとリーナが感嘆の声を上げる。 ミオは俺の肩に顔を埋めながら、少し得意げに鼻を鳴らした。
「当たり前だろ。私は夜目が利くし、鼻も耳もお前ら人間よりずっといいんだ」
「役に立つな。採用して正解だった」
俺が素直に褒めると、ミオは驚いたように体を強張らせた。
「……お世辞はいい。どうせ使い捨ての道具だろ」
「道具ならメンテナンスをする。使い捨てにするつもりなら、わざわざこんな臭いドブ川には来ない」
俺は淡々と言う。 ミオはしばらく黙っていたが、やがて小さな声で呟いた。
「……変な奴」
少しだけ、彼女の警戒心が緩んだ気がした。
俺たちはさらに奥へと進む。 道中、水路から飛び出してくる『ポイズントード』や、物陰に潜む『アサシンラット』などを、ミオがいち早く察知し、俺たちが処理する。 完璧な連携だった。 奇襲を受けないというのは、これほどまでにストレスがないものか。 サラの防御も、リーナの射撃も、初動が早くなることで安定感が増している。
「ぐっ……ぁ……!」
不意に、ミオが呻き声を上げた。 首輪が、さらに一段階締まったようだ。彼女の手が俺の服を強く握りしめる。 呼吸がヒューヒューと浅くなっている。
「ミオちゃん!」
「時間がありません、マスター!」
「ああ、分かっている」
俺は足を速める。 ミオの限界が近い。 だが、焦って突出して罠にかかっては元も子もない。
「ミオ、意識を保て。もうすぐ最深部だ。そこにお前の命綱がある」
「は、はい……。まだ、死にたく……ない……」
彼女の意識が朦朧としている。 俺は走った。 水路の構造は複雑だが、俺は時折見える魔物の配置から、より強い魔物がいる方向――つまりボスがいる方向を推測して進む。
やがて、ひと際大きな鉄格子のある広間に出た。 床には骨が散乱し、錆びついた鎖が垂れ下がっている。 処刑場のような場所だ。
ジャラララ……。
奥から、鎖を引きずる音が響いてきた。 闇の中から姿を現したのは、ボロボロの黒いローブを纏い、両手に巨大な断頭斧を持った骸骨の魔物だった。 その腰には、ジャラジャラと無数の鍵束がぶら下がっている。
【種族:ジェイルキーパー】
【討伐推奨レベル:40】
【ドロップアイテム:処刑人の斧、亡者の衣、万能の鍵(SR)】
「いたぞ」
俺はミオを安全な壁際に下ろす。 彼女は首を押さえ、苦悶の表情でその魔物を見上げた。
「あいつ……鍵を……」
「待ってろ。すぐ取ってきてやる」
俺は剣を抜き、サラとリーナに指示を出す。
「総力戦だ。あいつを倒して、鍵を奪う」
ジェイルキーパーが俺たちに気づき、空洞の眼窩に赤い光を灯した。 カチカチと歯を鳴らし、巨大な斧を振り上げる。
獲物は目の前だ。
「はぁ、はぁ……ごめん、足手まといで……」
俺の背中で、ミオが苦しげな息を漏らす。 彼女の首にある『隷属の首輪』は、先ほどよりも強く赤く発光し、ゆっくりと、だが確実に収縮を始めていた。 ミオの白い肌に、鉄の跡が食い込み始めている。
「喋るな。体力を消耗する」
俺はミオを背負い直す。 軽い。食べていないせいか、骨と皮だけのような感触だ。だが、その筋肉はしなやかで、戦士としての素質を感じさせる。
「ねえカズヤ、本当に大丈夫なの? 鍵なんて本当にあるの?」
サラが不安そうに聞いてくる。彼女は大きな盾を構え、周囲を警戒している。 俺は【鑑定】で得た知識を反芻する。
「ある。この地下水路の主、『ジェイルキーパー』は、捕らえた獲物を閉じ込めるために様々な『鍵』を収集する習性がある。そいつのドロップリストには『万能の鍵』が含まれているはずだ」
「はずって……確定情報じゃないの?」
「俺の勘は当たる」
根拠は【鑑定】だが、彼女たちには勘ということにしておく。 俺たちは暗い階段を降り、地下水路へと足を踏み入れた。
中は薄暗く、壁には発光する苔がわずかに張り付いているだけだ。視界が悪い。 足元はぬかるみ、汚水が流れる水路が中央を走っている。
「うっ、臭いですね……」
リーナが鼻をつまむ。 だが、俺の背中にいるミオが、ピクリと耳を動かした。
「……臭いだけじゃない。この匂い、魔物がいる」
「どっちだ?」
「右の通路の奥。三体……いや、四体。壁に張り付いてる」
ミオが小声で告げる。 俺は視線を向ける。暗闇でよく見えないが、目を凝らすと天井付近に赤い点が四つ、揺らいでいるのが見えた。 『ジャイアントバット』だ。吸血コウモリの群れ。
「正解だ。コウモリがいる」
「えっ、全然見えないわよ?」
サラが目を凝らすが、彼女には見えていないらしい。 俺はリーナに合図を送る。
「リーナ、天井だ。俺が指差す方向を射て」
「はい!」
俺が指差すと同時に、リーナが矢を放つ。 風を切る音。 直後、ギャッ! という短い悲鳴と共に、ボトボトと何かが水路に落ちる音がした。
「当たった……!」
「すごい……位置も数も完璧だった」
サラとリーナが感嘆の声を上げる。 ミオは俺の肩に顔を埋めながら、少し得意げに鼻を鳴らした。
「当たり前だろ。私は夜目が利くし、鼻も耳もお前ら人間よりずっといいんだ」
「役に立つな。採用して正解だった」
俺が素直に褒めると、ミオは驚いたように体を強張らせた。
「……お世辞はいい。どうせ使い捨ての道具だろ」
「道具ならメンテナンスをする。使い捨てにするつもりなら、わざわざこんな臭いドブ川には来ない」
俺は淡々と言う。 ミオはしばらく黙っていたが、やがて小さな声で呟いた。
「……変な奴」
少しだけ、彼女の警戒心が緩んだ気がした。
俺たちはさらに奥へと進む。 道中、水路から飛び出してくる『ポイズントード』や、物陰に潜む『アサシンラット』などを、ミオがいち早く察知し、俺たちが処理する。 完璧な連携だった。 奇襲を受けないというのは、これほどまでにストレスがないものか。 サラの防御も、リーナの射撃も、初動が早くなることで安定感が増している。
「ぐっ……ぁ……!」
不意に、ミオが呻き声を上げた。 首輪が、さらに一段階締まったようだ。彼女の手が俺の服を強く握りしめる。 呼吸がヒューヒューと浅くなっている。
「ミオちゃん!」
「時間がありません、マスター!」
「ああ、分かっている」
俺は足を速める。 ミオの限界が近い。 だが、焦って突出して罠にかかっては元も子もない。
「ミオ、意識を保て。もうすぐ最深部だ。そこにお前の命綱がある」
「は、はい……。まだ、死にたく……ない……」
彼女の意識が朦朧としている。 俺は走った。 水路の構造は複雑だが、俺は時折見える魔物の配置から、より強い魔物がいる方向――つまりボスがいる方向を推測して進む。
やがて、ひと際大きな鉄格子のある広間に出た。 床には骨が散乱し、錆びついた鎖が垂れ下がっている。 処刑場のような場所だ。
ジャラララ……。
奥から、鎖を引きずる音が響いてきた。 闇の中から姿を現したのは、ボロボロの黒いローブを纏い、両手に巨大な断頭斧を持った骸骨の魔物だった。 その腰には、ジャラジャラと無数の鍵束がぶら下がっている。
【種族:ジェイルキーパー】
【討伐推奨レベル:40】
【ドロップアイテム:処刑人の斧、亡者の衣、万能の鍵(SR)】
「いたぞ」
俺はミオを安全な壁際に下ろす。 彼女は首を押さえ、苦悶の表情でその魔物を見上げた。
「あいつ……鍵を……」
「待ってろ。すぐ取ってきてやる」
俺は剣を抜き、サラとリーナに指示を出す。
「総力戦だ。あいつを倒して、鍵を奪う」
ジェイルキーパーが俺たちに気づき、空洞の眼窩に赤い光を灯した。 カチカチと歯を鳴らし、巨大な斧を振り上げる。
獲物は目の前だ。
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