「真白」〜〜雪と蛇の女〜〜

まへまへ

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第7話 微調整な変身

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食事を済ませた頃、ロッジの中は静かだった。

外の台風は過ぎ去り、山の風はひんやりと落ち着いている。
 
一朗は立ち上がり、棚から自分のパーカーとジャージを取り出した。

 「これ、着てみるか?」

真白は目を輝かせた。
 
「え、服……着ていいの?」

一朗は頷く。
 
「もちろん。寒いしな、せっかくだから試してみろよ」

真白はそっと手を伸ばし、一朗の助けを借りながらパーカーを着る。

袖が少し長くて手が隠れるのが面白かったらしく、彼女は小さく笑った。

 「わぁ……あったかい!」

初めて服を着た感触に、目を輝かせる。

一朗も思わず笑みを漏らした。
 
 「似合うぞ。……ほら、ジャージも着ろ」

真白は手際よくジャージを着ると、布の感触に顔をほころばせながら、ちょっとくすぐったそうに手を触った。

 「ふふっ……これ、面白い」

 「そうか。……じゃあ、もうちょっと人間に見えるように、細かい変身ってできるか?」

真白は考え込むように首をかしげた。

 「できるけど……難しいかも」

一朗は棚からタブレットを取り出し、画面を真白に見せた。

 「ほら、こういうイメージでさ。肌の色は人間っぽくして、髪は黒髪。顔の輪郭とか、手足のバランスも少し人間寄りにしてみて」

真白はタブレットの画像をじっと見つめ、目を輝かせた。

 「わかった! やってみる!」

瞬間、光が真白の体を包む。

ほんの一瞬、身体の輪郭が柔らかく揺れ、肌は人間の色に変わり、髪は深い黒に染まった。

指先や顔の細部も、人間らしい形へと整っていく。

一朗は息を呑み、じっと見守った。

変身が終わると、真白はタブレットを指さして言った。

 「できたよ!」



一朗は思わず笑みを浮かべ、手を叩いた。

 「完璧だ! すごい、真白!」

真白も嬉しそうに両手を上げて跳ねるように動いた。

 「やったー! 人間っぽい!」

二人はしばらく見つめ合い、笑い合った。

その穏やかな夜の中、ロッジの灯りが二人を包み込み、心地よい温かさが部屋いっぱいに満ちた。

一朗は微笑みながら、真白の肩を軽く叩いた。

 「これで外に出ても、誰も驚かないな」

 真白はちょっと照れたように笑い、

 「うん。これなら、もう怖くないね」



一朗はタブレットを片付けながら、ふと口を開いた。

 「なあ、真白」

真白が振り向く。

 「ん?」

 「今日は、山に帰ってほしいんだ。明日の朝、この姿でロッジに来てくれ」

真白は少し首をかしげた。

 「また来ていいの?」

一朗はにこりと笑った。

 「もちろんだよ。母さんに自然に伝えたいんだ」

真白は少し安心したように微笑む。

 「うん……わかった」

一朗は真白が着ているパーカーとジャージを指差した。

 「服は裏口に置いておく。明日、着替えてきて」

真白は両手を胸の前で合わせ、嬉しそうに頷いた。

 「うん、わかった。今日は帰るね。また明日」

一朗は手を少し振った。

 「気をつけて帰れよ」

真白は、ふわりと白い光をまとい始める。

身体が細く伸び、頭から尾にかけて滑らかな白い蛇の形に戻っていく。

 「……じゃあ、行くね」

白い蛇になった真白は、屋根の上に滑るように乗り、月光に照らされながら、静かに夜の闇へと消えていった。

一朗はしばらくその姿を見送った。

雪に光が反射し、白く揺れる尾が屋根の向こうに消えていく。

胸の奥に、小さな安心と、少しの寂しさが交差した。
 
——明日の朝、この姿でまた来てくれる。その思いが、静かな夜を少し温かくした。

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