王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22

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今夜だけは、隣で眠りたい

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今夜だけは、隣で眠りたい
出発前夜の夜。いつものようにレオが寝室を訪れた。あの不安は解消されてくれただろうか。
正直セラだって不安なわけじゃない。自分の社交界、レオの外交。どちらも無事に終わって欲しいと思うけれど、何かそうはならないような予感がする。
「今日はお前が不安そうだな。」
「全てうまくいくだろうかと。考えても仕方のないことですが。」
「.....侍女のことなんだがな、やはり受け入れられないそうだ。エティは約束通り俺が連れて行く。」
「そう、ですか。やはり.....エルシウス様は何を考えているのかを推し量るのが難しい方です。」
「そうだな。セラ。」
俯いていた顔を上げる。そこにはしばらく見ていなかった穏やかで優しい顔があった。
「大丈夫だ。お前なら上手くやる。」
この顔でそう言ってくれると、本当に大丈夫な気がする。
優しく触れられるキス。最初、その先がないことに不安で堪らなかったけど、今はこのキスで幸せな気持ちになってしまう。
(もっと.....欲しい)
そう思ったのはきっと明日出発してしまうからだ。レオの胸に縋りキスを求めれば驚いた顔で応えてくれる。
「レオ様.....好きです。」
「は、お前ほんと........」
耳まで赤いレオ。私の一言で、こんなに乱れてくれる唯一の人。
「愛してる、セラ。ちゃんと待ってろよ。」
頷いた。待ってる。待つのが苦手なセラが、そう思いたくなるほどに大事な人。
「レオ様、気をつけて行ってきてくださいね。向こうの宰相とやらは油断ができません。」
「分かってるよ。アラリックと話してくる。また今度あいつにも紹介しないとな。」
「レオ様と仲がいいぐらいですし、良い方なのでしょうね。またいつかお会いできるのが楽しみです。」
「ああ。......なあ、今日ここで寝てもいいか?」
「え?」
「何もしないから。ただ....朝までお前を近くに感じていたい。」
「それは.....構いませんが.......」
「ならセラ、おいで。」
誘われるがままにレオの隣に横になった。
抱きくるめられるとどうしようもなく安心する。聞こえるレオの鼓動。
(早い.....)
緊張、してくれているんだろうか。
いつでも強くて、怖いものなんてなさそうな彼が、あんなに不安そうな顔をする。
それがずっと、私だけであって欲しい。
(随分欲深くなったな....)
レオは何も言わない。セラも何も言わなかった。
ただ、触れる体温を、感じていた。
 
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