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弱気な王弟殿下
しおりを挟む「何故今離れねばならないんだ....」
ぼやくレオに大して動揺もせずクシェルが仕事を進めている。
手を、眺めてみる。セラが自ら取って、キスした手。
あの死の淵から目覚めてから、セラは変わった。レオへの言葉は正直になり、以前常に纏わりついていた怯えのようなものが半減した気がする。
セラは元々強い女だ。強くて、素直で可愛い女の子。セラに言った言葉は嘘じゃない。これからベルシュタインの令嬢として傷を隠し、社交界に出ればそのハープの腕と美しさは瞬く間に話題となるだろう。王族とまではいかずともセラの好むような武人のような男から言い寄られないとも限らない。今まで、セラの世界の男はライとレオしかいなかった。だがこれからは違う。セラが今純粋に俺にむけてくれる好意が、永遠のものではないかもしれないと言う恐怖。
ベルシュタイン辺境伯はだからあんなことを言ったのかもしれない。俺に取っては数多の女の中から選んだ1人だが、セラにとっては俺以外の選択肢がない中から選んだのだから。
「最近の殿下は悩みが絶えませんね。」
「.....仕方ないだろう。」
「セラ様は社交界でさぞ話題になるでしょうね。侍女として連れて行った時ですらあれだったのですから。」
「......お前は俺の味方なのか?」
「勿論です。セラ様は殿下のダメなところを見ても尚好意を寄せてくださっています。私としても逃げられてほしくはありません。」
「.....お前がそう思っていたとは。」
「セラ様に振られた殿下など想像するだけでやってられません。セラ様はご自分が強いだけに強い男性を求めておられるように思います。」
「.....俺では物足りないと?」
「最近の殿下はすっかり弱気です。これでは逃げられても文句は言えません。今もどうせ社交界に出て揺れるセラ様のことを想像していたのでしょう。」
図星だ。セラが、俺の何をいいと思ってくれているのかが最近分からなくなってきた。あれだけ俺を望めだの溺れろだの言っておいて。
「コアルシオンに行く前にその不安の芽は摘んでおいてください。外交で殿下が使い物にならなければ困ります。」
「.....分かっている。」
触れられた重い手を動かして、書類に手を伸ばした。
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