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6話
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魔王の配下となってから、半年が過ぎた。
私はその魔王から、直接呼ばれた。
初めて会った時と同様、威厳溢れた魔王が玉座に座っている。
「エギュアス殿、今日はどのような要件で?」
「ああ。幹部を決めようと思ってな。」
「幹部は既にいるのでは?」
「今の幹部は、俺が任命したやつらじゃない。そこで一から体制を整えようと思ってな。」
「それは、勇者が動き出したからかしら。」
「……やはり知っていたか。」
「情報は武器、そう師匠に教わったわ。」
「そうかよ。まぁ幹部を改めて決めようと思ったのは、そこが理由だな。」
「了解したわ。私に選別しろと言うのでしょう?」
「分かってんじゃねーか。」
「それは面倒事の丸投げって言うのよ。暇なら手伝ってくれても良いのよ?」
「俺も暇じゃねぇんだよ。全く、図太くなりやがって。まぁ実力を考えれば文句は言えないがな。」
「それで?幹部を決めるのは分かったけれど、その部隊の種類を教えてほしいわ。」
「そうだな。」
そしてエギュアス殿が幹部を決めてほしい部隊を言っていく。
まずは防衛部隊。これは当然だろう。
防衛部隊の中でも、王城・領内・国境の3名の幹部を決めてくれとのこと。
そして情報部隊、攻撃部隊。
攻撃部隊は国内で何かあった際や他国への進軍などをする部隊だ。
最後に……
「お前の部隊も作ってくれよ。」
「私は部隊を率いるなんてごめんよ。」
「いや、俺直属の自由部隊になってくれ。」
「それって、今回よりも面倒事を押し付けられそうなのだけれど?」
「安心しろ。お前が自由に動かせる部隊だ。魔王直属とは名ばかりで、本当に必要な時以外、俺は命令しない。」
「そう。なら自分で好きなように鍛え上げれば良いってことね。」
「そうだぜ。じゃあ後は頼んだ。」
「丸投げね……。」
私はその場を後にし、現在の幹部?達と会ってみることにした。
魔王城に来てから半年も経っているが、幹部らしき魔族には会ったことがなかった。
会う必要もないからだ。
私は魔法を使い、勇者パーティーと師匠を死に追いやった国王を監視していた。
あとは自身の鍛錬をしたりなど、それだけで一日が終わる。
しかし、今日からはそうもいかなくなるだろう。
私は1人目の幹部らしき魔族と接触した。
「こんにちは。」
「これはこれは、シェルア様ではありませんか。初めまして。僕はレクアと申します。」
「ご丁寧にどうも。貴方は幹部のような感じだと思うのだけれど、どのような部隊を率いているのかしら?」
「正式な部隊長ではありませんが、防衛を担っています。主に国境付近ですね。今は定期報告の為にヘルヴァンに来ましたが。」
「そうなのね。上手くいっているの?」
「今のところは、ですがね。」
「領内は誰が仕切っているのか知っているかしら。」
「魔族領内の防衛…つまりは警備を行っている部隊を統率しているのは、ギュエザですね。赤髮で分かりやすいかと。」
「分かったわ。ありがとう。」
「いえいえ。では僕はこれで。」
今日は全部隊の定期報告の日なのだろうか。
正式に幹部として認められている者はいないが、幹部らしき魔族が続々と魔王城へと入ってきていた。
その中に、一人だけ赤髮の魔族がいた。
おそらく彼がギュエザだろう。
「こんにちは。」
「こんにちは…?」
「貴方がギュエザさんかしら?」
「そうだが…君こそ誰だ?急に偉そうに話しかけてきたが。人族にしか見えんぞ。私は領内の防衛部隊を取り仕切っている上位魔族だぞ。」
「機嫌を損ねてしまったのならごめんなさい。私はシェルア。魔王ゼギュアス殿の命令で、少し動いているのよ。」
「あ、貴方が…!?これは申し訳ございません!魔王ゼギュアス様と並ぶ人族のシェルア様がおられるとは報告されていましたが、まさか貴女様だったとは……。考えてみれば、この王城に人族がいて騒いでいない時点で、気付くべきでしたね…。」
「そうかしこまらないで。別に怒ってはいないから。」
「寛大な御心、感謝致します。それで、シェルア様はどのようなご要件でしょうか。」
「聞きたかった話は、先程貴方が言ってくれたわ。」
「と、おっしゃいますと?」
「私が知りたかったのは、魔族領防衛部隊のうち、領内の防衛部隊を仕切っているのは誰かということよ。」
「なるほど。確かに私が取り仕切っております。今のところは順調で、部下…と言っても良いのでしょうか。魔族達も言うことを聞いてくれていますね。」
「レクアさんも言っていたけれど、何故『今のところは』なのかしら?」
私は魔族ではないので、この地の本当の住人たる魔族達に『さん』を付けるようにしていた。
魔王のことをエギュアス『殿』と読んでいる人に、さん付けされるのは困るとよく言われたものだ。
呼び捨てで構わないと言われれば、そうしていたのだが。
レクアと話していた時から気になっていた言葉があった。
ギュエザに言ったように、『今のところは』というものだ。
どのような意味なのだろうか。
「それは我々が魔王様に任命された幹部ではないからです。正式ではない、という事ですね。」
「つまり、今は同じ部隊の魔族が従ってくれているけれど、これからもそうとは限らない…と。」
「その通りでございます。王城の防衛部隊を統率しているアレーユも同じです。」
「アレーユは挨拶されたから知っているわ。王城の防衛をしている魔族の中では、一番実力があるようね。」
「ええ。各部隊を仕切っている者は、その部隊の中で最も強い者なのです。」
「そういう事ね。他の魔族の皆が言う事を聞くのも納得だわ。攻撃部隊の統率者は誰か知っている?あと情報部隊も教えてほしいわ。」
「勿論です。攻撃部隊はジェヌク、情報部隊はミレが最上位者ですね。ジェヌクは魔力量が高く、ミレは隠密に長けているのでシェルア様であればすぐに見抜けるかと。」
「分かったわ。協力ありがとう。早速会いに行ってくるわ。」
「はい。失礼致します。」
2人に会いに行こうと思ったのだが、人目見ただけで分かった。
私やゼギュアス殿には劣るが、それなりの強者なのだと。
これで決まりだ。
実力は実際に見て確認出来た。
部隊長としての能力も、提出された報告書を見れば分かる。
私はすぐにゼギュアス殿の所へ転移した。
私はその魔王から、直接呼ばれた。
初めて会った時と同様、威厳溢れた魔王が玉座に座っている。
「エギュアス殿、今日はどのような要件で?」
「ああ。幹部を決めようと思ってな。」
「幹部は既にいるのでは?」
「今の幹部は、俺が任命したやつらじゃない。そこで一から体制を整えようと思ってな。」
「それは、勇者が動き出したからかしら。」
「……やはり知っていたか。」
「情報は武器、そう師匠に教わったわ。」
「そうかよ。まぁ幹部を改めて決めようと思ったのは、そこが理由だな。」
「了解したわ。私に選別しろと言うのでしょう?」
「分かってんじゃねーか。」
「それは面倒事の丸投げって言うのよ。暇なら手伝ってくれても良いのよ?」
「俺も暇じゃねぇんだよ。全く、図太くなりやがって。まぁ実力を考えれば文句は言えないがな。」
「それで?幹部を決めるのは分かったけれど、その部隊の種類を教えてほしいわ。」
「そうだな。」
そしてエギュアス殿が幹部を決めてほしい部隊を言っていく。
まずは防衛部隊。これは当然だろう。
防衛部隊の中でも、王城・領内・国境の3名の幹部を決めてくれとのこと。
そして情報部隊、攻撃部隊。
攻撃部隊は国内で何かあった際や他国への進軍などをする部隊だ。
最後に……
「お前の部隊も作ってくれよ。」
「私は部隊を率いるなんてごめんよ。」
「いや、俺直属の自由部隊になってくれ。」
「それって、今回よりも面倒事を押し付けられそうなのだけれど?」
「安心しろ。お前が自由に動かせる部隊だ。魔王直属とは名ばかりで、本当に必要な時以外、俺は命令しない。」
「そう。なら自分で好きなように鍛え上げれば良いってことね。」
「そうだぜ。じゃあ後は頼んだ。」
「丸投げね……。」
私はその場を後にし、現在の幹部?達と会ってみることにした。
魔王城に来てから半年も経っているが、幹部らしき魔族には会ったことがなかった。
会う必要もないからだ。
私は魔法を使い、勇者パーティーと師匠を死に追いやった国王を監視していた。
あとは自身の鍛錬をしたりなど、それだけで一日が終わる。
しかし、今日からはそうもいかなくなるだろう。
私は1人目の幹部らしき魔族と接触した。
「こんにちは。」
「これはこれは、シェルア様ではありませんか。初めまして。僕はレクアと申します。」
「ご丁寧にどうも。貴方は幹部のような感じだと思うのだけれど、どのような部隊を率いているのかしら?」
「正式な部隊長ではありませんが、防衛を担っています。主に国境付近ですね。今は定期報告の為にヘルヴァンに来ましたが。」
「そうなのね。上手くいっているの?」
「今のところは、ですがね。」
「領内は誰が仕切っているのか知っているかしら。」
「魔族領内の防衛…つまりは警備を行っている部隊を統率しているのは、ギュエザですね。赤髮で分かりやすいかと。」
「分かったわ。ありがとう。」
「いえいえ。では僕はこれで。」
今日は全部隊の定期報告の日なのだろうか。
正式に幹部として認められている者はいないが、幹部らしき魔族が続々と魔王城へと入ってきていた。
その中に、一人だけ赤髮の魔族がいた。
おそらく彼がギュエザだろう。
「こんにちは。」
「こんにちは…?」
「貴方がギュエザさんかしら?」
「そうだが…君こそ誰だ?急に偉そうに話しかけてきたが。人族にしか見えんぞ。私は領内の防衛部隊を取り仕切っている上位魔族だぞ。」
「機嫌を損ねてしまったのならごめんなさい。私はシェルア。魔王ゼギュアス殿の命令で、少し動いているのよ。」
「あ、貴方が…!?これは申し訳ございません!魔王ゼギュアス様と並ぶ人族のシェルア様がおられるとは報告されていましたが、まさか貴女様だったとは……。考えてみれば、この王城に人族がいて騒いでいない時点で、気付くべきでしたね…。」
「そうかしこまらないで。別に怒ってはいないから。」
「寛大な御心、感謝致します。それで、シェルア様はどのようなご要件でしょうか。」
「聞きたかった話は、先程貴方が言ってくれたわ。」
「と、おっしゃいますと?」
「私が知りたかったのは、魔族領防衛部隊のうち、領内の防衛部隊を仕切っているのは誰かということよ。」
「なるほど。確かに私が取り仕切っております。今のところは順調で、部下…と言っても良いのでしょうか。魔族達も言うことを聞いてくれていますね。」
「レクアさんも言っていたけれど、何故『今のところは』なのかしら?」
私は魔族ではないので、この地の本当の住人たる魔族達に『さん』を付けるようにしていた。
魔王のことをエギュアス『殿』と読んでいる人に、さん付けされるのは困るとよく言われたものだ。
呼び捨てで構わないと言われれば、そうしていたのだが。
レクアと話していた時から気になっていた言葉があった。
ギュエザに言ったように、『今のところは』というものだ。
どのような意味なのだろうか。
「それは我々が魔王様に任命された幹部ではないからです。正式ではない、という事ですね。」
「つまり、今は同じ部隊の魔族が従ってくれているけれど、これからもそうとは限らない…と。」
「その通りでございます。王城の防衛部隊を統率しているアレーユも同じです。」
「アレーユは挨拶されたから知っているわ。王城の防衛をしている魔族の中では、一番実力があるようね。」
「ええ。各部隊を仕切っている者は、その部隊の中で最も強い者なのです。」
「そういう事ね。他の魔族の皆が言う事を聞くのも納得だわ。攻撃部隊の統率者は誰か知っている?あと情報部隊も教えてほしいわ。」
「勿論です。攻撃部隊はジェヌク、情報部隊はミレが最上位者ですね。ジェヌクは魔力量が高く、ミレは隠密に長けているのでシェルア様であればすぐに見抜けるかと。」
「分かったわ。協力ありがとう。早速会いに行ってくるわ。」
「はい。失礼致します。」
2人に会いに行こうと思ったのだが、人目見ただけで分かった。
私やゼギュアス殿には劣るが、それなりの強者なのだと。
これで決まりだ。
実力は実際に見て確認出来た。
部隊長としての能力も、提出された報告書を見れば分かる。
私はすぐにゼギュアス殿の所へ転移した。
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