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<< バレンタイン特別編>>
カレカノ初のバレンタイン (2)
しおりを挟む2人並んで自転車で帰ってくると、遠目にコタローの家の前に誰かがいるのが見えた。
自転車が家に近づくにつれハッキリ見えてくる。私達と同年代の女子2人組。
ーーあっ、出待ちだ……。
それは既に見慣れた風景。
元々人気者だったコタローは、剣道の全国大会で優勝してからというもの、以前にも増してモテるようになった。
他校の生徒に校門の前で待ち伏せされたり武道場を覗きこまれたり。
なかにはそれで飽き足らず、こうして家まで押しかけてくる子もいる。
今日の彼女達は家の前でじっと待っているだけまだマシなほうだ。
酷くなると堂々と玄関のチャイムを押して、どうにかしてコタローと話そうと玄関に居座る猛者もいるのだから。
私が自分の家に自転車を置き、門から顔を出して見ていると、コタローは女子2人から紙袋を差し出されて困った顔をしていた。
「俺、彼女以外からは何も受け取らないことにしてるから」
「ええっ、彼女さんが怒るんですか? これくらいいいじゃないですか~。せっかくチョコレートケーキを焼いてきたんですよ!」
ーーわぁ、チョコレートケーキかぁ。
彼女の私が溶かして流すだけのなんちゃって手作りだったことが情けない。
なんとなく申し訳なく思いながら見守っていると、コタローが私に向かって手招きをした。
「ハナ!」
ーーええっ!?
女子2人から鋭い視線を注がれながら恐る恐るコタローの隣に立つと、コタローは私の手を握ってニコリと微笑む。
「ハナ、うちに寄ってくだろ? 残りのチョコ、部屋で一緒に食べよ」
「えっ? ……あっ、うん……」
「そういうわけだから、もう家まで来るのはやめてほしい。じゃ」
彼女達にそう言ってコタローは玄関のドアを開ける。
コタローに手を引かれて家に入る直前に、後ろから「あの子全然可愛くないじゃん」という声が聞こえてきた。
「俺の彼女はめっちゃ可愛いっちゅーの!」
そう言ってコタローが勢いよくドアを閉めて、すぐに「嫌な思いをさせてごめんな」とつらそうな顔をする。
「コタロー、私は大丈夫だよ」
そりゃあ多少は凹むけれど、いい気はしないけど……自分が絶世の美女じゃないのは本当なので仕方がない。
それに私はコタローと付き合うときに覚悟を決めたのだ。
嫉妬されたり嫌な思いをするとしても、それでもコタローの彼女になりたいと思った。
一緒に歩いていきたいから同じ高校に進学すると決めたし、そのための勉強も頑張った。
だからこれくらいでは揺らがない。
私を長い間ずっと思い続けてくれて、告白後も私が覚悟を決めるまで待ってくれたコタローの気持ちを知ってるから。
痛む足で必死に闘った勇姿を見ているから。
だから私だって頑張れる。
そして頑張った結果、難関高校の合格を勝ち取ったという事実が私に自信と誇りを与えてくれているのだ。
「だから大丈夫だよ。いちいち気にしてたらコタローの彼女なんてやってられないもん」
そう言ったら、コタローがクシャッと顔を歪める。
「ありがとう……ハナは可愛いよ、本当に」
私の頭を撫でたかと思うと、頬にチュッとキスをした。
「ちょっ! ここ玄関!」
こんなところを風子さんにでも見られたら、軽く死ねる。
私が廊下の奥に目をやり慌てたら、「それじゃ部屋に行こ」と手を引かれ階段を上がる。
勝手知ったるコタローの部屋。だけどなんだろ、ちょっぴり緊張してしまう。
所定の位置で抱き枕の『柴くん』を抱きしめていたら、ヒョイっと取り上げられてベッドの上にポイッと放られてしまった。
「あっ、ちょっと、私の柴くん!」
「抱き枕を抱くなら俺をギュッてしてほしい」
ズズイっと目の前に迫られて、「ええっ!」と声が出る。
「……抱きしめてもいい?」
真剣な表情で見つめられて、心臓がトクンと鳴った。
「うん」とうなずいたら、壊れ物を扱うみたいにそっと両腕で包まれる。
「もう少し強くしてもいい?」
「……うん」
ギュッと力が加わって、鼓動がさらに速くなる。
「コタロー、なんか、なんかさ……」
「ん?」
「あまり急いで変わらないでほしい」
だって急に男の子らしくなって、彼氏らしくなっちゃって……私はどうしたらいいのかわからなくなる。
嬉しいのに困ってしまって、もっと抱きしめていてほしいのに早く離してほしいような……。
「こんなふうにギュッてされたら、心臓が破れちゃうよ」
「ハハッ……うん、俺も」
真剣に言ってるのに、コタローはさらに強く抱きしめてきた。
そして私の耳元でこう囁く。
「ハナ、俺達は変わるんじゃないよ。加わるんだ」
ーーえっ、加わる?
「今までの幼馴染の関係に、 『カレカノ』って関係がプラスされるだけだ。怖がることはない」
スマホに新しいアプリをダウンロードするように。
ソフトウェアをアップデートするみたいに。
今のままでも不自由は無いけれど、新しい機能が追加された方がより楽しめるだろ?
コタローはそう言って身体を離すと、私の肩に手を置きニッと口角を上げた。
「だから、 恋人になった俺たちは、きっと今まで以上にハッピーになれる」
コタローは、私はもう十分頑張ったから、あとは一緒にいてくれるだけでいいと言う。
「俺のわがままを聞いて同じ高校に来てくれたし、 料理も沢山覚えてくれた。もうそれで十分だ。あとはもう、 ただただハナでいてくれればいい」
「私でいればいい?」
「そう」
今まで通り、 お隣さんで幼馴染で同級生で。
彼女の部分は無理に変わろうとしなくたっていい。
「そのぶん恋人の部分は俺が頑張るからさ。ハナは俺の隣で笑っていて。なっ、 単純だろ?」
「…… うん」
そっか、単純なのか。
私はコタローの恋人になって。
だけどやっぱりお隣さんで幼馴染で同級生で。
「だからあとは俺が頑張るからさ……ちょっと目をつむって」
「えっ?」
条件反射で瞼を閉じたら、フニッと唇に柔らかいものが触れる。
それは角度を変えながらチュッ、チュッと何度も繰り返されて、最後にゆっくりと離れていった。
ドキドキしながら目を開けたら、至近距離から瞳を覗きこまれる。
「なっ? キスもちょっとだけバージョンアップしてみた」
「……バカっ!」
「ハハッ、次なるアップデートはもうちょい先だな」
「本当にバカっ!」
そしてこんな説明で、 なんとなく納得しちゃってる私も単純だ。
だけど……
ーー まっ、 いいか……。
いずれにしたって、 コタローといたら楽しいことには変わりない。
2人でもっと思い出を積み重ねて、関係のアップデートを繰り返して……
「なあハナ、もう一回キスしてもいい?」
「コタローは彼氏だし……いちいち聞くの……もう必要ないし」
そう言ったら、またコタローの顔が赤くなった。
真っ赤なコタローの顔がそっと近づいてきて……
だから私は、 ごちゃごちゃ考えるのをやめて、目を閉じた。
Fin
*・゜゚・*:.。..。.:*.。.:*・゜゚・*^_ .。.:*・゜゚・*
久しぶりの更新です。
調べたら最後の更新が2020年3月の番外編だったので、もう一年近く経っていました。
相変わらずブレることなく真っ直ぐで優しいコタローです。
私は彼のキャラクター、好きなんですよねぇ。
高校編を描きたいと思いつつ手つかずになっていますが、いずれ本当にちゃんと書きたいです。
日頃の感謝をこめたバレンタインの特別編、読んでいただきありがとうございました。それでは皆様、
Have a Happy Valentine’s Day💕🍫
2021年2月14日
田沢みん拝
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バレンタインデイまで来たらその後の高校編も是非読んでみたい。
きた~~~~!!
待ってました!
チョコだけにあま~~~~~い!!
更新ありがとうございます♪
萩伊さま
こちらこそ、バレンタインの番外編をお読みいただきありがとうございます。
やはりバレンタイン&高校合格の解放感ですからね、ここは頑張ってキスの回数と長さを増やしてみました😁
楽しんでいただければ幸いです。
本日は、こちらの作品を楽しませていただきました。
胸キュンで、青春で。
コタローさん達がいらっしゃる世界も、ずっと大好きです。
本編も、番外編も。
魅力がたっぷりで、最高です……っ!
柚木ゆず様
完結済みの作品を読んでいただきありがとうございます。
嬉しいです。
初期の作品なので拙い部分も多いですが、コタローは私の理想の幼馴染み像です!