99 / 100
<< バレンタイン特別編>>
カレカノ初のバレンタイン (1)
しおりを挟む日曜日のショッピングモールは幸せそうな恋人達で溢れかえっていた。
店のウインドウも赤やピンクのハートで飾られて、華やかな気分を盛り上げるのに一役かっている。
さすがバレンタインデイだ。
その恋人達の中に俺達も含まれているのだと思うとなんだか面映ゆく、胸がソワソワしてしまう。
隣のハナをチラリと見たら、ちょうどハナも俺を見上げていた。
「ヘヘッ、なんだか照れちゃうね」
そう言ってヘラリと目を細めるその笑顔にキュンとする。
ーーく~っ、俺の彼女、めっちゃ可愛い!
普通に繋いでいた手を持ち替えて、指を絡ませる恋人繋ぎにする。
ハナは「あっ!」と小さく声をあげたけど、特に抵抗することなくそのままにしていた。
嬉しくて頬が緩む。
俺は握る手にギュッと力を込めると、「それじゃ、行こうか」と言ってエスカレーターで2階のフードコートに向かった。
今日は俺達の初デートだ。
今までだって散々2人で出掛けていたのだから今更だと思われるかもしれないが、恋人としてちゃんとしたデートというのはしていなかった。
去年の夏の終わりに晴れて幼馴染から恋人同士にステップアップ出来たものの、同時に俺達は受験生でもあって。
高校受験を控えた大事な時に浮かれてばかりもいられない。
だから、付き合い始めてからすぐに2人で決めた。
『ちゃんと合格してから晴々とした気持ちでデートをしよう』と。
ハナの滝山高校受験はかなりのチャレンジで合格ギリギリのラインだったから、じいちゃんだけでなく俺も一緒になって勉強を手伝った。
クリスマスも正月も関係なくスパルタ式で公式や年表を詰め込んだ結果……無事に2人揃って滝山高校に合格することが出来たのだ。
そして合格発表後はじめての週末、バレンタインデイに彼女との初デートに漕ぎ着けた俺は、もちろんめちゃくちゃ浮かれていて。
もう一度ハナを見下ろしたら目が合って、「コタローこっちを見過ぎ!」と叱られた。
いやいやいや、俺が見るたびに目が合うってことはお前も俺を見てるってことだろ?
……とは口が裂けても言うまい。
せっかくハナが頬を赤らめた照れ顔を見せてくれてるのに、ここで茶化したら台無しだ。
そのあたりは俺も長年の付き合いで心得ているのだ。
フードコートの2人用テーブルに向かい合って座り、俺がラーメン、ハナがオムライスを食べる。
食べながら俺は、ハナのお尻の後ろにちょこんと置かれている小さな紙袋が気になって仕方ない。
ーーあの紙袋には、チョコレートが入っているはずだ。
しかも俺はチョコの種類まで知っている。
ハート型のミニタルトにチョコが入ってる手作りのやつ。
ハナは一足先にうちの父さんとじいちゃんにはバレンタインチョコを渡していた。
今年は初の手作りチョコということで、俺にだけサプライズのつもりでいるのだろう。
だがなハナ、ちゃんと口止めしていないとはぬかったな。
昨日じいちゃんがハナにもらったと自慢げに見せてきたぞ。
ハナの初の手作りチョコをじいちゃんに先に食べられるのは癪にさわるけど、ハナの受験が成功したのはじいちゃんのお陰でもあるのでそこは譲ろう。
それよりも、ハナがどんな顔して何と言ってチョコを渡してくれるのか……。
それが気になって気になって、俺はラーメンを啜りながら、心臓をワクワクドキドキさせていた。
*
『やっぱ彼氏へのチョコは手作りでしょ』
そう私に言ったのは京ちゃんだった。
京ちゃんと一緒に滝山高校の合格発表を見に行った帰り道、これでコタローとバレンタインデートが出来る! チョコを買いに行こう! と浮かれていた私を見て、京ちゃんが腰に手を当てため息をつく。
「今までコタローからさんざんチョコをもらっててさ、それに普通にチョコを買ってプレゼントしたってただの物々交換じゃない。彼女らしくガツンと手作りしなよ」
「ええっ! そんなの作ったことないよ」
「だから意味があるんでしょ!」
確かに京ちゃんの言うとおりかも。
コタローは小4から6年近くにも渡ってせっせとチョコを運び続けてくれた。
私が今更そこらのチョコを買って渡しても、コタローの努力と愛情には到底敵わない。
それに対抗できるものといったら……うん、やっぱり手作りだよね。
「京ちゃん……」
縋る目で見つめる私に京ちゃんがうなずいた。
「大丈夫、中学3年間『お菓子部』だった私が全面協力するから!」
持つべきものは料理上手の親友だね!
私は京ちゃんの指導の元、素人でも簡単にできる、溶かして混ぜて流し込むだけの簡単チョコを作って今日のこの日に備えたのだった。
ーーだけど、どうしよう。
どう言ってどのタイミングで渡せばいいのかな。
今まではどうしてたっけ?
たしか学校から帰ってコタローの家に遊びに行って、コタローと哲太さんと宗次郎先生のぶん3つのチョコを「はい、どうぞ」ってまとめて渡して終了だった。
コタローは幼い頃からずっと私を好きだったって言ってた。
そういえば学校や塾で女子からチョコを渡されても絶対に受け取らなかったっけ。
だけど私があげたのだけはニコニコしながらその場で食べてくれてたんだよね。
お母さんがスーパーで買ってきてくれた、ただの市販品だったのに、『これ、美味しいな。ありがとう』って毎年喜んでくれて。
今思えば私は本当に鈍感で無神経だった。
バレンタインになんて何の思い入れもなく、ただのお約束のイベントとして義理チョコを渡してただけで……。
ーーコタローは今年も私が市販品を用意してると思ってるのかな。
それとも彼女からの手作りに期待してるかな。
いや、私がわざわざ作るなんて思っていないよね。
ただひとつ言えること。
私がどんな物をあげたって、コタローは全力で喜んでくれるに違いない。
ーーうん、カレカノ初のバレンタインチョコ。勇気を出して彼女らしく渡そう。
2人分のトレイと食器を片付けたコタローが戻ってくるのを待って、私は後ろに隠していた小さな紙袋を手に持つ。
「コタロー、これ、あげる」
「えっ、なに?」
キョトンとしているコタローに向かって両手で袋を突き出すと、「ハッピーバレンタイン!」と短く告げる。
やっぱり恥ずかしいな。顔が熱を持つ。
「えっ、バレンタイン?」
コタローは中からリボンのついた赤い箱を取り出してフタを開き……中を見た途端、パアッと表情を明るくした。
正方形の箱には市販のハート型ミニタルトに入ったチョコが4個。
ビターとホワイトとイチゴと抹茶の4種類。
「すっげ、ハート型か。可愛いな。わざわざ買ってきてくれたの?」
「違うよ、今年は京ちゃんに教えてもらって、ちゃんと自分で作ったんだよ! 」
「嘘っ、これをハナが!? すっげ! 食べてもいい?」
私が頷くと、コタローはビターのを指でつまんで口に放り込む。
「うっま! 甘さ控えめでめちゃくちゃ美味い! すごいなハナ、プロみたいじゃん!」
ーーやった、サプライズ成功!
そして、ほら、やっぱり。
コタローは絶対に褒めてくれると思った。
何をやらせても絶対にコタローの方が上手にできるに決まってるのに、私が作った簡単チョコでさえも宝石をもらったみたいに目をキラキラさせて喜んでくれるんだ。
そんな顔を見ると、やっぱり手作りにして良かったな。頑張った甲斐があったな……って嬉しくなる。
「コタロー、それ……」
「ん?」
「本命チョコだから」
私が真っ赤な顔で告げた途端、コタローの顔も真っ赤になった。
へらっと頬を緩めたタローと顔を見合わせて、同時にヘヘッと笑った。
11
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
友達婚~5年もあいつに片想い~
日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は
同僚の大樹に5年も片想いしている
5年前にした
「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」
梨衣は今30歳
その約束を大樹は覚えているのか
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる