燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 娘の返事を聞いたタルペイアは、まぁ、また……! という感情を横顔に走らせ、リィウスを鼻白ませた。
「サラミスったら、今度はいったい何をしたのよ」
 先頭のタルペイアに引きずられるようにして一行が足早に進むと、広ばった場所に出た。
 応接間となっているらしいその場所で行われていることを見て、リィウスは息を呑んだ。

「ううっ! あああっ……」
「アスクラ、今度はサラミスはなにをしでかしたの?」
 アスクラと呼ばれた粗末な麻の衣をまとった奴隷らしき男が、タルペイアを見て礼をする。この屋敷の召使なのだろうが、一目見てリィウスは彼の黒い肌と人並み外れた体格から異国人であることと、どうやら宦官であることを見抜いた。頭は、剃っているのか、もともとそうなのか、頭髪が一本もない。
「サラミスがまた禁を破ったのです」
「何をしたの、サラミス?」
 タルペイアが声をかけたのはサラミスという娘にだが、だが……その様子をあらためて見てリィウスは脚が震えそうになった。
 サラミスは、長方形の木枠を背に、両手両足は開かされ立たされた姿勢で戒められているのだ。一糸まとわぬ、生まれたままの姿で。それだけでも充分衝撃的だというのに、なんと、サラミスの股間にはあるべきはずの女の茂みがないのだ。
 耳朶まで赤くしているリィウスに、マロが含み笑いを見せて、ささやいた。
「娼婦には、あそこの毛を剃る者もいるんですよ。あれだと〝ヴィーナスの丘〟がよく見えるでしょ」
 リィウスは目を伏せた。だが、目の前で行なわれていることのあまりの異常さに、どうしても、伏せた目がまた引きつけられてしまう。
 いや、いや、というふうにサラミスが髪を振り乱すと、苦痛に濡れた顔にその黄金の絹糸のような髪が張りつく。苦悶にゆがんではいても、ととのった顔の造りは目を引く。
 さらに手足は長く、程よくふくらんだ胸といい、引き締まった腰といい、無残な姿ではあっても彼女が相当美しい娘だということが一目でわかる。なまじ美しいだけに悲惨である。
 リィウスは、彼女の五体の中心に見える、剝きだしの女の中心から、またあわてて目を逸らした。心の臓がはじけそうだ。こんなものを見たのは生まれて初めてだった。
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